「ナゴヤドーム」から「バンテリンドーム」へ：名称変更はどこまで浸透しているのか？

球場のネーミングライツは、企業のブランド戦略と地域密着の両立が求められる難しい施策です。2021年に「ナゴヤドーム」から「バンテリンドームナゴヤ」へと改称されて3年以上が経過しましたが、この名称変更は果たしてどれほど市民やファンの間に浸透しているのでしょうか。

ネーミングライツとは何か？

ネーミングライツとは、施設の名称に企業名や商品名を冠する権利を企業が買い取ることで、広告効果を狙うマーケティング手法です。国内ではプロ野球球場などで多く導入されており、バンテリンドームもその一例です。

バンテリンドームの命名権は、興和株式会社が自社の健康関連ブランド「バンテリン」を冠して取得したもので、契約期間は2021年1月から5年間とされています。

多くの人にとって「ナゴヤドーム」は20年以上使い続けてきた馴染みのある名称です。そのため、改称後も地元では「ナゴヤドーム」と呼ばれることが多く、公共交通機関の案内表示にも旧名称が併記されるケースが見られます。

また、プロ野球に関心のない人やスポーツにあまり詳しくない層では、「バンテリンドーム」と聞いても場所がピンとこないという反応があるのも事実です。

中日ドラゴンズのファン層やスポーツメディアでは、比較的「バンテリンドーム」の名称が浸透しています。公式発表やニュース、チケット情報ではすべて新名称が使用されており、特に球団公式アプリやSNSを利用している層では抵抗なく受け入れられています。

一方、ライト層や一般市民では「ナゴヤドーム」の呼び名が根強く、両者が併用される状況が続いています。

例えば、「京セラドーム大阪」や「ベルーナドーム（旧西武ドーム）」も同様の過程を経てきました。これらの施設でも、初期は旧名称が優勢でしたが、5年以上が経過することで次第に新名称へと移行しています。

「バンテリンドーム」もこの流れに沿って、今後さらに定着が進むと考えられます。

名称の浸透には、企業側のPR戦略と地域社会の受け入れが不可欠です。バンテリンブランドが地域医療や健康イベントなどに関与することで、地域住民との接点が増えれば、名称への愛着も深まっていくでしょう。

「バンテリンドーム」という名称は、公式には完全に移行していますが、市民レベルではまだ「ナゴヤドーム」としての記憶が色濃く残っています。これはある意味、その場所が長年にわたり市民に親しまれてきた証でもあります。

ネーミングライツの本質は、企業と地域、そして施設利用者との三者の関係性にあります。呼び名が変わっても、その場所の大切な意味は変わらないのです。