国際物流の現場では、「なぜ航空輸送では海上輸送のようにコンテナごと目的地まで運ばれないのか?」という疑問を抱く方も多いです。実際、FCL(Full Container Load:コンテナ単位の一括輸送)であれば、船便のように航空コンテナごとトラックで輸送した方が効率的にも見える場面があります。しかし、航空輸送には特有の制約と理由があります。
航空コンテナと海上コンテナの構造的な違い
海上輸送で使用されるコンテナ(例:20フィート・40フィート)は、陸上輸送でもそのまま利用できる構造になっています。一方、航空用のULD(Unit Load Device)と呼ばれるコンテナは、機体に最適化された形状と素材で構成されており、軽量で曲面を持つ特殊な構造です。
このため、航空コンテナはそのまま地上輸送に転用しづらく、専用の搬送設備が必要になるうえ、耐候性や耐衝撃性も限定的で、長距離輸送には向いていません。
航空会社と地上輸送業者の役割分担
航空輸送では、航空会社は空港間の輸送に集中し、空港と最終目的地の地上輸送はフォワーダーや陸送会社が担う分業体制が一般的です。
航空会社はULDを空港間で管理し、到着後は荷物を取り出してから陸送業者に引き渡します。ULD自体は再利用されるため、空港で回収・保管され、次のフライトで再使用されます。
FCLでもULDの占有は「機体内」の意味に過ぎない
FCL(または航空便におけるチャーター扱い)でULDを占有していても、それは「その便の貨物スペースの専有」であり、「そのまま届ける契約」ではありません。
たとえば、EMSやDHLなどのクーリエ便であっても、集荷後はいったんハブに集められ、飛行機で運ばれた後は再度分解されて配送網に乗せられます。
時間短縮の観点ではどうなのか?
たしかにULDごとトラック輸送できれば、積み替えの手間は省けます。しかし前述のとおり、ULDの設計は地上輸送には不向きであり、セキュリティ面や保険面でも問題が生じます。
また、空港で税関検査が必要な貨物が多いため、物理的にそのまま外へ出すことが難しく、通関や仕分けを空港で行うのが現実的なフローです。
実際の事例:チャーター機での特殊貨物輸送
例外的に、大型の航空貨物チャーター便を利用する際には、パレットやULDのまま最終地点まで輸送するケースも存在します。医療機器やF1マシンのように緊急性が高く、特殊な包装・温度管理が必要なケースに限られます。
こうした場合でも、ULDを再利用可能な設計であることから、回収・返却の手配が別途必要となります。
まとめ
航空コンテナが海上輸送のようにそのまま目的地まで運ばれない理由は、「構造上の制約」「運用ルール」「地上輸送への非対応」「通関体制」など、複数の要因が複雑に絡み合っているためです。FCL輸送であっても、航空輸送における「コンテナ占有」は空港間の機内輸送に限られる点に注意が必要です。


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