公共性のある巡回バス業務において、市バスの停留所近くでの停車を強いられ、交通違反のリスクを抱える運転手が増えています。この記事では、道路交通法の解釈を踏まえつつ、現場の課題をどう改善に導くか、実践的に解説します。
■ 道路交通法第44条とは?バス停前後10mの原則
道路交通法第44条では、「停留所標識の前後10m以内での駐停車禁止」を定めています。
これは一般車両だけでなく、送迎バスや施設巡回車にも該当し、運転手が乗車中でも違反対象となります(警察庁通達に基づく解釈)。
■ 法令と現場の矛盾が生むリスク
市バス停留所との併設がなされたままの巡回バス運行は、運転者にとっては「法令違反を前提とした運行指示」に等しく、業務上の法的リスクと心理的負担が大きい問題です。
そのまま放置すれば、交通違反切符・事故時の過失割合拡大・運行会社の責任追及といった深刻な影響も考えられます。
■ 行政・公的機関への相談ルート
組織内の改善が見込めない場合、以下の第三者窓口に相談することが有効です。
- 労働基準監督署:不適切な運行指示・安全衛生義務違反について通報可能
- 各都道府県の公安委員会:道路交通の安全運行ルールに関する助言
- 市区町村の道路管理者(建設課など):バス停移設や共存可否の相談先
※相談時には「写真付き現地の状況説明」「乗降の実態」「運行管理者の対応履歴」をまとめた資料を用意すると効果的です。
■ バス事業者が取るべき対策と手順
現場に責任を押しつけるのではなく、運行管理者には次のような責任と対策があります。
- ① 運行ルートの見直し(可能な限り市バス停留所との距離を取る)
- ② 所轄警察署・道路管理者と協議し、例外的な許可・標識設置の可否を確認
- ③ 乗降専用の道路使用許可申請(短時間停車を容認される場合あり)
こうした改善には会社の協力が不可欠ですが、現場発信で下準備・提案まで行うと動きやすくなります。
■ 実例:改善につながったケース紹介
ある福祉施設では、同様に市バス停そばの送迎をしていたが、写真付きで危険性・法的懸念を報告した結果、施設側が道路管理課・交通安全協会を通じてバス停の位置を2mずらす措置が取られました。
また、定期便として認可を受けることで「指定された時間のみ停車可能」な事前通告制度に移行した例もあります。
まとめ:個人任せにせず、正規の手続きを踏んで安全確保を
道路交通法の遵守と業務命令が矛盾する状況では、法的根拠と行政相談を活用することが改善の第一歩です。
まずは写真・証拠を整理し、所轄警察・道路管理者・労基署へ段階的に相談しましょう。運行管理者だけでなく、関係機関の力を借りることが解決の鍵となります。


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