かつて日本各地で活躍していたレールバスやマニュアル変速式の気動車には、現在の鉄道車両とは異なる運転操作が求められました。特に南部縦貫鉄道で使用されていたキハ10形レールバスなどでは、クラッチ操作とシフトチェンジが必要で、まさに「鉄道版マニュアル車」ともいえる存在です。この記事では、そうした車両における変速操作の仕組みやアクセル(マスコン)の扱い方について、わかりやすく解説します。
マニュアル変速式気動車とは?
一般的な気動車(ディーゼルカー)は、トルクコンバータなどを用いた自動変速機構(液体式)が主流ですが、かつての一部車両にはクラッチとHパターンの変速機が搭載されていました。
たとえば南部縦貫鉄道のレールバス「キハ10形」には、トラック由来のMT(マニュアルトランスミッション)が搭載されており、運転士はクラッチペダルを踏みながらシフトチェンジを行っていました。
ギアチェンジ時はアクセルを戻すのが基本
車の運転と同様、マニュアル気動車においても変速時にはアクセル(マスコン)をオフにする必要があります。これはギアを抜く際のトルク抜けを防ぐと同時に、クラッチとトランスミッションへの負担を減らすためです。
実際の操作手順は以下のようになります。
- 加速中にクラッチペダルを踏む
- 同時にマスコン(アクセル)を戻す
- 変速レバーで適切なギアにシフト
- クラッチを徐々に戻しつつ、再度マスコンを開く
この操作は坂道や勾配区間では特に慎重さが求められ、スムーズな変速ができないとショックや空転の原因になることもありました。
アクセル操作とマスコンの違いに注意
鉄道車両の運転では「アクセル」とは言わず、「マスコン(マスター・コントローラー)」と呼ばれる装置で出力を制御します。ただし、マニュアル気動車の場合、その動作原理は自動車のアクセルに近く、スロットルバルブを直接開く構造となっていました。
このため、「マスコンを戻す」=「アクセルを戻す」動作にあたり、車とほぼ同様のタイミングでアクセルオフが必要となります。運転士はこれらの操作を感覚的に行っていたため、ベテランでなければスムーズな変速は難しいものでした。
実例:南部縦貫鉄道レールバスの運転操作
南部縦貫鉄道のレールバス(キハ10)は、エンジンがフロントにあり、変速レバーもまさにトラックのようなHパターン。ギアは1速〜4速+R(リバース)で構成され、駅発車時は1速、巡航時は3速や4速で走行していました。
加減速のたびにクラッチを操作しながらマスコンを戻し、変速、再加速という一連の流れは、自動車免許を持つ運転士でも最初は戸惑うレベルでした。
とある元運転士の証言によれば、「車体が軽いからクラッチ操作はシビア。ちょっとミスるとガクッときてしまう」とのこと。
まとめ:鉄道にも存在したマニュアル操作の世界
クラッチ操作が必要な気動車では、ギアを変える際に必ずマスコン(アクセル)を戻す必要があります。これは車の運転と同様の基本動作であり、トランスミッションとエンジンを円滑につなぐための必須手順です。
今では貴重な存在となったマニュアル変速の鉄道車両ですが、その操作には確かな技術と経験が求められ、乗り手の技量が走りに直結する世界でもありました。鉄道ファンなら一度は体験してみたい、そんな“人の手で走らせる鉄道”の魅力がそこにはあります。


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