酔客トラブルとタクシー暴行事件の心理背景:「酒はやめる」と言えても「タクシーはやめない」理由とは

バス、タクシー

酔った勢いでタクシー内で暴行事件を起こすケースは、ニュースでもたびたび報じられます。逮捕後に「もうお酒は飲まない」と反省する人は多く見られますが、「もうタクシーには乗らない」と語るケースはほとんどありません。なぜこのような心理の違いが生まれるのでしょうか。

加害者が反省する対象は「自分の行為」ではなく「酔ったこと」

酒に酔って暴力を振るってしまった人が反省する対象は、その多くが「自分の酩酊状態」に対してです。つまり「酒さえ飲まなければ、あんなことはしなかった」と自己正当化する傾向があります。

このため、「タクシーに乗ったから悪い」とは思わず、むしろ「お酒のせいで自分が変わってしまった」と捉える人が多いのです。

タクシーは生活のインフラであり、代替手段が少ない

タクシーは、公共交通機関の少ない深夜や、急ぎの移動、飲酒後の帰宅などにおいて非常に重要な移動手段です。多くの人にとって「生活の足」となっており、日常的に使われるものです。

そのため、暴行事件の原因が「酒」であると認識される限り、「タクシーに乗らなければいい」という選択肢はそもそも考慮されづらい傾向にあります。

「加害者=被害者」の構造が成立しない認知

暴行の舞台がタクシー車内だったとしても、多くの加害者は「自分が悪い」と認識しても、「タクシー」という環境が問題だったとは捉えません。これは、タクシー運転手に非があるわけではないにもかかわらず、タクシーが“舞台”としての扱いしか受けていないことに起因します。

一方、アルコールに対しては「自分がその影響を受けた」「制御できなかった」と自分ごととしての反省がしやすいため、「もう飲まない」という発言につながるのです。

実際の事件と発言の傾向:過去の判例から見る心理傾向

過去の報道を調査すると、例えば都内で起きたタクシー車内での暴行事件では、「反省しています」「もうお酒は控えます」といった発言が目立ちますが、「移動手段を変える」と言及された例はほとんど見つかりません。

また、裁判で情状酌量を求める際にも「飲酒をやめる意思」を表明するケースは多くありますが、「今後はタクシーを利用しない」と述べる弁論は見られませんでした。

加害者心理と再発防止策のズレ

本来であれば、再発防止の観点からは「飲酒した状態で一人で公共交通機関に乗ること」のリスクをもっと周知すべきです。特に深酒後は家族や友人と帰宅する、代行を使うなどの対策も考えられるはずです。

しかし「酔って暴れたこと」への反省が強すぎて、「暴れた環境」や「行動の背景」に目が向かないことが多く、実効的な再発防止にはつながらないことも問題です。

まとめ:本当に変えるべきは「手段」ではなく「行動の設計」

「もう酒は飲まない」と言う人が多い一方で「タクシーに乗らない」と言わないのは、それが“悪かった行為の主体”と認識されていないからです。

大切なのは、タクシーを避けるのではなく「酔って一人で乗る」リスクや、「自制心が働かなくなる状況」を避ける生活習慣を見直すこと。それが本当の意味での再発防止につながるのではないでしょうか。

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