一見すると事件の発生率が低く「治安が良い」とも言われる北朝鮮。しかし、その裏には非常に厳しい法制度と国家体制によるコントロールがあり、外国人にとっては予測不能なリスクをはらんでいます。この記事では、北朝鮮への渡航がなぜ危険とされるのかを、多角的な観点から解説します。
法律の厳しさは秩序の裏返し?
北朝鮮では国家による厳格な統制が行われており、市民による暴動や犯罪が起きにくい環境が整っています。街頭犯罪や窃盗が少ないのは事実ですが、これは治安の良さというより、政府による強力な監視と厳罰主義による抑止によるものです。
例えば、ちょっとした言動でも「反体制的」と見なされれば、拘束・尋問・処罰の対象となります。これは外国人にも適用され、一般的な感覚では理解しにくいリスク要因です。
日本外務省の渡航勧告レベルとその意味
日本の外務省は北朝鮮に対して「レベル4(退避勧告・渡航禁止)」を常に発出しています。これはイスラム過激派の活動が活発な戦闘地域と同等の危険水準と見なされており、日本国民に対して渡航を厳に控えるように警告しています。
渡航禁止とされる背景には、不当拘束や抑留事案、外部との通信手段の遮断などの過去の事例が含まれており、国家間での交渉も難航する傾向があります。
観光客でも起こりうる不測のトラブル
過去にはアメリカ人観光客がホテルのポスターを持ち帰ろうとしたことが「国家転覆行為」と見なされ、15年の労働教化刑を宣告されるという事件がありました(2016年)。
また、日本人旅行者が公的機関の写真を撮影したことを理由に拘束された事例もあります。北朝鮮では合法か違法かがあいまいで、現地ガイドの指示を逸脱した行動が即座に「スパイ行為」扱いされることもあるため注意が必要です。
緊急時の日本大使館による支援が期待できない
北朝鮮には日本の大使館・領事館が存在しないため、トラブル時に日本政府が即座に支援できる体制が整っていません。第三国の大使館を通じての対応となるため、時間がかかり対応も限定的です。
外交関係が事実上断絶している国への渡航は、一度拘束されると長期的な拘留や交渉の遅延に直結し、本人の安全確保が非常に困難になります。
現在の入国規制とツアー運営の実態
2024年現在、北朝鮮は新型コロナウイルス対策を理由に外国人観光客の受け入れを停止している状態が続いています。限られた時期のみ、特定の団体ツアーに限って短期間の受け入れが許可されることがあります。
入国できるとしても、現地では常にガイドが付き添い、自由行動はほぼ不可能。個人行動は禁止され、指定された場所以外での移動も厳しく制限されます。
まとめ:見かけの治安の良さに惑わされないことが重要
北朝鮮は一見「安全そう」に見える国かもしれませんが、それは国家権力による強制的な秩序維持の結果です。一般的な旅行者の常識が通じない社会である以上、観光目的の渡航でも重大なリスクを伴います。
外交支援体制の不備、不透明な法制度、政治的リスクの高さなどを考慮すると、現状では北朝鮮への渡航は極めて慎重に考えるべきと言えるでしょう。旅行先を選ぶ際には、安全情報と渡航勧告を必ずチェックし、万一の事態に備えることが不可欠です。

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