新東名が全線開通しても東名上りの渋滞は残る?海老名南JCTから東京方面への延伸と大深度地下構想を解説

車、高速道路

新東名高速道路は東名高速道路と並ぶ日本の大動脈ですが、東京側の起点は海老名南JCTです。そのため新東名の神奈川・静岡県境付近が完成しても、東京方面へ向かう交通が最終的に既存の東名へ集まる構造は残ります。

一方で、「2027年度に未完成区間が開通する」という前提には注意が必要です。NEXCO中日本は2025年11月、新秦野IC~新御殿場ICについて、高松トンネルの難工事により2027年度の予定から少なくとも1年以上遅れる見込みと公表しています。2026年7月末時点でも同区間は建設中です。[参照:NEXCO中日本]

さらに、海老名南JCTから用賀まで新東名を延伸する事業は、現在の新東名の整備計画には含まれていません。大深度地下トンネルという発想には用地面のメリットがありますが、現在進められている東京外環との関係も含め、道路ネットワーク全体から考える必要があります。

現在の新東名は海老名南JCT~豊田東JCTが計画区間

まず重要なのは、新東名の東京側がどこまで計画されているのかです。神奈川県によると、新東名高速道路の区間は海老名南JCT~豊田東JCTで、延長253.2kmです。神奈川県内では海老名南JCTから県境まで約35.2kmとなっています。[参照:神奈川県 新東名高速道路]

海老名南JCT~新秦野ICまではすでに開通しており、残っているのが新秦野IC~新御殿場ICの約25kmです。この区間が完成すると、海老名南JCTから豊田東JCTまで新東名が一本につながることになります。

したがって「新東名を東京まで建設している途中」というわけではありません。現在事業化されている新東名そのものが海老名南JCTを東京側の端としているという点を押さえておく必要があります。

2027年度開通予定はすでに延期の見込み

新秦野IC~新御殿場ICは一時、2027年度の開通予定とされていました。しかし高松トンネルでは脆弱な地山や湧水などが確認され、工事が難航しています。

NEXCO中日本が2025年11月に公表した第7回連絡調整会議の結果では、高松トンネルは残り約700mだったものの、順調に月50m程度掘削できたとしても貫通まで少なくとも1年以上必要で、その後も覆工、舗装、設備工事が必要と説明されています。

このため新秦野IC~新御殿場ICは、2027年度から少なくとも1年以上遅延する見込みとなりました。2026年7月末時点で橋梁は完成延長ベース82%、トンネルは86%まで進んでいますが、新しい具体的な開通年度は完成の見通しが立った段階で公表するとされています。[参照:NEXCO中日本 新東名建設状況]

全線開通しても東名上りの渋滞が全部なくなるわけではない

新東名が海老名南JCT~豊田東JCTでつながれば、東名と新東名という二つのルートが形成され、静岡・神奈川方面の交通分散や事故・災害時の代替性向上が期待できます。しかし、東京へ向かう交通については別の問題があります。

新東名は海老名南JCTより東へ延びていないため、東京方面へ向かう車は圏央道など別方向へ転換しない限り、最終的には既存の東名側を利用することになります。そのため、新東名の全線開通だけで海老名JCT~横浜町田IC~東京IC方面の渋滞まで一気に解消するとは考えにくいのが実情です。

実際、NEXCO中日本は横浜町田IC~海老名JCTを1日平均約14万台が通行する国内屈指の重交通区間と説明しており、大和トンネル付近に加えて、上り線の綾瀬スマートIC付近でも付加車線を設置する渋滞対策を進めています。[参照:NEXCO中日本 東名渋滞対策]

「下りだけ改善、上りは変わらない」とも単純には言い切れない

ただし、新東名完成の効果を「下りだけ大きく、上りにはほぼ効果がない」と断定するのも単純化しすぎです。新東名と東名が完全なダブルネットワークになれば、長距離交通を二つの道路へ振り分けられ、事故や工事による通行障害時にも迂回しやすくなります。

また海老名周辺では圏央道も接続しているため、すべての新東名上り交通がそのまま東京ICへ向かうわけではありません。目的地によって圏央道方面などへ分散する交通もあります。

一方、東京都心・世田谷・渋谷方面を目的地とする交通については東名へ戻る構造が残ります。したがって「神奈川県西部では東名と新東名の分散効果が大きいが、東京に近づくほど既存東名のボトルネック対策が重要になる」と考えるほうが実態に近いでしょう。

外環道は「用賀ICまで延伸」ではなく東名JCTへ接続する計画

ここで混同しやすいのが東京外かく環状道路、いわゆる外環道です。現在事業中の外環道東京都区間は、関越道側の大泉JCTから世田谷区の東名JCTまでを結ぶ計画です。[参照:国土交通省 関東地方整備局]

東名JCTは東名高速と外環道を接続するためのジャンクションであり、「外環道が用賀ICまで伸びてくる」という表現とは少し異なります。東京IC・首都高速3号渋谷線の用賀出入口と東名JCTは同じ世田谷区の東名沿線に位置しますが、別の施設です。

外環の東名JCTが完成すれば、東名から東京都心へ向かう必要のない車が外環へ転換できるようになります。例えば東名から関越道・中央道方面へ移動する交通が都心側まで入り込まずに済むため、東京側の道路ネットワークを分散させる効果が期待されています。

海老名南JCTから用賀方面への新東名延伸計画は現在存在する?

2026年時点で公表されている新東名の事業区間は海老名南JCT~豊田東JCTです。つまり、海老名南JCTから東京IC・用賀方面まで約30~40kmの新しい高速道路を建設する具体的な新東名延伸事業が進行しているわけではありません。

道路を新たに造る場合は「渋滞しているから延ばす」というだけでは決まりません。将来交通量、既存道路との役割分担、費用便益、環境影響、都市計画、ルート、事業費などを比較し、国の道路ネットワークとして事業化する必要があります。

特に東京方面では、既存東名の付加車線整備、圏央道、外環道など複数のプロジェクトがあります。新東名をさらに東へ延伸する必要性を評価する場合も、これらが完成した状態で交通量がどのように変化するかを含めて検討することになります。

全線大深度地下トンネルなら用地買収を避けられる?

人口密集地を通る新しい高速道路を考えた場合、大深度地下を利用するという発想には合理的な面があります。大深度地下使用法では、原則として地表から40mより深い場所、または支持地盤上面から10mより深い場所のうち、より深い方が「大深度地下」とされています。道路事業も制度の対象です。[参照:国土交通省 大深度地下使用法]

大深度地下では地上の土地を一本の帯状にすべて買収しなくてもルートを設定できるため、住宅密集地を通る道路では大きなメリットがあります。実際、外環道の関越道~東名間でも大深度地下方式が採用されています。

ただし、地下にすれば土地問題が完全になくなり、簡単かつ短期間に建設できるわけではありません。国土交通省も、大深度地下は地上や浅い地下より立坑掘削やトンネル構築のコストが増加すると説明しています。[参照:国土交通省 大深度地下の特性]

35km級の地下高速道路には地上設備も必要になる

仮に海老名方面から東京方面まで数十kmの高速道路を地下化するとしても、トンネル本体だけ造れば完成するわけではありません。ジャンクションやインターチェンジ、換気施設、非常口、避難設備、電気・通信設備、立坑などが必要になります。

これらの施設には地上または浅い地下の用地が必要になるため、大深度地下方式でも用地取得や地域との調整を完全にはなくせません。国土交通省の大深度地下に関する基本方針でも、大深度部分と一体となる地上・浅深度地下部分について必要な用地や使用権を確保する必要があることが示されています。

さらに長大な道路トンネルでは火災時の避難・排煙、事故車両への対応、危険物積載車両への対応など、安全設備も重要になります。そのため「地上35kmを買収するより地下35kmを掘ったほうが早い」とは、ルートや地質、施設配置、事業費を比較しない限り判断できません。

東京側の渋滞対策は新東名延伸だけで考えないことが重要

東京方面の東名渋滞を改善する方法として、新東名を海老名南JCTからさらに東へ延伸するという構想は、交通ネットワークを考えるうえでは一つのアイデアです。しかし現実の道路政策では、それだけが選択肢ではありません。

既存東名の付加車線、外環道の東名JCT接続、圏央道による都心通過交通の分散など、それぞれの道路が異なる交通を受け持ちます。特に外環道は、東名から中央道・関越道などへ向かう交通を東京都心へ入れずに振り分ける役割が期待されています。

それでも外環完成後に東名東京方面の需要が容量を大幅に上回るのであれば、新たな道路容量をどのように確保するかという議論には意味があります。その際に大深度地下を含む新ルートが比較対象になる可能性はありますが、現時点では具体的な新東名延伸事業として決定されたものではありません。

まとめ

新東名の新秦野IC~新御殿場ICは、かつて2027年度開通予定とされていましたが、現在は少なくとも1年以上遅れる見込みです。そして完成後も新東名の東京側は海老名南JCTまでなので、東京都心へ向かう交通について既存東名を利用する基本構造は残ります。

その意味では「新東名が完成しても東京に近い東名上りの渋滞問題は別に残る」という見方には合理性があります。ただし新東名による東名との交通分散、圏央道への転換、既存東名の付加車線整備などもあるため、「上りにはほとんど効果がない」とまでは断定できません。

また外環道は用賀ICそのものまで延伸するのではなく、世田谷区の東名JCTで東名高速と接続する計画です。海老名南JCTから東京方面への新東名延伸は現在事業化されておらず、数十kmを大深度地下トンネルにする案も現時点では仮想的な構想です。大深度地下には用地取得を減らせる利点がある一方、建設費、地質、換気・避難設備、地上施設、環境、安全性などの課題があるため、既存東名・圏央道・外環道を含めたネットワーク全体で費用対効果を検討する必要があります。

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