動物園で見ることのできるライオンや熊、トラなどの猛獣たちは、どうやってあの安全な展示スペースまで運ばれてきたのでしょうか?「麻酔銃で撃って眠らせて連れてくる」というイメージを持っている人もいますが、実際の搬送方法や手順はもっと計画的で繊細なプロセスです。
野生動物=麻酔で搬送というのは一部正解
たしかに、野生から保護・保全目的で動物園や保護施設に連れてこられる際には、麻酔薬の使用が行われるケースもあります。これは動物のパニックや怪我を防ぐためであり、人にも危険が及ばないように慎重に実施されます。
たとえば野生動物保護区やサファリ施設から移動させる場合、麻酔で一時的に眠らせてから専用のクレート(檻)に収容し、トラックや飛行機で移送します。
現代の動物園では「繁殖施設」や「他園からの移送」が主流
近年、日本を含む多くの動物園では、野生からの捕獲ではなく繁殖プログラムや他園からの交換・譲渡で動物を迎えるのが一般的です。これにより、絶滅危惧種の保全や遺伝的多様性の維持が可能になります。
このような場合、動物はすでに人に慣れており、麻酔なしでトレーニングによって搬送箱に自ら入るよう訓練されることもあります。
麻酔の使用は専門家による慎重な管理のもとで
麻酔は動物の大きさや種類に合わせて薬剤・投与量が厳密に決められ、獣医師が同行してモニタリングします。麻酔中は呼吸・体温・心拍をチェックしながら運ばれるため、高度な医療技術が必要です。
また、麻酔が効きすぎると命に関わるため、「必要最小限の麻酔」と「短時間での搬送」が大前提です。
動物園到着後の手続きも重要なプロセス
動物が動物園に到着したあとも、すぐに展示されるわけではありません。まずはバックヤード(非公開エリア)で検疫期間を設け、健康状態や行動に問題がないか確認します。
また、環境に慣れるまで徐々に展示スペースへと慣らしていく「環境順化トレーニング」も行われます。これにより動物のストレスを最小限に抑えることができます。
実例:旭山動物園のホッキョクグマ導入
旭山動物園ではホッキョクグマの移送に際して、麻酔を使用した短時間の輸送+獣医師の同行+バックヤードでの調整という段階を踏みました。
また、飼育係による餌付けや声かけによって搬送箱へ誘導できたケースもあり、動物との信頼関係が安全な移送につながっていることがわかります。
まとめ:猛獣の移送には麻酔も使われるが、それが全てではない
「麻酔銃で眠らせて連れてこられた」という表現は一部のケースでは事実ですが、現在の動物園ではより安全で動物に優しい方法が主流です。麻酔の使用は必要最小限に抑えられ、動物の福祉と安全を第一に考えた搬送・管理体制が確立されています。
動物園で猛獣を見かけたとき、その背景には緻密な準備と愛情ある飼育の努力があることを思い出してみてください。


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