水族館の大水槽で小魚が食べられない理由とは？共存のしくみを解説

水族館の大水槽では、大型魚と小型魚が同じ空間を泳いでいる様子がよく見られます。一見すると捕食されてしまいそうに思えますが、実際にはそのような事態はほとんど発生しません。この記事では、水族館で魚たちが共存できる理由やその背後にある管理方法について解説します。

水族館の魚は「食べないように管理」されている

まず第一に、水族館では魚たちの食性や習性を理解したうえで展示されており、捕食が起きないよう綿密に管理されています。大型魚であっても満腹状態に保たれているため、他の魚を狙う動機がないのです。

たとえば、ジンベエザメは世界最大級の魚ですが、プランクトンなどを主食としており、小魚を狙うことはありません。このように、「見た目は肉食でも実際はおとなしい」魚が多く選ばれています。

水族館のスタッフは、魚同士の相性やテリトリー意識などを細かく把握しています。そのため、攻撃性が高い種類や他の魚を襲う傾向がある種類は、別の水槽に隔離されるのが一般的です。

実際、ある水族館ではアジやイワシのような小魚とサメが同居しているケースでも、サメの種類が「温厚で捕食性が低い」ものに限定されているため問題が起きていません。

野生環境では確かに「弱肉強食」が一般的ですが、水族館という人工環境ではそれが再現されるとは限りません。エサが定期的に与えられ、ストレスの少ない環境が整っていることで、魚たちの攻撃性が抑えられているのです。

特に「混泳展示」では、捕食リスクのない種や同種同士で安定した関係を築ける種が選ばれています。

飼育員やアクアリストたちは、水槽の中の魚たちの様子を常に観察しており、万が一の争いや異変があった場合には即座に対応します。個体ごとの性格の違いや成長による行動変化も注視されており、展示は日々調整されています。

例えば、ある水族館ではナポレオンフィッシュの成長に伴い他の魚とのバランスが崩れたため、展示替えが行われたという事例もあります。

水族館の大水槽は、生態系を模した「海の風景」を再現することを目的に設計されている場合もあります。つまり、観覧者にとって見ごたえのある風景を提供しながら、生態学的にも無理のない構成を実現しているのです。

イワシの群れとエイ、サメ、マグロが共に泳ぐ光景は見事ですが、その裏には繊細な調整と飼育技術が支えています。

水族館で小魚が大型魚に食べられないのは偶然ではなく、緻密な設計と管理、そして動物たちの習性への深い理解によるものです。観覧者が安心して楽しめるのは、こうした裏方の努力があるからこそ。水槽を見る際には、その舞台裏にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。