1985年8月12日に発生した日本航空123便墜落事故は、航空史上最悪の単独機事故として知られています。本記事では、事故当時の状況、パイロットの判断、酸素マスクの着用有無が及ぼした影響について検証し、墜落が回避できた可能性があったのかを考察します。
日本航空123便事故の概要
事故は、羽田空港を出発した日本航空123便(ボーイング747SR-46)が、離陸から約12分後に圧力隔壁の破損により垂直尾翼が破損し、油圧系統を喪失したことが原因で発生しました。その結果、機体の操縦が困難となり、最終的に群馬県御巣鷹の尾根に墜落しました。
1. 圧力隔壁の破損とその影響
事故調査によると、過去の修理不備により圧力隔壁が破損し、機体尾部が吹き飛ばされました。この破損により、以下の影響が発生しました。
- 垂直尾翼の損失による方向安定性の喪失
- 油圧系統の完全喪失による操縦不能
- 客室内の減圧による酸素マスクの作動
パイロットの判断と酸素マスクの着用
機長と副操縦士は事故発生後、操縦の回復に全力を尽くしました。しかし、減圧状態において酸素マスクを着用していなかったことが問題視されています。
1. 低酸素症(ハイポキシア)の影響
高高度(約24,000フィート)で減圧が発生すると、乗員は低酸素症(ハイポキシア)に陥る可能性があります。低酸素症の症状には以下のものがあります。
- 判断力の低下
- 視界のぼやけ
- 意識混濁
事故当時、客室の酸素マスクは作動しており、減圧が発生していたことは確実です。しかし、パイロットは酸素マスクを着用していなかったとされ、低酸素症による判断力の低下が生じた可能性があります。
2. 操縦への影響
フライトレコーダーの記録によれば、機長は終始冷静に操縦を続けていましたが、低酸素症の影響で適切な判断ができなかった可能性があります。特に、エンジン出力の調整が遅れた点や、異常発生後の初期対応に遅れが見られることから、酸素マスクを着用していれば状況が違っていた可能性があります。
シミュレーター実験の結果
事故後、全日空のパイロットが同じ状況をシミュレーターで再現したところ、すべてのケースで墜落したという結果が報告されています。このことから、酸素マスクの着用の有無にかかわらず、操縦の困難さが極めて高かったことがわかります。
酸素マスクを着用していれば墜落は避けられたか?
事故調査委員会(JTSB)の報告書では、パイロットの酸素マスク未着用が直接の墜落原因とはされていません。しかし、以下の可能性は考えられます。
- 酸素マスクを着用していれば、より冷静な判断が可能だった可能性
- エンジン出力の調整がより迅速に行われた可能性
- 着陸を試みるための選択肢が広がった可能性
しかしながら、機体の損傷が深刻であり、油圧系統を完全に喪失していたことを考慮すると、**仮に酸素マスクを着用していたとしても、最終的な墜落は避けられなかった可能性が高い**と言えます。
まとめ
日本航空123便事故では、圧力隔壁の破損による機体損傷が致命的であり、パイロットの酸素マスク未着用が直接的な墜落原因ではありませんでした。しかし、低酸素症による判断力の低下が影響した可能性は否定できません。
この事故から得られた教訓として、以下の点が挙げられます。
- 緊急時には速やかに酸素マスクを着用することの重要性
- 航空機の整備と修理履歴の適切な管理
- 緊急時の対応マニュアルのさらなる改善
事故の詳細な分析を通じて、同様の悲劇が再び起こらないよう、航空業界全体で安全対策が強化されています。
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