訪日外国人観光客が年々増える中で、東京の複雑な交通網に慣れていて英語も堪能な人材が増えています。しかし、意外にもそうしたスキルを持つ人でも、現場での道案内において“あまり頼りにならない”と感じられてしまう場面もあるようです。この記事ではその理由と、外国人観光客への案内に本当に求められる要素を掘り下げます。
知識や英語力だけでは足りない理由
東京の鉄道システムに精通し、英語を自在に使いこなせる人でも、案内がうまく伝わらないことがあります。その一因は“情報過多”です。交通オタク気質の人が持つ膨大な知識は、聞かれてもいない細かい情報まで話してしまうことがあり、受け手にはかえって混乱を与えてしまうことがあります。
さらに、英語が堪能でも“相手に合わせた簡潔な話し方”ができなければ、外国人観光客には伝わりにくいことがあります。特に非ネイティブの訪問者に対しては、ゆっくり、簡潔、明確な表現が求められます。
親切な道案内に必要なのは「共感力」
最も大切なのは、聞き手の立場に立つ“共感力”です。訪日観光客は交通の知識がほとんどない場合が多く、不安を抱えています。そのため「この人は親切そう」「質問しやすい雰囲気だ」と感じてもらえるかが重要になります。
たとえば、駅構内で迷っている様子の外国人に対して「Can I help you?」と笑顔で声をかけるだけで、安心感を与えることができます。そこから「Which station are you trying to get to?」「Let me show you on this map」など、丁寧に誘導することができれば、知識や英語力以上に役立つ場面となるでしょう。
実例:伝えすぎて混乱させてしまうパターン
あるケースでは、羽田空港から渋谷に行きたいという質問に対して、「京急で品川、そこから山手線の内回りで…ただし時間帯によっては快速が…」と細かく説明してしまい、相手がかえって困惑してしまったという例があります。
このようなときは、「Take the Keikyu Line to Shinagawa, then take the JR Yamanote Line to Shibuya. It takes about 30 minutes.」といったシンプルな説明の方が効果的です。必要ならメモを書いたり、スマホで路線図を一緒に見ることで、さらに理解しやすくなります。
観光案内における“やさしい英語”の重要性
道案内ではTOEICの点数や専門用語の知識よりも、「やさしい英語(Simple English)」が重要です。たとえば“transfer”より“change trains”を使う、“destination”より“where you want to go”を使うなど、簡単な単語の方が伝わりやすいです。
また、身振り手振りや図示など、非言語的なサポートも非常に有効です。英語に自信がなくても、笑顔で「Follow me」と言って案内するだけでも大変喜ばれるケースが多く見られます。
オタク気質を活かすコツ
交通に詳しい人がその知識を役立てたいなら、“要点をまとめるスキル”を意識することが重要です。情報の取捨選択ができれば、むしろ非常に信頼される存在になります。
例えば「A駅からB駅まではこの1本で行けますよ。切符はこの自販機で買えます。値段は〇〇円です。」というように、実践的かつコンパクトな説明を心がけましょう。
まとめ
東京の交通に詳しく英語が得意でも、訪日外国人観光客に役立つとは限りません。本当に求められるのは、わかりやすく、簡潔で、親切なコミュニケーションです。知識を押しつけるのではなく、相手の立場で情報を“翻訳”する力こそが、優れた道案内の鍵となります。


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