日本の信号機の歴史を振り返ると、技術の進化とともにその形状や構造も大きく変わってきました。中でも、小糸工業の鉄板製灯器に装着されていた「ドットレンズ」は、昭和の時代に特有の設計として今も一部の信号ファンに根強い人気があります。本記事では、小糸工業の鉄板灯器とドットレンズの製造年代、そしてその後のプラスチックレンズへの移行について解説します。
ドットレンズとは何か?その特徴と構造
ドットレンズとは、レンズ表面に細かな突起(ドット)が刻まれたガラスレンズで、光を拡散させる効果がありました。主に昭和30〜50年代の信号灯器に採用され、レンズの中心から光が広がるような独特の配光が特徴です。
特に夜間や逆光時でも視認性を確保できるという点で高く評価されていました。多くは厚手の強化ガラスが使われており、重量感のある堅牢な設計でした。
小糸工業の鉄板灯器とドットレンズの使用時期
小糸工業では、昭和30年代中頃から鉄板製の灯器筐体にドットレンズを採用したモデルが登場しました。これは、日本で交通信号機の本格的な普及が進んだ時期と重なります。
昭和50年代前半(1975〜1981年)までは、ドットレンズが標準的に使われていましたが、昭和56年(1981年)頃を境にプラスチック製レンズへの移行が進み、以降は新設信号にガラスレンズが使用されるケースは激減していきます。
実際に、昭和57年以降に設置された信号機の多くは、アクリルやポリカーボネート製のフレネルレンズを装着しており、製造銘板や設置年の調査からもこの傾向が明確です。
なぜプラスチックレンズへ移行したのか?
ドットレンズからプラスチックレンズへ移行した背景には、以下のような理由があります。
- 軽量化:鉄板+ガラス構造は重量があり、設置や保守が困難
- コスト削減:プラスチックの方が量産コストが低く、成形も容易
- メンテナンス性の向上:破損時の交換が簡単で、耐候性も高い
さらに、昭和50年代後半になると照明用電球も高効率なものに改良され、ドットによる配光調整の必要性も薄れていったのです。
現存する小糸製ドットレンズ灯器の確認例
全国各地には今もなお、旧型の小糸製鉄板灯器が稼働している地域があります。特に、地方都市や離島、更新頻度の低い交差点ではその姿を見ることができます。
たとえば、新潟県や和歌山県、長野県の一部では、1970年代後半設置のドットレンズ信号が今も現役で残っています。多くは型番や製造銘板(例:KOG-36)などから判別可能です。
信号機の変遷にみる時代背景
信号機の進化は、技術革新・都市インフラの拡充・法改正などの影響を受けてきました。ドットレンズは、まさに昭和の高度経済成長期を象徴する光学技術であり、その後のLED信号機へと繋がる発展の一段階といえます。
現在主流となっているLED信号機は、消費電力の低減・メンテナンスフリー・視認性の安定化といった利点があり、これにより旧式のガラスレンズ型灯器は徐々に姿を消しつつあります。
まとめ:小糸のドットレンズ灯器は昭和56年頃が転換点
小糸工業の鉄板灯器に装着されていたドットレンズは、昭和56年(1981年)頃までを目安に製造・設置されていたと考えられます。その後は軽量・高耐久なプラスチックレンズへの移行が進み、さらに現代ではLED式信号機が主流となっています。
街中でふと見かける旧型信号機には、こうした時代の変遷と技術の軌跡が詰まっています。信号マニアでなくとも、少し目を向けてみると新たな発見があるかもしれません。


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