霧の中を運転していると視界が大きく制限され、不安や混乱を感じることがあります。その際、ハイビームの使用に関して「むしろ見えにくくなるのでは?」という疑問を抱く方も多いでしょう。この記事では、霧の中での前照灯使用に関するルールと、その根拠を丁寧に解説します。
霧の中ではなぜ「前照灯の点灯」が義務なのか
道路交通法では、視界が50メートル(高速道路では200メートル)以下になるような気象条件、つまり濃霧や大雨、大雪などでは前照灯(ヘッドライト)の点灯が義務とされています。これは、自車の存在を他車に知らせ、被視認性を高めるためです。
特に霧の中では、無灯火の車は周囲から見えづらく、事故のリスクが高まります。ロービームでも前方を明るく照らし、同時にテールランプや車幅灯も点灯するため、安全性が大きく向上します。
ハイビームを使用しない理由
霧の中でハイビームを使用すると、光が水滴に反射し、自車に戻ってくる「散乱現象」が起こります。これにより、前方が白くぼやけてしまい、かえって視界が悪化するのです。
このため、霧の中ではハイビームを避けてロービームを使用するのが鉄則です。正しい点灯が安全運転につながります。
前照灯とフォグランプの使い分け
視界が悪い状況では、フォグランプ(霧灯)の活用も有効です。フォグランプは、広がりのある低い位置に照射されるため、霧の反射の影響を受けにくく、路面をより鮮明に照らしてくれます。
なお、前照灯(ヘッドライト)とフォグランプは併用可能ですが、フォグランプ単体では法律上の前照灯義務を満たせないため、必ずヘッドライトのロービームとセットで使うようにしましょう。
実際の運転シーンでの対応例
例えば、高速道路で視界が100メートル未満になった場面を想定してみましょう。ヘッドライトを点灯し、フォグランプを併用。走行速度を控えめにし、他車との車間距離を十分に確保する。こうした対応が安全運転につながります。
逆に、無灯火で走行した場合、対向車や後続車から発見されにくく、追突や衝突の危険性が高まります。
前照灯の点灯が義務となる法的根拠
道路交通法施行令第18条の2では、「視界不良の場合には車両の前照灯を点灯しなければならない」と明記されています。この規定は、自車の存在を他者に知らせる目的に加え、自らも安全に走行できる環境を確保するためのものです。
また、高速道路においては視界が200メートル未満の場合でも同様に点灯が求められています。これは高速道路の高速度・高リスク性を踏まえた安全対策です。
まとめ:前照灯は「自分が見る」ためだけではない
霧の中でハイビームを使わない理由と、前照灯の点灯が義務になる理由は矛盾しているようで実は別の目的を果たしています。ハイビームは視界の確保には不向きでも、ロービームを使った前照灯の点灯は自車の存在を知らせるという観点で極めて重要です。
霧や視界不良時は、必ず前照灯(ロービーム)を点灯し、必要に応じてフォグランプを併用して、安全なドライブを心がけましょう。


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