近年、駅の改札ではクレジットカードによるタッチ決済が可能になり、利便性が高まっています。一方で、高速道路ではいまだにETC専用カードが主流で、クレジットカードだけでは通過できません。なぜこのような違いがあるのでしょうか?この記事ではその理由を技術面と制度面からわかりやすく解説します。
ETCとは何か?
ETC(Electronic Toll Collection)は、自動料金収受システムのことで、車載器と専用カードを用いて通行料金を自動で精算する仕組みです。料金所での停車を不要にし、交通の流れをスムーズにすることが目的です。
ETCカードはクレジットカード会社が発行していることも多いですが、ETCのシステム自体は独立した技術であり、通行車両の検知・課金をリアルタイムで処理できるようになっています。
駅改札のタッチ決済との違い
近年、JR東日本などではVisaやMastercardのタッチ決済を使って直接改札を通過できるサービスが導入されています。これはNFC(近距離無線通信)を用いたもので、利用者のカード情報を読み取ってクラウド上で決済が処理されます。
一方、ETCはクルマの高速移動に対応するために、通信方式がDSRC(Dedicated Short-Range Communications)という専用の無線通信を使っており、より高速かつ確実なやり取りが求められます。
なぜクレジットカードでは高速道路を通れないのか?
ETCゲートは時速20~30kmで通過するため、0.1秒単位で通信と認証が完了する必要があります。クレジットカードのタッチ決済では、通信に1秒程度かかることがあるため、高速移動する車両には不向きです。
さらに、ETCでは通行履歴や利用料金の算出などを即座に行う必要があり、単なる支払い処理だけでなく、走行ルートや割引適用といった複雑な処理が含まれています。
今後の展望と統合の可能性
将来的には、ETC2.0やMaaS(Mobility as a Service)の進展により、より柔軟な決済手段の導入も視野に入っています。実際、一部の高速道路ではQRコード決済やスマホアプリによる通行も試験導入されています。
ただし、現在のETCシステムの安定性と信頼性は非常に高く、全国で数千万人が利用しているため、全面的なシステム変更には慎重な対応が求められています。
ETCカードの利点と使い分け
ETCカードは高速道路利用者向けに特化しており、割引制度(平日朝夕割・休日割引など)やマイレージサービスなど、利用者にとって多くのメリットがあります。
一方で、都市部の移動や電車利用にはクレジットカードや交通系ICカードの方が適している場面も多く、使い分けることが合理的です。
まとめ
駅の改札と高速道路の料金所では、技術要件や利用シーンが大きく異なるため、同じクレジットカードのタッチ決済を導入するのは難しいのが現状です。ETCは、高速道路という特殊な環境に適応した仕組みであり、今後も進化を続けながら役割を果たしていくでしょう。
高速での正確な通信と、リアルタイム課金処理が、ETC専用システムを必要としている最大の理由です。


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