東京都の離島・父島では、長年にわたり空港建設の構想が議論されてきました。特に、旧日本海軍の洲崎飛行場跡地を活用した空港計画が注目されています。本記事では、父島空港構想の経緯と現状、そして今後の展望について詳しく解説します。
小笠原空港構想の歴史
小笠原諸島への空港建設の動きは、1990年代から本格化しました。1995年には兄島に1500mの滑走路を持つ空港を建設する案が策定されましたが、環境保護の観点から撤回されました。その後、1998年には父島南部の時雨山周辺に1720mの滑走路を持つ空港を建設する案が浮上しましたが、こちらも自然保護の観点から実現には至りませんでした。
洲崎飛行場跡地の活用案
現在、検討されているのは、父島の洲崎地区にある旧海軍の洲崎飛行場跡地を活用した空港建設案です。この地域は、世界遺産の範囲外であり、環境への影響を最小限に抑えられる可能性があるとされています。滑走路の長さは1000m以下とし、短距離離着陸が可能な機体の運用を想定しています。
想定される使用機材と所要時間
想定されている機材は、ATR42-600Sなどのターボプロップ機で、最短で800mの滑走路で離着陸が可能です。これにより、調布飛行場から父島までの直行便が約2時間で結ばれることが期待されています。現在の船便では片道24時間かかるため、大幅な時間短縮となります。
環境保護と住民の意見
空港建設に対しては、自然環境への影響を懸念する声もあります。小笠原諸島は多くの固有種が生息する貴重な生態系を有しており、環境保護団体や住民からは慎重な対応を求める意見が出されています。一方で、医療体制の充実や物流の改善を期待する声もあり、地域の利便性向上と環境保護のバランスが求められています。
今後の展望
東京都は、2018年度予算案に空港建設に向けた調査費を計上し、調査を進めています。しかし、実際の建設には20年以上の工期を要するとされており、実現には時間がかかる見込みです。また、垂直離着陸が可能なティルトローター機の導入も検討されていますが、型式証明の取得など課題も多く、実用化には時間がかかるとされています。
まとめ
父島の空港建設構想は、長年にわたり議論されてきましたが、環境保護と地域の利便性向上のバランスを取ることが求められています。現在は、洲崎飛行場跡地を活用した小規模な空港建設案が検討されていますが、実現には多くの課題があります。今後も、地域住民や関係機関との協議を重ねながら、慎重に進められていくことが期待されます。


コメント