インバウンド観光が盛り上がる中で、外国人観光客が訪れる店やエリアには特徴的な傾向が見られます。「なぜ彼らは地元民が訪れない店に集まるのか?」「SNSはその行動にどう影響しているのか?」こうした素朴な疑問こそ、今の観光研究において価値あるテーマになり得ます。
観光行動における「情報源」の違い
外国人観光客は旅行前にSNSや口コミサイト(例:TripAdvisor, Instagram, YouTube)で情報を集める傾向が強く、「見たことある」「映える」「話題性がある」ことが選定基準になることが多いです。
一方、地元民は価格、味、距離などの「実用性」を重視するため、外国人と地元民の“おすすめの店”は大きく異なります。
なぜ「インバウンド価格」の店に集まるのか?
インバウンド価格とは、外国人観光客向けに価格がやや高めに設定されている商品やサービスのことです。それでも彼らが訪れる理由には、限定体験・異文化体験・旅行ならではの出費許容があります。
たとえば築地の海鮮丼屋や京都のレンタル着物店など、地元民は価格に見合わないと感じる場所も、観光客にとっては“日本文化そのもの”として価値があるのです。
SNSがもたらす「観光地の偏り」と行動誘導
Instagramのハッシュタグ検索やTikTokの動画は、外国人観光客にとってガイドブック以上の情報源となっています。インフルエンサーが訪れた場所は即座に“行くべきスポット”として認識され、口コミが自己増殖する現象が起きています。
結果的に、地元住民にとっては観光地としての価値が薄い場所も、SNSによって爆発的に注目を集めることがあるのです。
研究テーマに活かせる視点のヒント
- 外国人観光客が訪れる飲食店と地元民の人気店のマッピング比較
- InstagramやTikTokにおける「日本旅行」関連の投稿分析と行動傾向
- 「インバウンド価格」の店が受け入れられる条件とは?
- 外国人観光客が“あえてローカル店に来ない”心理的バリアの研究
- レビューサイトの言語別比較(日・英・中)による傾向の違い
こうしたテーマはフィールドワークやSNSデータ分析とも相性が良く、実証的研究が可能です。
地元密着型店舗への誘導策も研究対象に
観光の分散化や地域経済への波及効果を高めるため、外国人を“地元民の店”へと誘導する工夫にも注目が集まっています。たとえば、多言語対応メニューの導入や、外国人旅行者が体験できる地元イベントの案内などです。
これを研究テーマとして、「どんな要素があれば外国人はローカルに来てくれるのか?」を調査するのも意義あるアプローチです。
まとめ:観光の“なぜ”から学問へ
外国人観光客の行動には、文化的背景・SNSの影響・旅行マインドなど複数の要因が絡み合っています。その違和感や疑問を出発点に研究を深めることで、現代の観光政策や地域活性にもつながる知見が生まれるかもしれません。
日常の中で感じた疑問をそのまま放っておくのではなく、「データで確かめる」「仮説を立ててみる」ことで、ユニークで意義ある研究テーマに発展させることができます。


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