海上保安庁の巡視船が港へ入出港する際にタグボートの支援が必要かどうかは、船の大きさや港の構造・設備状況など、複数の要素によって左右されます。本記事では、タグボートの役割と、巡視船の運用における実際の使用事例を交えながら、その必要性について詳しく解説します。
タグボートとは何か?役割と基本機能
タグボートは、港湾内で大型船の着岸・離岸を補助する小型の強力な船です。主に大型船舶の舵やスクリューだけでは細かい操船が難しい場面で活躍します。
特に強風や潮流が強い港湾、水路が狭く自力での旋回が難しい場合にタグボートの支援は不可欠です。
巡視船の種類とその運用
海上保安庁の巡視船には、PLH(ヘリ搭載型大型巡視船)やPM型(中型)など複数のクラスが存在します。PLH型などは全長100m超、総トン数も数千トンに及ぶことがあり、自力での入出港操作に制限がある場合があります。
一方、小型巡視船(PS型やCL型)はタグボートの支援を必要としないケースが多く、迅速な出入港が可能です。
港の構造によって変わる支援の有無
入港する港が広く、旋回スペースが十分に確保されている場合、大型巡視船でも自力操船のみで接岸可能なことがあります。たとえば、横須賀や東京湾の一部などの大規模港湾では、船内のスラスター(横方向推進装置)や補助エンジンを駆使することでタグボートの使用を回避するケースもあります。
しかし、地方の狭い漁港や港湾設備の乏しい場所では、安全性を確保するためにタグボートが必須となる場合もあります。
実例:PLH型巡視船とタグボートの連携
実際に、「しきしま」や「あきつしま」といった大型巡視船が、地方港に入港する際には1〜2隻のタグボートが随伴することがあります。これにより、接岸時の位置調整や安全確保が迅速かつ確実に行われます。
また、災害派遣や外国要人の来日警備時には、スムーズな運用のためタグボートが事前に準備されるケースも報告されています。
タグボート不要の最新技術も進化中
近年の巡視船は、360度回転可能なアジマススラスターなどの最新技術を採用しており、タグボートを使用せずともかなり精緻な操船が可能になっています。
特に、緊急出動時など時間が重要な場面では、タグボートの手配が不要なことは大きな利点とされています。
まとめ:タグボートの必要性は状況次第
海上保安庁の巡視船がタグボートを必要とするかどうかは、「船の大きさ」「港の構造」「現場の気象・海象条件」などによって変わります。
すべての入港でタグボートが必要というわけではありませんが、安全性を重視する運用ではその支援が大きな役割を果たすことも事実です。港湾事情や船の性能に応じて、最適な選択がなされているのです。


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