建設現場や清掃、農業などの「現場仕事」では、人手不足から外国人労働者のニーズが高まっています。しかし、「ビザ(在留資格)がない外国人でも契約書を作成できるのか?」という疑問に対しては、労働法・出入国管理法の観点からしっかりと理解しておく必要があります。この記事では、法的な視点と実例を交えながら、その疑問をわかりやすく解説します。
結論:契約書自体は作れるが、違法就労となる可能性が高い
法律上、契約行為自体(契約書の作成・署名)は、外国人であっても可能です。しかし、在留資格がない状態(いわゆる「不法滞在」「オーバーステイ」「観光ビザでの就労」など)で労働契約を結ぶことは、入管法違反=違法就労に該当するおそれがあります。
つまり「契約書は書ける」が、「働くことは法律で禁じられている」状態です。
入管法における違法就労とは
日本の出入国管理及び難民認定法(入管法)では、外国人が日本で働くには、就労可能な在留資格が必要です。例えば。
- 技能実習
- 特定技能
- 技術・人文知識・国際業務
- 永住者・日本人の配偶者等
これらの資格を持たない外国人が就労した場合、「不法就労者」として処罰対象になり、雇った側(会社や個人事業主)も罰則を受けることがあります(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)。
「現場系仕事」でよくあるグレーゾーン
建設や農業などでは「知人の紹介」「短期バイト感覚」で契約書なしに働くケースもあり、一見「自己責任」と思われがちですが、雇用主も責任を問われるリスクがあります。
過去には「偽装請負」として建設会社の現場責任者が摘発された事例も存在します。契約書がない=違法とは限りませんが、「在留資格を確認せずに働かせること」は違法です。
在留資格がない外国人が働くとどうなる?
在留資格のない外国人が働いた場合。
- 外国人本人:強制退去命令、再入国禁止処分(5年以上)など
- 雇用主:入管法違反(不法就労助長罪)として刑事責任
実例として、東京の解体業者が在留資格の切れた技能実習生を契約して働かせたことで、代表者が略式起訴されたケースも報道されています。
合法的に働くためのステップ
外国人が合法に現場仕事に就くためには。
- 特定技能・技能実習などの「就労ビザ」を取得
- 既に在留資格がある場合、「資格外活動許可」の申請
- 受け入れ先が適正な登録支援機関かどうかを確認
外国人本人も、雇用主も「在留カードの裏表コピーの確認・保存」「在留資格の内容を理解すること」が基本的な義務となります。
まとめ:契約書は作れても、働けるかは別問題
「ビザがない外国人」が現場仕事の契約書を作成すること自体は法律違反ではありませんが、それに基づいて働くと重大な法的リスクを伴います。
在留資格の有無と内容の確認は、契約書を交わす前に必ず行いましょう。適正な手続きを踏めば、日本国内でも外国人が安心して働ける環境は整っています。トラブルや摘発を避けるためにも、「契約できる=就労できる」とは限らないことを理解しておくことが大切です。


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