北陸新幹線・敦賀以西ルート検討の現状と白紙論議の背景──自治体合意と整備新幹線の条件

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北陸新幹線の敦賀〜新大阪間の建設については、2016年に「小浜・京都ルート」が与党の整備新幹線計画として決定されましたが、最近になってその後のルート検討が与党内で再検討される動きが出ています。この議論が「整備自体が白紙ではないか」という疑問につながっているため、現在の検討状況や背景をわかりやすく整理します。

北陸新幹線・敦賀以西の計画経緯

北陸新幹線は長野まで開業し、金沢から敦賀まで延伸が完了していますが、敦賀から新大阪までの延伸は未着工です。2016年には敦賀〜京都〜新大阪を結ぶ「小浜・京都ルート」が与党PTで決定され、基本計画として進められてきました。[参照]

しかし、京都市内の環境や地下水問題を巡る反対運動などもあり、地元自治体からの合意形成が難航した結果、昨年末に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームが「複数のルート案(8案)」を再検討する方針を決めたと報じられています。これは決定済みルートを事実上見直す動きとの印象もありますが、複数案を比較検討する手順として位置付けられています。[参照]

なぜ複数ルート案が検討されるのか

今回検討されている8案には「小浜・京都ルート」以外にも、亀岡ルートや米原ルート、湖西ルート、舞鶴経由ルートなどさまざまな案が含まれています。これらは直近で維新の会などが提案したもので、各ルートについて費用・便益や沿線自治体の賛否、安全性などが比較される予定です。[参照]

この検討の目的は「決定を白紙に戻すこと」そのものではなく、従来案のコスト増大や環境・自治体の合意問題を踏まえた上で、どの案が実現可能性が高いかを再評価することです。したがって、検討=白紙化ではなく、意思決定に至るプロセスを補完する意図があります。

沿線自治体の要望と合意形成

確かに、現在の検討段階では「どのルートも沿線自治体がハッキリ新幹線を要望していない」という問題が指摘されています。例として滋賀県は北陸新幹線に対して消極的な姿勢を示し、並行在来線の経営分離についても同意していません。また京都府・京都市も地下水問題等で静観の構えを示すなど、合意形成が進んでいない状況です。[参照]

一方、福井県や富山県などは京都経由案を支持してきた歴史があり、地域間でも要望に差があります。このため「全ての自治体が強く求めていない」という見方は必ずしも整備を否定するものではなく、各地域の利害・負担感の違いを反映しています。

整備新幹線としての条件と現実

整備新幹線として着工するためには、財源見通し、費用便益比(B/C)1以上、並行在来線の経営分離に対する同意、JR各社の同意など複数の条件が必要です。これらの条件が整っていない段階では、正式な着工決定はなされません。[参照]

今回の再検討は、これら条件を満たすための検証プロセスと位置付けられるため、白紙化という言い方は正確ではありません。むしろ、既存案の課題を解消し、どのルートが条件を満たせるのかを見極める段階にあります。ただし、現時点では2026年度予算での着工見込みが困難であるとの発言もあり、着工時期は先送りされています。[参照]

まとめ:検討の意味と進行中のプロセス

北陸新幹線・敦賀以西の計画が「白紙」と言われるのは、複数ルートを比較検討するプロセスが進んでいるためです。しかし、再検討は計画破棄ではなく、費用・便益や自治体合意、安全性を踏まえて最適なルートを選ぶための過程です。

したがって、確定した新幹線計画がすぐに無くなるというわけではなく、現状は着工に向けた条件整理と合意形成を進めている段階といえます。このプロセスを経て、将来的にどのルートが選ばれるか、そして自治体やJRとの合意がどのように整うかが今後のカギとなります。

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