船長と機長の権限の違いとは?空と海で異なる指揮命令権の背景と理由を解説

飛行機、空港

船長と機長はどちらも「移動する乗り物の最高責任者」という点で共通していますが、その権限には大きな違いがあります。この記事では、船長と機長の法的権限の違いや背景、そしてそれがなぜ生まれるのかを具体的に解説します。

船長の持つ強力な指揮権とは?

船長は「船舶職員及び小型船舶操縦者法」や「国際海事機関(IMO)」の規定により、船上では非常時に限らず、基本的にすべての乗員に対する絶対的な指揮権を有します

例として、海難事故や乗組員の反乱、病気発症時の医療判断などで、船長の判断が最終決定とされます。法律上、船長は「海上における国家の代理者」という側面も持っているのです。

機長はなぜそれほど強い権限がないのか

航空機の機長にも「航空法」によって安全運航の責任が定められていますが、あくまで機内の秩序保持と安全確保に限定されており、人事的な権限や業務命令違反での即解雇といった権限はありません

理由のひとつに「フライトの短時間性」と「空港にすぐ着陸できる」という事情があります。問題が起きても、着陸して地上の法制度で対処できるのです。

法律の適用領域が異なる

船舶は国際海域を長期間航行するため、緊急時の判断と統制が重要視される場面が多くなります。したがって、船長には刑事訴追・結婚の承認・死の認定といった特別な法的裁量権が与えられていることさえあります。

一方、航空機は国境越えでも基本的に主権国家の領空を通るため、機内秩序は該当国の航空法に従い、地上で法的対応を行う前提なのです。

「ナッツ姫事件」に見る現実の権力の限界

大韓航空での有名な「ナッツリターン事件」では、副社長が気に食わないサービスに怒って機長に出発をやり直させたことで国際的非難を浴びました。

これは経営陣が乗客であった特殊事例で、機長には本来そのような人事権や職務命令変更の強制力はありません。機長の権限はあくまで機内の安全と秩序に関するものに限られています。

例外的な機長の権限発動のケース

たとえば、フライト中に乗客が暴力を振るう、乗務員に対して反抗的な態度を取るといった事態が発生した場合には、機長判断で拘束したり最寄りの空港に緊急着陸したりすることが認められています。

また、航空法第73条の2では「違反乗客に対して機長が必要な措置を命じることができる」と定められており、機内の安全保持に限っては強い権限があります。

まとめ:空と海、それぞれの環境が生む権限の違い

機長と船長の権限の違いは、「環境と行動の自由度」に起因しています。海上という閉鎖空間かつ長期間の行動が求められる船では強力な指揮権が必要となる一方、航空機では地上の法制度と連携することで十分に対応可能という設計思想があるのです。

したがって、船長が持つ「統治者」としての性格と、機長の「管理者・安全責任者」としての性格には、本質的な違いがあるといえるでしょう。

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