駅や空港、商業施設などで見かけるトイレ清掃の現場。中には男性清掃員が女子トイレを、女性清掃員が男子トイレを清掃していることもあります。一見不自然にも思えるこの運用ですが、そこには人手や運営効率、安全面を考慮した事情があります。
人手不足とシフト体制の現実
トイレ清掃業務は、慢性的な人手不足に悩まされている業界の一つです。性別を完全に分けて配置すると、業務効率が落ちてしまうことがあります。
たとえば、女性スタッフが男子トイレの清掃に入る場合は、周囲に「清掃中」の札や案内表示をし、配慮しながら作業をします。同様に、男性清掃員が女子トイレに入る際も、清掃中であることをしっかり明示し、声かけをするなどして利用者に不快感を与えないよう配慮が求められます。
法的にはどうなっている?
公共の場所でのトイレ清掃において、男性が女子トイレを、女性が男子トイレを清掃すること自体は禁止されていません。厚生労働省の衛生管理マニュアルや施設管理基準でも、「作業中の表示」「声かけ」などの配慮を前提に認められています。
ただし、プライバシー配慮や利用者への心理的負担を軽減するため、施設側はできるだけ同性清掃を基本とする傾向も見られます。
清掃エリアの割り当て事情
清掃スタッフは通常、男女ペアまたは1~2名体制で複数のトイレを巡回します。このとき、時間帯や緊急性によって性別が逆の担当になることはよくあります。
特に混雑する駅や観光地では、女性トイレの利用者が多いため、清掃回数や頻度も高まります。時間帯によって「女性清掃員が男子トイレ」「男性清掃員が女子トイレ」となる配置をすることで、全体の衛生管理を維持しています。
利用者への配慮も年々進化
近年では、男女いずれの清掃員が担当しても「今誰が掃除しているのか」がひと目で分かるような表示板が設置されています。
また、清掃中に入ることに不安を覚える人向けに、利用可否をアイコンや信号表示で示す仕組みも導入され始めています。施設の中には時間を区切って清掃時間帯を設定し、混雑回避と清掃の質を両立させている事例もあります。
男女分担が不可能なケースもある
たとえば駅構内の契約が「1人体制」で行われている場合、そのスタッフが女性・男性どちらであっても全トイレを担当せざるを得ないこともあります。
また、体力面で清掃機材を運ぶ都合上、男性が割り当てられる現場もあり、性別だけで割り振ることが現実的でない場合も少なくありません。
まとめ:違和感の背景には実務的な事情がある
「なぜ男性清掃員が女子トイレを?」「女性が男子トイレを?」と驚く声も少なくありませんが、現場では限られた人員と時間の中で、安全・衛生を維持するために運用されています。
ただし、利用者が不安を感じないよう、案内表示や声かけ、明確な清掃中サインなど配慮を徹底することが何より大切です。見かけた際には「不適切」ではなく「必要な役割」として理解を深めることが、より良い公共空間づくりに繋がります。


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