90歳のタクシードライバーは“ベテラン”か?高齢ドライバーの現状と安全・制度の観点から考える

バス、タクシー

最近、「90歳のタクシードライバーはベテランと言えるのか」といった疑問を耳にすることがあります。本記事では、日本におけるタクシー業界の年齢構成や法制度、高齢ドライバーにまつわる安全性・実務の現状をもとに、この問いに対する“論点整理”を行います。

日本のタクシードライバーの年齢構成と制度的な上限

日本では、タクシードライバーに法律で定められた明確な年齢上限はありません。いわゆる「普通自動車第二種免許」を持ち、健康であれば高齢でも働ける職種です。([参照] タクシー運転手には定年や年齢制限はあるか?)

ただし、法人タクシーの多くでは定年制度を導入しており、一般的に60歳や65歳で定年となる会社が多いようです。それでも、定年後に嘱託や契約社員として再雇用され、働き続けるケースも報告されています。([参照] タクシー運転手の定年は? – Drivers‑Gate)

一方で、個人タクシーにおいては別の制度があり、かつては75歳を上限とする制度が設けられていたこともあります。設置当初は75歳までの更新が認められていました。([参照] 個人タクシーの年齢制限について)

高齢ドライバーに対する免許制度・安全確認の仕組み

日本では、高齢運転者の安全対策として、70歳以上のドライバーに対して免許更新時の講習、さらに75歳以上で違反歴がある場合には実車を含む「運転技能検査」が義務づけられています。([参照] 高齢者講習と運転技能検査の概要)

このような制度は、高齢になることで起こりやすい身体的・認知的な変化──反射神経の鈍化や判断力の低下など──に対する安全確保を目的としています。

「高齢」=「ベテラン」ではないが…経験の重みとリスクの両面

年齢が高いということは、それだけ長く運転してきた可能性があるため、経験に裏打ちされたノウハウや対応力を持つ点で“ベテラン”的な強みはあります。特に接客や道の知識、落ち着いた運転などは経験が生きやすい分野です。

しかし一方で、加齢に伴う身体能力や判断力の変化、また高齢者特有の反応速度の低下といったリスクも無視できません。「90歳」という年齢は、たとえ免許を持ち続けていたとしても、肉体的・認知的な安全性をどう確保するかが重要な論点となります。

実情としての「現役高齢ドライバー」の割合と業界の動向

実際、日本のタクシー業界では60代・70代のドライバーが多数を占め、平均年齢も60歳前後となっており、高齢ドライバーの継続就労は珍しくありません。([参照] 若者がタクシーを敬遠…乗務員の高齢化が進む)

ただし、高齢ドライバーの増加に伴って安全性への懸念も強く、制度面での免許更新要件の厳格化や、ドライバーの健康管理の強化が進んでいます。([参照] 高齢ドライバーの運転免許更新制度(警察庁))

「90歳ドライバー=ベテランか」の判断に必要な条件

  • 健康状態・身体能力の確認 — 高齢であっても、視力・判断力・体力などが運転に支障ないかが重要。
  • 違反歴・運転記録 — 長年の経験があっても、過去3年以内などに重大な違反歴があれば免許更新で制限がかかる場合も。
  • 勤務形態・会社の安全管理体制 — どのような労働条件か、無理のない勤務時間か、安全講習や健康チェックが行われているか。
  • 本人の自覚と責任感 — 高齢であることを自覚し、安全運転を最優先する姿勢があるか。

まとめ

「90歳のタクシードライバーはベテランか」という問いに対しては、“年齢だけでは判断できず、健康状態・運転能力・実績・安全管理の全体像で見極めるべき”というのが現実的な結論です。

確かに長年の経験という強みがある一方で、高齢による身体的衰えや判断力の低下などリスクも否定できません。安全・安心を第一に考えるなら、「年齢=ベテラン」という安易な判断は避け、個別の条件を慎重に見極めることが重要です。

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