「ハイヤー」と聞くと、現代では法人送迎や貸切車両を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、特に高齢者の方の中には、通常のタクシーのことを「ハイヤー」と呼ぶ方もいます。その背景には、日本の交通事情や言葉の変遷が深く関係しています。
そもそも「ハイヤー」とは何か?
ハイヤーとは、英語の「hire(雇う)」が語源で、運転手付きの車を時間単位で貸し切るサービスを意味します。現在の日本では、事前予約制で乗車場所も指定できる、主に法人向けの高級サービスとして位置付けられています。
一方で、昭和初期には流しのタクシーという概念がほとんどなく、一般人が車を呼ぶには「ハイヤー」として予約するのが主流でした。
戦前~高度経済成長期の交通事情
1930年代〜1960年代にかけて、個人で車を所有することは一般的ではなく、移動手段として車を「借りる」文化が根付いていました。この時代、タクシー会社の多くは「ハイヤー会社」と名乗っていたほどです。
そのため、高齢者世代にとっては「車を呼ぶ=ハイヤーを使う」という認識が強く残っているのです。
言葉の定着とメディアの影響
かつての新聞・ラジオ・映画などでも「ハイヤーで迎えに行こう」などのセリフが日常的に使われており、この言葉は一般社会にも定着していました。
1950年代の日本映画やドラマでは、運転手付きの車を指す言葉として「ハイヤー」が頻繁に登場します。そのイメージが、記憶として高齢者の中に残り続けていると考えられます。
現代との違いとすれ違い
現代では、タクシーとハイヤーは明確に区別されています。ハイヤーは流し営業をせず、完全予約制であり、主にビジネスや冠婚葬祭などに使われます。
しかし、高齢者は今でもタクシーを「ハイヤー」と呼ぶことがあり、若い世代との言葉の認識にギャップが生じることもあります。
実例:祖父母との会話から
「駅からハイヤーに乗ったんだよ」と語る祖父に、「え?高級車?」と驚いた経験がある方も多いのではないでしょうか。これは、祖父にとって「ハイヤー=車を呼ぶ手段」として当たり前の表現だったためです。
また、ある地方都市では、いまだに「ハイヤー株式会社」として営業しているタクシー会社も存在し、地域によっては言葉が生き続けています。
まとめ
高齢者がタクシーを「ハイヤー」と呼ぶ背景には、昭和の交通文化やメディアの影響、言葉の歴史が深く関係しています。
今と昔で意味や使い方が変わっていても、それぞれの時代に根ざした表現を理解することで、世代間の会話もより円滑に進むでしょう。


コメント