高速道路を走行していると、片側1車線ずつの対面通行トンネルは見かけるのに、片側2車線ずつ計4車線の全てがひとつのトンネルに収まっている例は少ない、もしくは見たことがないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、その理由を土木工学や道路構造の安全基準、実例に基づいて解説します。
日本の高速道路トンネルの基本構造
日本では高速道路のトンネルは原則として「別々の本線トンネル(上下線分離型)」で構成されています。これは片側2車線ずつのトンネルを2本掘る形式で、片側通行(上り線用・下り線用)がそれぞれ独立しています。
この方式は走行安全性、換気の効率性、火災時の避難経路確保などの点で極めて合理的とされています。
なぜ4車線一体型トンネルが少ないのか?
技術的には4車線が1本のトンネルに入る構造は可能です。しかし以下のような理由により、採用されるケースは非常に限定的です。
- 火災・事故時の被害拡大リスク:対向車線が近いため事故や火災時に影響が広がりやすく、避難も困難になる。
- 換気・排気の非効率:大型トンネルでは排ガスや煙の処理が難しくなり、専用ダクトが複雑になる。
- 中央分離帯の設置が難しい:十分な緩衝帯が取れないため、安全性が大きく損なわれる。
国内の実例:4車線一体型トンネルの有無
日本国内では、都市部の地下道路(例:首都高速中央環状線 山手トンネル)などで短区間において4車線一体型の構造が採用されているケースがあります。
ただしこれらは低速域・短距離での利用を前提としており、高速道路の長距離トンネルではほとんど存在しません。長距離では特に排気処理と避難動線の確保が極めて重要だからです。
海外との比較:ヨーロッパ・アメリカの事例
一部の国では、空間的制約や費用面から一体型トンネルを採用している例もあります。たとえば、スイスのゴッタルド道路トンネルでは片側1車線の対面通行形式が採用されていますが、これは山岳地帯での建設費用の抑制が理由です。
一方、アメリカやドイツでは新設トンネルでは上下線分離が一般的で、日本と同様の考え方が主流です。
安全基準や法律の影響も大きい
日本の道路構造令や「トンネル設計便覧」などでは、片側2車線以上の交通量が見込まれる場合、上下線分離が推奨または義務づけられているケースがあります。
また、「避難通路は別線トンネルと連結すること」が原則であり、一体構造ではこの条件を満たしにくくなります。よって、安全基準をクリアするには分離構造が合理的となるのです。
まとめ:4車線トンネルが分離されるのには合理的な理由がある
片側2車線ずつ、計4車線の道路が1本のトンネルにまとまっていないのは、単なる設計上の都合ではなく、安全性・換気性能・避難経路の確保といった極めて実用的な要因によるものです。
日本の高速道路トンネルが上下線で分離されているのは「構造上できないから」ではなく、「あえて分けたほうが安全で合理的だから」なのです。
次にトンネルを通るときは、その構造の裏にある工学と安全思想に思いを馳せてみてください。


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