タクシー業務を行っている中で、乗客が「後日払う」と言って逃げたり、支払いを故意に避けるケースに直面した方もいるかもしれません。こうした場合に「詐欺罪」が成立するのか、あるいは別の法的対応になるのかを、実例を交えて解説します。
無賃乗車はどのような罪になるのか?
乗客がタクシー料金を払わずに逃げる行為は、基本的には「詐欺罪」または「債務不履行」として扱われます。
詐欺罪(刑法246条)は「他人を欺いて財物を交付させた場合」に成立します。したがって、乗車時点で最初から支払う意思がなかったことを立証できれば、詐欺罪が成立する可能性があります。
後払いを装ったケースは詐欺になるのか?
実際にあったケースとして、あるドライバーが無線配車で客を乗せたところ、目的地到着後に「今は金がない。後日振り込む」と言われ、振込先も教えたが結局支払いがなかったという事例があります。
このようなケースでは、「最初から支払うつもりがなかった」ことを証明できれば、詐欺罪の立件は可能性がありますが、現実には立証が難しく、民事上の未払いとして処理されることも少なくありません。
詐欺罪として扱われた実例と判断のポイント
判例では、乗車時から「支払う気がなかった」と認定されれば詐欺罪が成立した例もあります。たとえば、過去に何度も無賃乗車を繰り返していた人物が、同様の手口で乗車し、支払いを免れたケースでは、明確な「欺罔(ぎもう)行為」と「故意」があるとして刑事事件化されました。
このように、同様の被害が複数ある、あるいは嘘の身元情報を提供していたといった要素があると、詐欺罪として警察が動く可能性が高くなります。
民事で請求する方法と手順
仮に刑事告訴が難しい場合でも、民事での料金請求は可能です。ドライバーまたはタクシー会社は、乗車記録や無線の記録、車内カメラの映像などを証拠として相手方に請求できます。
少額訴訟制度(60万円以下)を使えば比較的簡易に対応可能で、最寄りの簡易裁判所で申し立てが可能です。請求書を送っても無視される場合には、これを検討してもよいでしょう。
タクシードライバーができる事前防止策
こうしたトラブルを防ぐためには、乗車時に支払い手段を確認したり、怪しいと感じた場合は無線で本社と連絡を取るのも有効です。
また、ドライブレコーダーを車内に設置し、会話や挙動を記録しておくことは、いざというときの証拠になります。
まとめ
乗客が「後日払う」と言って逃げるケースは、状況によって「詐欺罪」が成立する可能性もありますが、多くは民事での対応になります。
ドライバーとしては、事前防止策を講じると同時に、証拠をしっかり残すことが最も重要です。万が一の際には、警察への相談や、簡易裁判所での請求手続きも選択肢に入れましょう。
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