バス業界では、乗務後の帰宅手段としてハイヤーを利用し、その翌日に早朝から勤務に入るケースがしばしば話題になります。特に「社長を空港に迎えに行く」などの重要任務に備え、運転士の疲労や法令上の制限が問題視されることも。本記事では、道路運送法や労働基準法、運輸局の指針などに基づき、このケースの可否と判断ポイントを解説します。
乗務終了後の「休息期間」は確保されているか
バス運転士に適用される労働時間のルールでは、「運転業務終了後に継続した8時間以上の休息」が必要とされています(改善基準告示)。
たとえハイヤーで帰宅し、身体的な負担が軽減されたとしても、休息時間が8時間を下回ると翌日の乗務は原則不可です。
ハイヤー利用と「自宅帰宅=休息」扱いの考え方
ハイヤーを使えば早く帰宅できることもありますが、「帰宅=即休息」にはなりません。たとえば自宅での食事や入浴、準備等の時間も含め、実質的に休息に入るまでに1〜2時間を要することも多いため、計算に注意が必要です。
運輸局の監査においては「形式的な休息時間」ではなく「実態としての回復時間」が問われる傾向にあります。
翌日の勤務が「旅客乗務」に該当するか
仮に翌日の業務が「送迎」「待機」など軽微な業務だとしても、乗務日報上、運転が発生すればそれは明確な勤務です。空港送迎など長距離運転を伴う場合は、特に慎重な運行管理が求められます。
運行管理者は「点呼」と「乗務前後の体調チェック」を通じて、疲労の蓄積や睡眠不足がないかを確認する義務があります。
実際の事例:監査で指摘されたケース
・あるバス会社では「深夜帰着→ハイヤーで自宅→翌朝6時に社長送迎」の運用が続いていたが、労働基準監督署により改善指導を受けた例がある。
・形式的に“8時間の休息”を確保していたが、実質的な仮眠時間が4〜5時間と判断され、過労運転と見なされた。
このように、「ハイヤーで帰ればOK」という考えが必ずしも通用しないことが分かります。
会社としてどう対応すべきか
- 運行管理者が「8時間以上の休息を実質的に確保」した記録を点呼簿等に残す
- ハイヤー利用時の時刻記録(帰着→帰宅→入床)を運転士に申告させる
- 翌朝業務を別の運転士に割り当てるローテーションを準備
バス会社にとって重要なのは、法令順守+事故リスク管理のバランスです。
まとめ
・ハイヤーでの帰宅は一見効率的だが、実質的な「休息時間」が8時間未満であれば違法の可能性あり。
・翌朝の送迎業務が「乗務」に該当するなら、なおさら慎重に判断する必要がある。
・形式ではなく実態で休息が取れているかが重要視されるため、運行管理側の対応がカギを握ります。
会社の規模や体制に応じて、柔軟にシフトを組む工夫と記録管理を徹底することが、安全運行と法令順守につながります。

コメント