バスに乗っていると、観光バスや高速バスにはシートベルトが付いているのに、街中を走る路線バスではシートベルトを見かけないことがあります。乗用車では後部座席を含めてシートベルト着用が基本なのに、なぜ多くの路線バスでは事情が違うのでしょうか。
結論からいうと、単純に「シートベルトを付ける予算がないから」ではありません。路線バスは立って乗る乗客を想定し、短距離で乗り降りを繰り返す公共交通として設計されているため、法律上の車両構造や運用そのものが高速バス・貸切バスとは異なります。
一方、高速道路を走る高速バスや貸切バスなどでは、座席にシートベルトが備えられている車両が一般的で、国土交通省も乗車時のシートベルト着用を呼びかけています。つまり「バスにはシートベルトがない」のではなく、バスの種類によって大きく違うと理解するのが正確です。
- まず「バス」と一括りにすると分かりにくい
- 路線バスは「立って乗ること」を前提に作られている
- 路線バスでは乗り降りの回数も非常に多い
- 「シートベルトを付ければ立っている人だけ危険」という問題もある
- 高速バスや貸切バスにはシートベルトがある
- シートベルトがあるバスでは着用するのが基本
- 予算が理由ではないの?
- 路線バスは速度が低いからシートベルトが不要なの?
- バスの大きさや重さも乗用車とは違う
- なぜ路線バスの運転席にはシートベルトがあるの?
- 路線バスの「つり革」はシートベルトの代わり?
- 立ったまま高速道路を走るバスはある?
- 観光バスでベルトが座席の奥に埋まっていることもある
- バス事故ではシートベルトが重要になる
- 子どもが路線バスへ乗るときはどうする?
- 一般路線バスにも将来シートベルトが付く可能性はある?
- 路線バスで乗客ができる安全対策
- 高速バスでは乗ったら最初にシートベルトを確認する
- 「シートベルトがない=安全性を考えていない」ではない
- まとめ|路線バスにシートベルトがない主因は予算ではなく「立席・短距離輸送」という設計の違い
まず「バス」と一括りにすると分かりにくい
日常会話ではすべて「バス」と呼びますが、実際には利用目的や道路環境によって車両の造りが大きく異なります。
代表的なのが、街中を短い間隔で停車する路線バス、高速道路を使って都市間を移動する高速バス、旅行などで利用する貸切バスです。
| 種類 | 主な特徴 | シートベルト |
|---|---|---|
| 一般路線バス | 停留所が多く、立席乗車を想定 | 客席にない車両が多い |
| 高速バス | 高速道路を利用し長距離移動 | 座席に備える車両が一般的 |
| 貸切・観光バス | 団体旅行・長距離移動など | 座席に備える車両が一般的 |
この違いを押さえると、なぜ路線バスだけシートベルトがないように見えるのかが理解しやすくなります。
路線バスは「立って乗ること」を前提に作られている
一般的な路線バスの大きな特徴が、立席を含めた乗車を前提としていることです。道路運送車両の保安基準には、バスなどの車両について「立席」に関する構造基準も設けられています。
朝夕の通勤時間帯を想像すると分かりやすいでしょう。座席がすべて埋まっていても、つり革や手すりにつかまって多くの人が乗車しています。
もし路線バスを「乗客全員が座席へ座り、シートベルトを締めなければ発車できない」という方式にすると、現在のような大量輸送が難しくなります。
路線バスでは乗り降りの回数も非常に多い
路線バスは数分ごとに停留所へ停まり、そのたびに乗客が乗り降りします。
例えば10分の移動で5つの停留所を通過する路線なら、乗客によっては数分しか車内にいません。全員が乗車するたびにシートベルトを装着し、停留所へ着くたびに外す運用は、乗降時間を大きく延ばす可能性があります。
高齢者、子ども、大きな荷物を持った人なども利用するため、公共交通としては素早く安全に乗降できることも重要です。
そのため、路線バスではシートベルトを前提とした座席配置より、通路、手すり、つり革、乗降口などを含めて車内全体の安全性を確保する設計になっています。
「シートベルトを付ければ立っている人だけ危険」という問題もある
仮に路線バスの座席だけに全員シートベルトを付けたとしても、立っている乗客にはベルトを装着できません。
つまり満員の路線バスでは、「座っている人は固定されるが、立っている人は固定されない」という状態になります。
路線バスでは座席ベルトだけに頼るのではなく、急加速・急減速を避ける運転、握りやすい手すり、つり革、車内の段差対策などを含めた安全対策が重要になります。
もちろん事故が起きれば立席乗客にも負傷リスクはあります。そのため車内放送でも、発車前につり革や手すりにつかまるよう案内されることがあります。
高速バスや貸切バスにはシートベルトがある
「大型バスだからシートベルトが付けられない」というわけではありません。
高速バスや貸切バスでは、客席にシートベルトを装備した車両が一般的です。国土交通省も貸切バス事業者に対し、シートベルトを常時利用できる状態にしておき、車内放送などで乗客へ着用を促すよう求めています。
高速道路では一般道より速度が高いため、衝突・急制動時の身体への衝撃も大きくなります。そのため座席に着いて長距離移動するタイプのバスでは、シートベルトの重要性がさらに高くなります。
[参照] 国土交通省「バス乗車の際はシートベルトを締めましょう」
シートベルトがあるバスでは着用するのが基本
道路交通法では、道路運送車両法などによってシートベルトを備える必要がある座席について、乗員にシートベルトを着用させることが基本となっています。
警察庁も、シートベルトを備えている自動車では後部座席を含めて着用するよう案内しています。
したがって高速バスや観光バスに乗って座席にシートベルトが付いている場合、「バスだから締めなくてもいい」ということではありません。
特に高速道路を走行中は重大事故時の被害を軽減するため、ベルトを外さず正しく着用しておくことが重要です。
[参照] 警察庁「全ての座席でシートベルトを着用しましょう」
予算が理由ではないの?
シートベルトにも当然、部品代や設計費、整備費などのコストはかかります。そのため車両価格という意味では費用が全く無関係とはいえません。
しかし、一般路線バスでシートベルトがない主要な理由を「バス会社がお金を節約したいから」と考えるのは適切ではありません。
車両には国が定める保安基準があり、必要な安全装置については基準に適合しなければ車両として使用できません。バス会社が任意に「節約のため安全装置を付けない」と自由に決めているわけではありません。
本質的な違いは費用よりも、「立席を含む市街地の大量輸送車両」と「全員が着席して高速・長距離移動する車両」という用途の違いです。
路線バスは速度が低いからシートベルトが不要なの?
市街地を走る路線バスは、高速バスより速度が低い場面が多いのは事実です。しかし「速度が低いから事故を起こしても安全」という意味ではありません。
大型バスであっても急ブレーキをかければ、立っている乗客が転倒する可能性があります。特に高齢者は転倒によって骨折することもあります。
そのため路線バスでは、乗客が着席するまで発車を待つケースや、立っている乗客へ手すりにつかまるよう案内する安全対策が取られています。
運転者側でも急発進・急ブレーキを避け、車内事故を防止する運転が重要になります。
バスの大きさや重さも乗用車とは違う
路線バスは乗用車よりはるかに大きく、車体重量もあります。一般的な乗用車同士の事故と、バスが関係する事故では車体構造や衝撃の受け方も異なります。
大型車は乗客の位置も比較的高く、乗用車とは車室設計が違います。ただし、だからといってバスならシートベルトなしでも安全というわけではありません。
横転や大型車との衝突などでは非常に大きな力が加わります。そのため高速バス・貸切バスではシートベルト着用が重要になります。
車体が大きいことだけを理由に、シートベルト不要と結論付けるのは適切ではありません。
なぜ路線バスの運転席にはシートベルトがあるの?
乗客の座席にはベルトがない路線バスでも、運転席にはシートベルトがあります。
運転者は走行中ずっと同じ座席へ座り続け、立って移動したり途中で乗り降りしたりすることはありません。そのため乗用車と同じように身体を固定するシートベルトを使用できます。
さらに衝突時に運転者が座席から投げ出されたり、運転操作ができなくなったりすれば、二次事故につながるおそれもあります。
同じバスの中でも、運転席と乗客スペースでは利用方法がまったく違うため、安全設備も異なるわけです。
路線バスの「つり革」はシートベルトの代わり?
つり革や手すりは、シートベルトと同じ効果を持つ装置ではありません。
シートベルトは衝突時に身体が前方へ投げ出されるのを防ぐ装置ですが、つり革は主に通常走行中の加速・減速・カーブで身体のバランスを保つために使います。
強い衝突が起きれば、つり革につかまっているだけで身体を完全に保持できるとは限りません。
それでも日常的な急減速や車体の揺れによる転倒を防ぐうえでは重要なので、立って乗る場合は必ず手すりやつり革につかまることが大切です。
立ったまま高速道路を走るバスはある?
一般的な市街地路線バスでは立席が認められていますが、高速道路を利用するバスは事情が異なります。
高速バスなどでは基本的に乗客が座席へ着席して移動する構造になっており、立ったまま多数の乗客を乗せて高速道路を長距離走行する一般路線バスのような運用にはなっていません。
そのため高速道路を使うバスでは、一人ずつ座席を用意し、シートベルトを利用できる設計との相性がよくなります。
同じ大型バスでも、走る道路と輸送方法によって安全設備が違う代表例といえます。
観光バスでベルトが座席の奥に埋まっていることもある
観光バスや貸切バスに乗ると、シートベルトが座席のすき間に入り込んで見えにくくなっていることがあります。
国土交通省は貸切バス事業者に対し、シートベルトを座席に埋没させず、常時使用できる状態にするよう求めています。
ベルトが見つからない場合には、「このバスには付いていない」と判断せず、座席の左右やクッションの間を確認するか、乗務員へ尋ねるとよいでしょう。
発車後ではなく、できれば出発前に装着しておくと安全です。
バス事故ではシートベルトが重要になる
警察庁は一般の自動車について、後部座席でシートベルトを着用しない場合、衝突時に車内を強打したり、車外へ放り出されたり、前席の人へ衝突したりする危険があると説明しています。
バスでも身体が固定されていなければ、事故時に座席から投げ出される可能性があります。
高速バスや貸切バスにベルトが備えられているのは、このような事故時の被害を軽減するためです。
「大型車だから事故でも大丈夫」と考えず、利用できるシートベルトがある場合は必ず着用することが重要です。
子どもが路線バスへ乗るときはどうする?
子どもと路線バスへ乗る場合も、一般的な乗用車とは状況が異なります。
路線バスではチャイルドシートを一人ずつ設置するような利用形態になっていません。頻繁に乗客が入れ替わり、立席もある公共交通だからです。
小さな子どもを座席へ座らせる場合は、急ブレーキで身体が前へ飛び出さないよう保護者が十分注意する必要があります。立たせる場合も手をつなぐなど、転倒防止を意識したほうがよいでしょう。
ベビーカーについては交通事業者によって固定方法などの案内があるため、利用するバス会社のルールを確認するのが確実です。
一般路線バスにも将来シートベルトが付く可能性はある?
自動車の安全基準は固定されたものではなく、事故分析や技術の進歩によって改正されています。
実際、乗用車でも過去には後部座席のシートベルトが現在ほど一般的ではありませんでしたが、制度や車両技術の変化によって安全装備が拡充されてきました。
バスについても、自動ブレーキ、ドライバー異常時対応システム、衝突被害軽減ブレーキなど、さまざまな安全技術が導入されています。
今後、路線バスの運行形態や車両構造が変化すれば安全設備も変わる可能性があります。ただし、立席を維持する限り、全乗客をシートベルトで固定する仕組みには構造上の難しさがあります。
路線バスで乗客ができる安全対策
シートベルトがないからこそ、路線バスでは乗客自身も日常的な転倒防止を意識する必要があります。
- 立っているときは手すり・つり革につかまる
- 空席があれば可能な範囲で座る
- バスが完全に停車してから移動する
- 大きな荷物は転がらないよう保持する
- 走行中に車内を不用意に歩かない
- 高齢者・子どもは特に急ブレーキへ備える
特に降りる停留所が近づいたからといって、走行中に急いで出口へ移動すると転倒事故につながる可能性があります。
高速バスでは乗ったら最初にシートベルトを確認する
高速バスや貸切バスへ乗った場合には、荷物を置いて座ったら最初にシートベルトを装着する習慣を付けるとよいでしょう。
途中のサービスエリアで休憩し、再び乗車した後も忘れず締め直します。
夜行バスでは眠っている間に事故や急ブレーキが起きる可能性もあります。寝るときこそ身体を固定しておく意味があります。
ベルトがねじれていたり座席の下へ入り込んでいたりして使えない場合は、出発前に乗務員へ伝えるのが安全です。
「シートベルトがない=安全性を考えていない」ではない
路線バスの座席にシートベルトがないと、乗用車と比べて安全性を軽視しているように感じるかもしれません。
しかし実際には、路線バスには路線バスの運行形態に合わせた安全基準があります。立席、通路、乗降口などについても道路運送車両の保安基準で規定されています。
高速バスや貸切バスについては座席ベルトを活用し、市街地路線バスについては乗降性や立席輸送を含めた別の安全設計を採るという考え方です。
したがって「ベルトを付け忘れた大型車」というより、目的の異なる乗り物として設計されていると理解したほうが実態に近いでしょう。
まとめ|路線バスにシートベルトがない主因は予算ではなく「立席・短距離輸送」という設計の違い
一般的な路線バスの客席にシートベルトが付いていないことが多いのは、単純なコスト削減が主な理由ではありません。
路線バスは数分ごとに乗客が乗り降りし、混雑時には立席乗車も行う公共交通です。そのため全乗客が座席へ着席してシートベルトを締めることを前提とした高速バスや乗用車とは、車両構造と運用が根本的に異なります。
「バスにはシートベルトがない」のではなく、「立席を想定する一般路線バスにはないことが多く、全員着席が基本となる高速バス・貸切バスには備えられている」という理解が最も分かりやすいでしょう。
高速バスや観光バスなど、座席にシートベルトが備えられている車両では着用することが重要です。国土交通省も貸切バス利用者にシートベルト着用を呼びかけ、事業者には発車前の着用確認や車内放送による案内などを求めています。
一方、シートベルトのない路線バスでは、立っている場合につり革や手すりへしっかりつかまり、車両が停車する前に不用意に歩かないことが重要です。バスの種類に応じた安全設備と利用方法を知ることで、「なぜ同じバスなのにシートベルトの有無が違うのか」が理解しやすくなります。
[参照] 国土交通省「バス乗車の際はシートベルトを締めましょう」
[参照] 警察庁「全ての座席でシートベルトを着用しましょう」


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