旅客運送業では、安全運行のために運転手への点呼が義務付けられています。近年、IT技術の進化により「IT点呼」や「遠隔点呼」といった新たな点呼方法が認可され、効率化と安全性の両立が図られています。本記事では、特に旅客事業において注目されるこの2つの点呼方式の違いについて詳しく解説します。
IT点呼とは?
IT点呼とは、営業所間を専用システムで結んで遠隔地の運行管理者が乗務員と対面せずに行う点呼方法です。国土交通省が定めた一定の条件を満たす事業者にのみ導入が認められており、バスやタクシーなどの運行業務で活用されています。
特徴としては、専用システムを用いた映像・音声通話、アルコールチェック機能の連携などが求められます。例えば、グループ会社間で営業所をまたいで点呼を行いたい場合などに有効です。
遠隔点呼とは?
遠隔点呼は、運行管理者が営業所以外の場所から、通信機器を使って乗務員と点呼を行う方式です。2022年の制度改正で旅客業にも段階的に導入が進められ、運行管理者が在宅勤務中でも対応可能になるといった利点があります。
最大の違いは、遠隔点呼では「運行管理者のいる場所」と「乗務員のいる場所」が別々でも点呼できるという点です。これにより、柔軟な労働環境の整備にも寄与しています。
IT点呼と遠隔点呼の主な違い
| 項目 | IT点呼 | 遠隔点呼 |
|---|---|---|
| 点呼の場所 | 営業所(複数可) | 運行管理者が営業所以外でも可 |
| 制度対象 | 当初は貨物業→旅客へ拡大 | 貨物・旅客共に制度化 |
| 要件 | システム認定・設備設置 | 通信品質・録画保管など追加 |
| 導入の柔軟性 | 比較的限定的 | テレワークなど対応 |
このように、制度面・技術要件・対象範囲に違いがあるため、導入時は目的と自社の運用体制に応じた選択が必要です。
旅客運送業での導入事例
たとえば地方の観光バス会社では、夜間点呼を遠隔点呼に切り替えることで人件費の削減と労務管理の改善に成功したケースがあります。都市部のタクシー会社では、拠点間でIT点呼を活用して効率的な配車体制を構築しています。
これらの事例からわかるように、運行規模や運行形態によって最適な点呼方式が異なります。
導入前に確認すべき法令と認可
いずれの点呼方法も導入には一定の条件と国土交通省への届出・認可が必要です。システム面では、国交省のガイドラインに沿った要件を満たす必要があります。
また、導入後は記録の保存やトラブル時の対応など、実務上の整備も欠かせません。ITや遠隔技術に強い外部ベンダーと連携して、継続的に点呼業務を改善していく姿勢も重要です。
まとめ|業務効率化と安全確保の両立に向けて
IT点呼と遠隔点呼は似て非なるものであり、導入目的や運用体制によって選択肢が変わります。旅客運送業においても、これらの新しい点呼制度を上手に活用することで、安全性を確保しつつ、業務の効率化と人手不足の解消が期待できます。
制度や技術は日々進化しています。現場のニーズに合わせて柔軟に取り入れていきましょう。


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