かつて鉄道旅行の花形だった「寝台特急」は、今や『サンライズ瀬戸・出雲』を残すのみとなりました。近年発表されている新型夜行列車たちは、「夜行特急」や「長距離列車」といった名称を採用し、「寝台」という言葉をあえて使っていません。では、なぜそのような表現になっているのでしょうか?
かつての「寝台特急」とはどんな列車だったのか
寝台特急は昭和・平成初期の長距離移動手段のひとつで、特急料金に加えて寝台料金を支払う仕組みが一般的でした。『北斗星』『トワイライトエクスプレス』『あけぼの』などが有名で、豪華なA寝台からリーズナブルなB寝台まで幅広い選択肢がありました。
その後、新幹線や航空機の利便性に押され、定期運行する寝台列車は縮小。2025年現在、定期運行されているのはJR西日本とJR東海の共同運行である『サンライズ瀬戸・出雲』のみです。
新型夜行列車はなぜ「寝台」と呼ばないのか?
JR東日本が発表した新しい夜行特急列車は「特急」として位置づけられており、「寝台」という文言を使用していません。これは寝台車両として法的に登録された設備ではなく、座席をフラットにして横になれるような構造であることが理由のひとつと考えられます。
たとえば、2022年から運行を開始した『WEST EXPRESS 銀河』は「グリーン車」扱いであり、寝台車ではありません。横になれる「リクライニングシート」や簡易ベッドのような設備が用意されているものの、法的には「寝台」ではないため、寝台料金も不要です。
「寝台」を名乗るための法的な定義とは?
「寝台車」と名乗るためには鉄道営業法において「寝台設備を有する客車」として認可を受ける必要があります。また寝台車には構造基準や保守点検などの規制があるため、導入コストがかさむという現実的な問題もあります。
結果的に、「寝台」を名乗るには制度上のハードルがあり、グリーン車や指定席をベースにした柔軟なサービスを展開する方が、現代の需要やコストに合っているというのが現状です。
サービス重視の「夜行観光列車」化が進む
現代の夜行列車は、移動手段としてだけではなく「列車に泊まること」自体が目的化しています。『TRAIN SUITE 四季島』『ななつ星 in 九州』などはその典型例で、「ホテル列車」「豪華列車」としてのブランドが確立されています。
これに対し、今回のJR東日本の新型夜行特急はよりカジュアル層向けで、座席タイプでリーズナブルに夜行体験ができる新しい形として期待されています。
かつてとの違いを整理|寝台特急と夜行特急の比較
| 項目 | 従来の寝台特急 | 現代の夜行特急 |
|---|---|---|
| 法的区分 | 寝台車扱い | グリーン車・指定席など |
| 料金構成 | 特急+寝台料金 | 特急料金のみ(または座席指定料) |
| 設備 | 2段ベッド、個室、洗面所 | 簡易ベッド、リクライニングシート |
| 利用目的 | 移動・旅行 | 体験・旅行・観光 |
まとめ:時代に合わせて進化する夜行列車の呼び名
「寝台特急」という名称は、法的にも構造的にも特別な設備が必要であり、現代の夜行列車ではあえてこの名称を避けているのが実情です。これからの夜行列車は「寝台」という言葉ではなく、体験型・観光型の“夜を楽しむ列車”としての進化が期待されています。名称は変わっても、その魅力はむしろ深化していると言えるでしょう。


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