温泉を趣味として深掘りするなら温泉地がおすすめ?スーパー銭湯との違いを泉質・地質・地理から解説

温泉

温泉を趣味として楽しんでいると、近所のスーパー銭湯を巡る段階から、山間部や海沿い、昔ながらの温泉街へ足を延ばしたくなることがあります。特に泉質の違いや地形・地質に興味を持ち始めると、温泉は単なる入浴施設ではなく「その土地の地下で何が起きているのかを体験する趣味」に変わってきます。

結論からいうと、泉質・地質・水循環・火山・地域史まで含めて温泉を研究するように楽しみたいなら、各地の温泉地を巡るほうが趣味として深掘りしやすいでしょう。一方、スーパー銭湯にも天然温泉を利用する施設はあり、「スーパー銭湯だから温泉として浅い」と一括りにするのは正確ではありません。

大切なのは施設のカテゴリーよりも、源泉がどこから来て、どの地層を通り、どのような成分を含み、浴槽までどのような状態で供給されているかを見ることです。ここに注目すると、身近な温泉と遠方の温泉地の両方を一つの趣味として楽しめるようになります。

温泉を深掘りするなら「泉質」だけでなく成因を見ると面白い

温泉趣味を一段深くするポイントは、「硫黄泉だった」「黒い湯だった」という感想から、その湯がなぜそのような特徴を持つのかへ興味を広げることです。

環境省によると、温泉の多くは降水を起源としますが、海水や化石水などを起源とするものもあります。また温泉の湧出機構は大きく火山性温泉と非火山性温泉に分けられ、非火山性温泉には深層地下水型や化石水型などがあります。[参照]

つまり一杯の温泉水から、雨や雪が地下へ浸透したのか、火山の熱が関係しているのか、地下深部の地温で温められたのか、古い海水が地層に閉じ込められていたのか、といった「土地の履歴」を読み解けるわけです。

地理・地質が好きな人と温泉巡りは非常に相性がいい

地理学や地質学に興味がある人にとって、温泉巡りはフィールドワークに近い楽しみ方ができます。環境省の温泉資源保護に関する資料でも、温泉には温度・成分・水という要素があり、それらの「器」や流路として地層、岩石、断層、割れ目などが温泉の湧出に関係すると説明されています。[参照]

たとえば火山地域へ行ったら、周囲の火山地形と泉温、pH、硫黄成分などを見比べる。海岸近くの高塩分温泉なら、現在の海水との関係だけでなく、地下に閉じ込められた古い海水である「化石水」の可能性も調べる。このように入浴前後の調査まで趣味に含めると、同じ温泉へ再訪しても新しい発見があります。

産業技術総合研究所の地質調査総合センターでは、実際に各地域の温泉水について、水温やpHだけでなくナトリウム、カルシウム、塩化物、硫酸イオン、炭酸成分、同位体比などを調査しています。温泉は地質学・地下水学の立派な研究対象でもあるのです。[参照]

泉質だけでも比較項目はかなり多い

環境省の鉱泉分析法指針では、療養泉の掲示用泉質は大きく10種類に整理されています。単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、酸性泉、含よう素泉、硫黄泉、放射能泉です。[参照]

しかし趣味として見るなら、泉質名だけで終わらせる必要はありません。同じ塩化物泉でも成分濃度や副成分、pH、泉温、色、香り、析出物などは異なります。同じ地域でも源泉が違えば印象が大きく変わる場合があります。

観察項目 楽しみ方
泉質名 塩化物泉・硫黄泉・放射能泉などを比較
pH 酸性・中性・アルカリ性の違いを見る
泉温 源泉温度と浴槽温度を比較
溶存物質量 成分の濃さを比較
色・香り 黒湯、白濁、鉄色、硫黄臭などを記録
湧出機構 火山性・深層地下水型・化石水型などを調べる
湯使い 源泉かけ流し、循環、加水、加温などを確認
周辺地質 火山、断層、堆積層、海岸地形などと関連付ける

このように記録していくと、「○○温泉へ行った」というスタンプラリー的な趣味から、「なぜこの場所にこの湯が出るのか」を比較する趣味へ発展します。

個性的な温泉地は記憶に残りやすい理由がある

山奥の硫黄臭が強い白濁湯、海岸近くの濃厚な塩化物泉、鉄分によって茶褐色になった湯、黒褐色のモール系の湯などは、視覚・嗅覚・触覚まで含めて体験が異なるため、何年経っても記憶に残りやすいものです。

さらに「その場所でなければ体験しにくい」という土地との結び付きがあります。たとえば環境省が紹介する鳴子温泉郷では、掲示用泉質10種類のうち7種類が存在するとされており、一つの温泉地域の中でも泉質の多様性を比較できます。[参照]

産総研地質調査総合センターが紹介する大分県の赤川温泉では、二酸化炭素と硫黄を含む冷鉱泉と周辺の火山性変質帯との関係が示されています。このような背景まで調べると、「白い温泉だった」という記憶に地質学的な意味が加わります。[参照]

ただしスーパー銭湯でも天然温泉なら十分研究対象になる

一方、「スーパー銭湯=人工的で温泉趣味として価値が低い」と考えてしまうと、面白い温泉を見逃す可能性があります。

温泉法上の温泉かどうかは、施設が山奥にあるか、都市部の大型入浴施設かでは決まりません。環境省によると、地中から湧出する温水・鉱水などが25℃以上、または定められた物質を一定量以上含むなどの条件を満たせば温泉に該当します。[参照]

都市部でも地下深くまで掘削すると、その地域特有の地層に由来する天然温泉が得られることがあります。そのため、スーパー銭湯であっても温泉分析書を読んでみると、意外に特徴的な成分や地質との関係が見つかる場合があります。

スーパー銭湯と温泉地は「楽しみ方の軸」が少し違う

スーパー銭湯は、温泉だけではなく炭酸泉、ジェットバス、サウナ、水風呂、岩盤浴、食事処、休憩スペースなどをまとめて楽しめる施設が多く、総合的な入浴レジャーとして完成度が高いのが魅力です。

一方、昔ながらの温泉地では浴槽が一つしかない共同浴場でも、その源泉そのものが強烈な個性を持っていることがあります。設備の種類ではなく、湯そのものと土地を目的に出かける楽しみ方です。

楽しみの軸 スーパー銭湯 温泉地・秘湯
気軽さ △~○
浴槽・設備の種類 施設による
サウナ・食事・休憩 充実しやすい 施設による
源泉ごとの比較
地質・地形との関連
地域文化・歴史 △~○
アクセス 比較的良い 遠い場合も多い

どちらが上というより、スーパー銭湯は「入浴施設を楽しむ」、温泉地巡りは「温泉という自然現象と土地を楽しむ」方向へ発展させやすいと考えると違いが分かりやすくなります。

温泉趣味を深掘りするなら「温泉分析書」を読む

温泉地へ行ったら、浴室入口などに掲示されている温泉分析書を確認する習慣を付けると、一気に面白くなります。泉質名だけでなく、源泉温度、pH、主要イオン、溶存物質量などを見てみましょう。

たとえば「海に近いから塩辛い温泉だろう」と予想してから分析書を見る。「火山の近くだから酸性泉かもしれない」と考えて実際のpHを確認する。この地形・地質から仮説を立て、現地の湯と分析値で答え合わせする方法は、地理好きには特におすすめです。

予想が外れても、それが面白いところです。「なぜ火山から離れているのに高温なのか」「なぜ海から遠いのに塩化物濃度が高いのか」と疑問が生まれれば、地質図や自治体・研究機関の資料を調べる次の楽しみにつながります。

記録を残すと温泉巡りが長く続く趣味になる

訪問した温泉について、場所と感想だけではなく、泉質、pH、源泉温度、湯の色、香り、浴感、湯使い、周囲の地形などを記録すると、自分だけの温泉データベースができます。

たとえば「海岸・平野・盆地・火山山麓・山間部」のように地形別で分類したり、「硫黄泉」「含よう素泉」「放射能泉」「高濃度塩化物泉」のように泉質別で巡ったりする方法があります。県境ではなく地質帯や火山帯を基準に旅程を作るのも面白いでしょう。

さらに産総研の地質図や温泉水の化学分析資料、環境省の温泉資料などを組み合わせれば、旅行と地理・地質学習を一つの趣味として続けられます。単に入浴施設の数をこなすより、一つの温泉を調べる時間が長くなり、再訪する理由も生まれます。

まとめ:泉質と土地の成り立ちに興味があるなら温泉地巡りはかなり深掘りできる

温泉を「たくさんのお風呂やサウナを楽しむ趣味」と考えるなら、身近なスーパー銭湯は非常に優れた選択肢です。一方、泉質の違い、地形、地質、地下水、火山活動、地域の歴史まで知りたいなら、山間部・海沿い・温泉街など各地の天然温泉へ足を延ばすことで趣味の幅は大きく広がります。

環境省の資料が示すように、温泉には火山性だけでなく、深層地下水型や化石水型など異なる成因があります。温泉を巡ることは、日本各地の地下に存在する水循環や地質環境の違いを実際に体験して比較することでもあります。[参照]

ただし、スーパー銭湯と温泉地を完全に分ける必要はありません。都市部の天然温泉も含め、温泉分析書を読み、源泉の深さや泉質、pH、地質を調べれば十分に研究対象になります。

温泉趣味を長く楽しむなら、「有名な温泉を制覇する」だけではなく、なぜここから、この温度・色・香り・成分の湯が出るのかという問いを持って巡るのがおすすめです。そうすると一回の入浴が一つのフィールドワークになり、近所の天然温泉から遠方の秘湯まで、それぞれ違った面白さを発見できるでしょう。

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