日本に住む外国人について「ビザが切れたらすぐ不法滞在になるのか」「帰国するときの航空券は日本政府が負担するのか」と疑問に思うことがあります。ただし、この問題では日常的に使われる「ビザ」という言葉と、法律上の「在留資格」「在留期間」を分けて考えることが重要です。
原則として、外国人が許可された在留期間を超えて日本に在留し、適法に在留できる別の根拠もない場合は「不法残留(オーバーステイ)」となり得ます。一方、在留期限が過ぎたという一点だけを見て、必ず不法残留だと判断できるわけではありません。期限までに在留期間更新などを申請している場合には「特例期間」により適法に在留できるケースがあるためです。
また、ベトナム人を含む外国人が帰国する場合の航空券についても、日本政府が一律に支払う制度ではありません。通常の自主的な帰国、技能実習など制度に基づく帰国、退去強制による送還では費用負担の仕組みが異なります。
「ビザが切れる」と「在留期限が切れる」は厳密には同じではない
一般会話では「ビザが切れる」と表現されますが、日本国内で引き続き滞在できるかを考える際に重要なのは、在留資格と在留期間です。在留カードを持つ中長期在留者なら、カードに在留資格と在留期間満了日が記載されています。
在留期間を超えて引き続き日本で活動したい場合には、必要に応じて在留期間更新許可申請などを行います。出入国在留管理庁によれば、在留期間更新許可申請は原則として在留期間満了日以前に行います。6か月以上の在留期間がある場合は、通常、満了のおおむね3か月前から申請できます。[参照:出入国在留管理庁 在留期間更新許可申請]
したがって「カードに書かれた日付が過ぎた人を見かけた」という情報だけでは、その人が不法残留なのか判断できません。更新・変更申請中かどうかなど、個別の在留状況を確認する必要があります。
期限前に更新申請していれば「特例期間」がある
重要なのが在留申請における特例期間です。在留カードを所持する人が在留期間更新許可申請または在留資格変更許可申請を行い、在留期限までに処分が出ない場合には、一定期間、従前の在留資格で日本に在留できる仕組みがあります。
出入国在留管理庁によると、この場合は原則として、申請に対する処分が行われる時、または元の在留期間満了日から2か月が経過する時のいずれか早い時まで、従前の在留資格で在留し、その資格で認められた活動を続けることができます。[参照:出入国在留管理庁 特例期間とは?]
例えば在留期限が8月31日で、8月中に適法に更新申請を行い、9月になっても審査中というケースでは、単に在留カード表面の日付が8月31日だからといって直ちに不法残留になったとは限りません。
何も手続をせず在留期限を過ぎると不法残留になり得る
一方、在留期間の更新や資格変更など必要な手続を行わず、在留期間を過ぎても日本に残っている場合には、不法残留に該当する可能性があります。
出入国在留管理庁は、不法残留(オーバーステイ)している外国人について退去強制手続の対象になることを案内しています。また、一定の条件を満たして自ら出頭して帰国を希望する場合には、収容を伴わない簡易な「出国命令制度」の対象となる場合があります。[参照:出入国在留管理庁 出国命令制度について]
オーバーステイの状態になった場合、「航空券を買って帰ればそれで終わり」と自己判断するのではなく、地方出入国在留管理局などで必要な手続を確認することが重要です。出入国在留管理庁も、不法残留者が自ら地方出入国在留管理局へ出頭する「出頭申告」について案内しています。[参照:出入国在留管理庁 違反調査・出頭]
帰国する外国人の航空券を日本政府が一律に払うわけではない
外国人が母国へ帰る際の渡航費について、「外国人が帰国するなら日本が航空券代を払っている」と一括りにするのは正確ではありません。通常の帰国であれば、本人が自分で航空券を購入するケースがありますし、在留制度や雇用・実習制度などによって関係機関・企業側の費用負担が定められているケースもあります。
さらに、不法残留などによる退去強制の送還費用についても一種類ではありません。出入国在留管理庁は、送還方法を大きく「自費出国」「運送業者の負担による送還」「国費送還」の3形態に分けています。[参照:出入国在留管理庁 退去強制令書の執行・送還・自費出国]
つまり「退去強制になった外国人の航空券はすべて税金で購入する」という仕組みではありません。
退去強制でも自費で帰国できる人には自費出国が求められる
出入国在留管理庁は、自費出国が可能な被退去強制者については極力その努力を促す方針を明記しています。自費出国するには、有効な旅券に加え、帰国先まで搭乗可能な航空券、または航空券を購入できる資金などが必要です。
一方で、航空券や帰国費用を用意できないため送還が困難になっている人や、特に人道的配慮から早期の送還が必要な人などについては、国費送還が行われる場合があります。
国費送還という制度自体は存在しますが、それは「外国人が帰国するときは日本が無料で航空券を用意する」という意味ではありません。本人の状況や送還手続などに応じて扱いが異なります。
ベトナム人が帰国している理由を在留期限だけで判断しない
ベトナム人が帰国しているという話を聞いても、その理由を「ビザが切れたから」「不法滞在だから」と一律に判断することはできません。外国人が帰国する理由には、在留期間や契約期間の終了、転職、留学終了、技能実習終了、家庭事情、本人の希望などさまざまな事情があります。
特に日本には「技能実習」「特定技能」「留学」「技術・人文知識・国際業務」「家族滞在」など複数の在留資格があり、それぞれ活動内容や在留手続が異なります。同じベトナム国籍でも、日本に滞在している理由や在留資格は人によって違います。
そのため、特定の国籍の人が帰国しているという現象と、不法残留者の送還をそのまま結び付けないことが大切です。個々の帰国が自主帰国なのか、契約・制度上の帰国なのか、退去強制なのかによって意味がまったく異なります。
在留期限を過ぎてしまった場合は早めに入管へ相談する
実際に本人や家族の在留期限が過ぎていることに気付いた場合は、インターネット上の情報だけで「もう不法滞在だから帰るしかない」などと判断せず、地方出入国在留管理官署へ早急に相談することが重要です。
特に更新・変更申請をしている場合、特例期間に該当するかどうかを確認する必要があります。反対に、申請せず期限を過ぎてしまった場合も、放置すると問題が大きくなる可能性があります。
出入国在留管理庁では地方出入国在留管理官署のほか、外国人在留総合インフォメーションセンターも案内しています。個別ケースでは、在留カード、パスポート、申請状況などを確認したうえで相談するのが確実です。[参照:出入国在留管理庁]
まとめ:在留期限切れと帰国費用は状況を分けて考える
日本で許可された在留期間を超え、更新・変更申請による特例期間など適法に在留できる根拠もないまま滞在すれば、不法残留(オーバーステイ)に該当する可能性があります。ただし、在留カード上の期限が過ぎているだけで直ちに不法残留とは断定できず、期限前に更新・変更申請をしていれば特例期間が適用される場合があります。
またベトナム人を含む外国人が帰国する際、日本政府が航空券を一律に負担するわけではありません。通常の自主帰国、各種制度に基づく帰国、退去強制による送還では費用負担が異なります。退去強制の場合にも自費出国、運送業者負担、国費送還という複数の形態があります。
「外国人が帰国している=不法滞在だった」「送還される=航空券はすべて税金」という理解は正確ではありません。在留資格、更新申請の有無、帰国理由、送還手続などを分けて考え、個別の在留問題については出入国在留管理庁の最新情報を確認することが重要です。


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