高速道路は専用ライセンス制にすべき?危険運転・運転技能・高齢ドライバー対策からメリットと課題を考える

車、高速道路

高速道路では一般道より速度が高いため、わずかな判断ミスや不適切な車間距離、急な車線変更が重大事故につながる可能性があります。そのため「普通免許とは別に、高速道路を走るための資格や試験を設けたほうが安全なのではないか」という考え方には一定の合理性があります。

一方、高速道路の事故を減らす方法は専用ライセンスだけではありません。危険運転への取締り、運転技能の教育、高齢運転者対策、車両側の安全技術、道路構造など複数の対策を組み合わせて考える必要があります。

高速道路ライセンス制は安全性向上の選択肢にはなり得ますが、「資格を作れば危険なドライバーを排除できる」と単純にはいえません。導入効果と社会的な負担の両方を比較することが重要です。

現在の普通免許でも高速道路に関する教育は行われている

日本では、高速道路を走行するためだけの独立した運転免許は通常必要ありません。しかし普通自動車免許の教習には高速道路での運転に関する教習が含まれており、免許取得の過程で高速走行について学ぶ仕組みがあります。

高速道路では、合流、車間距離、進路変更、追越し、速度管理、故障時の対応など、一般道とは異なる知識と判断が求められます。警察庁の交通の方法に関する教則でも、高速道路へ入る前の点検や本線への進入、車間距離、追越しなどについて説明されています。[参照:警察庁 交通の方法に関する教則]

したがって現在の制度は「高速道路について何も確認せず免許を与えている」というものではありません。ただし免許取得後、何十年にもわたり高速道路をほとんど走らない人もいるため、取得時の教習だけで技能を継続的に担保できるのかという論点は残ります。

高速道路専用ライセンス制にはどんなメリットがある?

仮に普通免許とは別に高速道路用の資格を設けるなら、合流、車線変更、適切な車間距離、高速域からの制動、追越車線の使い方、事故・故障時の対応などを重点的に確認できます。

例えば「一定時間の講習+知識試験+実技確認」を修了した人だけ高速道路を利用できる制度なら、高速道路特有のルールを改めて学ぶ機会にはなります。長期間高速道路を運転していなかった人向けに再講習を用意する方法も考えられます。

さらに悪質な速度超過やあおり運転などに対して、高速道路を利用する資格だけを一定期間停止する制度を設計するという発想も可能です。一般道での日常生活上の移動を完全に奪わず、高速道路上の危険行為に対応するという考え方です。

ただしライセンス制だけでは危険運転を防げない

最大の問題は、試験に合格できることと、その後も安全運転を続けることは別だという点です。運転技術が十分な人でも、意図的な速度超過、極端に短い車間距離、強引な割込みなどを行えば危険になります。

いわゆる「あおり運転」については、道路交通法上の妨害運転に対する罰則が設けられています。警察庁も、車間距離を極端に詰める、急な進路変更や急ブレーキなど一定の違反行為による妨害運転について案内しています。[参照:警察庁 あおり運転に対する罰則]

このような意図的な危険行為については、新しい免許を増やすより、取締り、行政処分、悪質な運転者への再教育などを充実させるほうが直接的な対策になる可能性があります。

高齢ドライバー対策は年齢だけでなく運転能力を見る必要がある

高齢運転者については、現在でも一定年齢以上を対象とした更新制度があります。70歳以上では免許更新時に高齢者講習が必要となり、75歳以上では認知機能検査も行われます。また、75歳以上で一定の違反歴がある人には運転技能検査が必要となる仕組みがあります。[参照:警察庁 運転免許証の更新等]

ここで重要なのは、「高齢者だから危険」「若者なら安全」と一括りにしないことです。危険性は認知機能だけでなく、視力、判断速度、身体能力、運転経験、疲労、疾病、運転態度などにも左右されます。

高速道路の安全性を高める目的なら、年齢だけを基準に利用を禁止するより、実際の運転能力を確認する仕組みや、必要に応じた再教育を充実させるほうが公平性を確保しやすいでしょう。

高速道路ライセンス制には大きなデメリットもある

専用ライセンスを導入すると、新たな試験、講習、更新、行政システムが必要になります。利用者にも受講時間や料金などの負担が発生します。そのコストに見合うほど事故が減るのかを検証しなければなりません。

また高速道路はレジャーだけの施設ではありません。通勤、物流、営業、医療、介護、帰省など社会生活を支える重要な交通網です。資格取得のハードルを高くしすぎれば、地方居住者や仕事で自動車を利用する人への負担が大きくなる可能性があります。

さらに、高速道路を使えなくなった車が一般道へ流れれば、一般道の交通量が増える可能性もあります。高速道路だけの事故件数ではなく、道路交通全体として安全になる制度なのかを見る必要があります。

ライセンス制以外にも安全性を高める方法はある

高速道路事故を減らすという目的なら、専用免許を新設する以外にもさまざまな方法があります。例えば免許更新時の高速道路ルール再教育、危険運転を繰り返した人への実技講習、速度・車間距離違反への適切な取締りなどです。

車両技術も重要です。衝突被害軽減ブレーキをはじめ、車線逸脱を警告・抑制する機能や、前車との距離を保ちながら走行を支援するACCなど、安全運転を支援する技術は普及しています。ただし運転支援機能は万能ではなく、ドライバー自身が周囲を確認し安全運転することが前提です。

道路側では、逆走対策、分かりやすい標識、合流部の改善、事故多発地点への対策なども考えられます。「危険な人を高速道路へ入れない」という発想だけでなく、人・車・道路・取締りの各方面から事故を減らすことが現実的です。

もし導入するなら全面的な免許制より段階的な制度も考えられる

制度を検討する場合、すべての運転者へ新しい国家資格を義務付ける方法だけが選択肢ではありません。より負担の小さい仕組みから導入することもできます。

例えば初心運転者向けの高速道路追加講習、長期間運転していない人が任意で受けられる高速道路実技講習、重大な交通違反を繰り返した人への再教育などです。運転技能に不安を感じる人が教習所で高速道路や合流を練習できる環境を増やすことにも意味があります。

事故データを分析して、どのような運転者・行動・場所で重大事故が発生しているのかを特定し、その原因へ集中的に対策するほうが、全ドライバーへ一律に新しい資格を課すより効率的な場合もあります。

まとめ:高速道路ライセンス制には合理性があるが万能策ではない

高速道路専用ライセンスを設け、合流・車線変更・車間距離・緊急時対応などの技能を確認するという考え方には、安全教育を強化するという意味で一定のメリットがあります。特に免許取得後の運転能力を確認する仕組みについては議論する余地があります。

一方で、意図的な危険運転は運転技能試験だけでは防げず、高齢運転者についても年齢だけで能力を判断することは適切ではありません。専用ライセンスの導入には行政コストや利用者負担も伴います。

そのため高速道路の安全性向上を考えるなら、専用ライセンス制を一つの選択肢として検討しつつ、危険運転への取締り、違反者への再教育、免許更新制度、運転支援技術、道路設備などを組み合わせることが重要です。「誰を高速道路から排除するか」だけではなく、「重大事故につながる行動をどう減らすか」という視点で制度を考える必要があります。

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