水族館や動物園では、海・川・熱帯雨林・サバンナなど、生きものが本来暮らす地域や生息環境を再現し、その環境ごとに展示する方法がよく使われます。一方、大阪・EXPOCITYにあるNIFREL(ニフレル)を訪れると、一般的な水族館や動物園とはかなり違う雰囲気を感じます。
その理由は、ニフレルが生息地や分類を中心に展示を組み立てるのではなく、生きものの「色」「毒」「泳ぎ方」「隠れ方」「動き」といった個性や多様性をテーマに展示空間を構成しているためです。
ニフレル自身も施設コンセプトを「感性にふれる」とし、水族館・動物園・美術館などのジャンルにとらわれず、生きものの魅力を直感的に感じられる展示を重視しています。[参照:ニフレル公式・コンセプトと各ゾーン]
- 一般的な水族館・動物園は「生息環境」を軸に展示することが多い
- ニフレルは「どこに住むか」より「どんな個性があるか」で分ける
- 「いろにふれる」は生息地ではなく色彩そのものがテーマ
- 「どくにふれる」では毒を危険性ではなく個性として見る
- 水族館・動物園・美術館の境界をあえて曖昧にしている
- 照明も「自然環境の完全再現」より生きものの魅力を見せることを重視
- 水槽の形や配置にもギャラリー的な特徴がある
- 解説文も「知識を先に教える」より「まず感じてもらう」方向
- 「感性にふれる」という名前が展示方法そのものを表している
- 分類学より「共通する特徴」で異なる生きものをつなげる
- 「うごきにふれる」では動物との距離感も独特
- 「WONDER MOMENTS」は生きものがいない展示なのにニフレルらしい
- ニフレルは「生きているミュージアム」と自称している
- 比較すると違いが分かりやすい
- ニフレルの展示でも動物福祉や飼育環境は必要
- 子どもと行くと「なぜ?」が生まれやすい展示
- まとめ|ニフレルの違いは「生息地」ではなく「個性」を軸に展示していること
一般的な水族館・動物園は「生息環境」を軸に展示することが多い
一般的な水族館では、「日本の川」「サンゴ礁の海」「深海」「南極・亜南極」など、生きものが暮らす自然環境を再現する形で展示が構成されることがあります。
動物園でも、「アフリカのサバンナ」「アジアの熱帯林」「オーストラリア」など、地域や生態系をテーマに複数種を配置する展示が珍しくありません。これは来館者が生きものだけでなく、その動物が自然界のどのような環境に暮らしているのかまで理解しやすくする方法です。
例えばキリン、シマウマ、ダチョウなどを同じエリアで見ることができれば、「アフリカの草原」という生態系全体をイメージしやすくなります。水族館でも、サンゴと熱帯魚を同じ水槽に展示することで、その地域の海の様子をまとめて伝えられます。
ニフレルは「どこに住むか」より「どんな個性があるか」で分ける
ニフレルの大きな特徴は、展示ゾーンの分け方です。公式サイトでは「多様性」をテーマに展示エリアを構成していると説明しています。
例えば「いろにふれる」では色彩の多様性、「かくれるにふれる」では擬態など隠れ方の多様性、「うごきにふれる」では行動の多様性といった具合です。[参照:ニフレル公式・展示ゾーン]
つまり、同じ海域に住む魚だから一緒に展示するのではなく、「色が面白い」「泳ぎ方が特徴的」「毒という能力を持っている」など、生きものが持つ個性を共通点として展示するのがニフレルらしい考え方です。
「いろにふれる」は生息地ではなく色彩そのものがテーマ
「いろにふれる」の展示では、赤、青、黄色など色鮮やかな生きものが、それぞれの色彩に注目できるように配置されています。
ニフレル公式では、このゾーンについて「色彩の多様性」をテーマにしていると説明しています。自然界でその色がどのような役割を持つのかを考えながら、生きものの美しさそのものを楽しめる構成です。[参照:ニフレル公式・いろにふれる]
一般的な水族館なら同じ魚が「インド洋の魚」「サンゴ礁の魚」といった地域分類で展示される可能性があります。ニフレルでは、そこから一歩離れて「この生きものはなぜこんな色なのだろう」という感覚から観察を始められるわけです。
「どくにふれる」では毒を危険性ではなく個性として見る
現在のニフレルには「どくにふれる」という展示ゾーンもあります。ここでは毒を単に「危険なもの」として紹介するのではなく、生きものが自然界で生き抜くために獲得した能力の一つとして表現しています。
毒は獲物を捕らえるために使われる場合もあれば、外敵から身を守るために使われる場合もあります。つまり同じ「毒を持つ」という特徴でも、生きものによって役割は異なります。
ニフレルではこうした違いを「毒の多様性」として紹介し、空間デザインにも毒を持つ生きものから着想を得た色彩などを取り入れています。[参照:ニフレル公式・どくにふれる]
水族館・動物園・美術館の境界をあえて曖昧にしている
ニフレルを歩いていると、「水族館を見ている」というより、現代美術館やデザインミュージアムを歩いているような感覚になることがあります。
これは偶然ではありません。ニフレルでは、生きものを展示する水槽だけでなく、照明、空間の形、映像、音楽、壁面なども一体となって展示を構成しています。
公式サイトでも、光、音、グラフィック、空間などを「感性にふれるためのデザイン」として位置づけています。つまり、生きものだけを見るのではなく、生きものをどう感じてもらうかまで含めて空間全体をデザインしているのです。[参照:ニフレル公式・感性にふれるためのデザイン]
照明も「自然環境の完全再現」より生きものの魅力を見せることを重視
一般的な生態展示では、実際の生息地に近い岩、植物、水流、照明などを再現する方法があります。一方、ニフレルでは生きものの色や形を印象的に見せるための照明設計にも強いこだわりがあります。
公式サイトによると、水槽内の照明について、生きものの色が美しく見え、形もはっきり分かる光を目指して実験を重ねて設計したとされています。[参照:ニフレル公式・LIGHT 光]
そのため、展示空間が自然界そのものの再現というより、ギャラリーに作品を展示するように一匹一匹の特徴へ視線を向けやすい構成になっています。
水槽の形や配置にもギャラリー的な特徴がある
一般的な大型水族館では、巨大水槽やトンネル水槽など、一つの水槽の中に多くの生きものを展示する方法があります。
ニフレルでは比較的小型の水槽を独立して配置し、一つ一つの水槽をさまざまな方向から観察できる展示も多く見られます。これにより、来館者は「大きな海の景色を見る」というより、「一匹の生きものをじっくり観察する」感覚になります。
例えば魚の口の形、泳ぐときのヒレの動き、目の位置、体表の模様など、通常なら見過ごしがちな特徴へ自然と目が向きやすくなります。
解説文も「知識を先に教える」より「まず感じてもらう」方向
一般的な動物園や水族館では、水槽や展示の横に「和名」「学名」「分布」「生息環境」「食性」などの詳しい解説が表示されることがあります。
ニフレルにも生きものに関する情報はありますが、展示そのものでは最初から大量の情報を与えるより、生きものを見て「きれい」「不思議」「変わった動きだ」と感じることを大切にしています。
ニフレルの館長メッセージでは、自然や生きものとじっくり向き合い、美しさや不思議さに驚くことで、「もっと知りたい」という探求心や想像力につなげたいという考えが示されています。[参照:ニフレル公式・館長からのメッセージ]
「感性にふれる」という名前が展示方法そのものを表している
NIFRELという名称は、「~にふれる」という言葉から生まれています。施設のコンセプトも「感性にふれる」です。
つまり「魚類について勉強する」「動物の分類を覚える」ということだけが目的ではなく、見た人が自分自身で何かを感じ、そこから興味を持つことを重視しています。
同じ魚を見ても、「きれいな色だ」と感じる人もいれば、「どうしてこんな形なのだろう」と疑問を持つ人もいます。その反応の違いも含めて展示体験として考えられている点が、一般的な水族館とは少し異なるところです。
分類学より「共通する特徴」で異なる生きものをつなげる
一般的な展示では、魚類、爬虫類、鳥類、哺乳類のように生物学的分類で分けることもあります。しかしニフレルでは、分類上はまったく違う生きものでも同じテーマの中で扱うことがあります。
例えば「隠れる」という行動をテーマにすれば、魚と昆虫と爬虫類が、それぞれ全く異なる方法で姿を隠すことを比較できます。
この方法では、「種類は違うのに似た生き方をしている」という発見が生まれます。単純に種名を覚えるより、生きものの進化や適応について直感的に考えるきっかけになります。
「うごきにふれる」では動物との距離感も独特
ニフレルの中でも特に印象的なのが「うごきにふれる」です。一般的な動物園では、人と動物の間に柵やガラスなどが明確に存在する展示が中心です。
一方、ニフレルでは動物の行動をより近い距離で感じられる展示空間が設けられています。動物が歩く、休む、飛ぶといった行動そのものを観察することがテーマになっています。
このような展示では、「檻の中の動物を見る」というより、人間も同じ空間の一部として生きものの動きを感じるような体験になります。ただし動物の安全や健康管理のため、触れてよいという意味ではなく、施設のルールに従うことが前提です。
「WONDER MOMENTS」は生きものがいない展示なのにニフレルらしい
ニフレルには、生きものそのものを展示する水槽だけでなく、自然現象などをモチーフにした空間演出もあります。
こうした展示が存在すること自体が、「水族館なら魚を見る場所」「動物園なら動物を見る場所」という従来の施設分類から少し離れていることを示しています。
生きものを直接展示していなくても、光や映像などを使って自然の不思議さを感じてもらうことが「感性にふれる」という施設コンセプトにつながっています。
ニフレルは「生きているミュージアム」と自称している
ニフレルは公式に自らを「生きているミュージアム」と表現しています。単純に「水族館」または「動物園」と名乗らないことにも、その展示思想が表れています。
館内には魚類だけでなく、鳥類や哺乳類などさまざまな生きものがいます。それらを分類別・地域別に並べるだけではなく、美術館のような空間デザインや展示テーマを組み合わせています。
そのため、ニフレルは「水族館+動物園+美術館」を単純に足した施設というより、それらの展示手法を横断して作られたミュージアムと考える方が特徴を理解しやすいでしょう。
比較すると違いが分かりやすい
一般的な水族館・動物園とニフレルの違いを大まかに整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 一般的な水族館・動物園 | ニフレル |
|---|---|---|
| 展示の軸 | 生息地・地域・分類・生態系 | 色・毒・泳ぎ・動きなど個性や多様性 |
| 空間づくり | 自然環境の再現を重視する例が多い | 美術館・ギャラリーのような演出も重視 |
| 照明 | 生息環境の再現などを考慮 | 色や形を印象的に見せる工夫 |
| 観察方法 | 生態系全体を見る展示も多い | 個体の特徴へ目を向けやすい |
| 学び方 | 解説から知識を得る | まず感じ、疑問を持つことを重視 |
| 施設の自己定義 | 水族館・動物園 | 生きているミュージアム |
もちろん一般的な水族館や動物園にも芸術的な展示や行動をテーマにした展示はありますし、ニフレルにも生息環境を考慮した飼育設備があります。違いは完全な二分ではなく、どの要素を前面に出しているかにあります。
ニフレルの展示でも動物福祉や飼育環境は必要
芸術的な展示が目立つニフレルですが、生きものを飼育する以上、単に見栄えだけで水槽や展示環境を決めることはできません。
水温、水質、照明、隠れ場所、運動量、個体間の関係など、それぞれの生きものに適した環境管理が必要です。来館者から見える展示デザインと、生きもの側の飼育環境は両立させなければなりません。
つまり「自然環境を再現していないように見える=生態を無視している」という意味ではありません。来館者へ見せる展示の切り口が一般的な施設とは異なる、と考える方が正確です。
子どもと行くと「なぜ?」が生まれやすい展示
ニフレルの展示方法は、子どもと一緒に見ると特徴が分かりやすくなります。最初から生きものの名前を教えなくても、「どうしてこの魚は赤いの?」「なんで隠れているの?」と疑問が生まれやすいからです。
例えば「どくにふれる」を見て、「毒=悪いもの」と考えていた子どもが、「身を守るために必要なんだ」と気付くことがあります。
こうした発見を入り口にして、帰宅後に図鑑やインターネットで詳しく調べることもできます。ニフレルが重視する「感性から探求心へ」という展示思想が分かりやすく表れる部分です。
まとめ|ニフレルの違いは「生息地」ではなく「個性」を軸に展示していること
一般的な水族館や動物園では、生息地域、生態系、分類などを基準に展示を構成することが多く、その動物が自然界でどのように暮らしているかを理解しやすい展示方法が採用されています。
一方、ニフレルは「感性にふれる」をコンセプトに、色彩、毒、泳ぎ方、隠れ方、動きなど、生きもの一つ一つが持つ「個性」と「多様性」を切り口として展示しています。
さらに照明、音楽、映像、空間デザインまで一体化させ、美術館やギャラリーを見るような感覚で生きものを観察できるようにしています。そのため、普通の水族館や動物園へ行き慣れている人ほど「何か雰囲気が違う」と感じやすいわけです。
一般的な水族館・動物園が「この生きものはどこで、どう暮らしているのか」を伝える展示だとすれば、ニフレルは「この生きもののどこが面白く、どんな個性を持っているのか」に気付かせる展示と表現すると違いが分かりやすいでしょう。どちらが優れているということではなく、生きものを見るための入口が異なるのです。

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