外国人の不法滞在や、在留資格を取得する目的で行われた可能性のある偽装結婚を身近で知った場合、どこへ情報提供すればよいのか、通報すると何が起こるのか分からない人も多いでしょう。
日本では、外国人の在留資格や退去強制などを管轄する出入国在留管理庁が、不法滞在・偽装滞在に関する一般からの情報提供を受け付けています。ただし、年齢差のある結婚、外国人との結婚、過去の在留状況などだけで偽装結婚と断定できるわけではありません。重要なのは、推測と実際に確認した事実を分けて考えることです。
不法滞在や偽装滞在の情報は出入国在留管理庁が受け付けている
出入国在留管理庁は、公式サイトで「不法滞在・偽装滞在する者への対策」を行っているとして、一般から情報を受け付けています。情報提供は電子メールのほか、最寄りの地方出入国在留管理官署へ直接連絡する方法があります。
公式の情報受付フォームでは、情報提供者の氏名について匿名を希望する場合は入力しなくてもよいと案内されています。住所の一部、電話番号、メールアドレスなどにも任意入力となっている項目があります。制度の詳細や最新の受付方法については、出入国在留管理庁「情報受付」[参照]で確認できます。
一方、入管は適法に滞在している外国人への誹謗中傷を明確に拒否しています。国籍や外国人であること自体を理由に通報する制度ではなく、具体的な不法滞在・偽装滞在の疑いに関する情報を提供するための窓口と考えるべきです。
日本人と結婚しただけで在留資格が自動的に認められるわけではない
日本人と法律上結婚した外国人については、一定の要件を満たせば「日本人の配偶者等」という在留資格の対象になり得ます。しかし、婚姻届が受理されたことと、在留資格が認められることは別の問題です。
出入国在留管理庁によると、「日本人の配偶者等」に該当する代表例は日本人の夫または妻です。すでに日本に滞在している外国人がこの資格へ変更する場合には、在留資格変更許可申請などの審査を受けることになります。出入国在留管理庁「在留資格『日本人の配偶者等』」[参照]
そのため、「結婚すれば過去の不法滞在がすべて消える」「婚姻届を出せば必ず配偶者の在留資格が取れる」と考えるのは正確ではありません。在留資格については個別の事情や提出資料などを踏まえて行政側が判断します。
年齢差や別居だけでは偽装結婚とは判断できない
例えば、夫婦に大きな年齢差がある、知人から見ると結婚の経緯が不自然に感じられる、といった事情があっても、それだけで偽装結婚であるとはいえません。夫婦のあり方は多様であり、第三者から見ただけでは実際の婚姻関係を判断できないケースがあるためです。
同様に、夫婦が一時的に別居していることだけで直ちに在留資格が取り消されるわけでもありません。出入国在留管理庁は、DVからの避難や子どもの養育など、配偶者としての活動を行っていないことに正当な理由が認められる場合があると説明しています。出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A」[参照]
したがって第三者が情報提供するときは、「年齢差が大きいから偽装だと思う」のような推測よりも、いつ、どこで、誰から何を聞いたのか、自分自身が何を確認したのかといった具体的事実を整理することが重要です。
偽りや不正な手段で在留資格を取得すると取消しの対象になり得る
すでに在留資格が許可されている場合でも、それですべてが確定して将来何も問題にならないというわけではありません。入管法には在留資格の取消制度があります。
出入国在留管理庁は、偽りその他不正の手段によって上陸許可などを受けた場合には、在留資格を取り消すことができると説明しています。公表されている取消事例には、「日本人の配偶者等」の在留資格を得るため婚姻を偽装し、婚姻実態があるかのように装った虚偽の申請を行った例も示されています。
在留資格取消制度については、出入国在留管理庁「在留資格の取消し」[参照]で公式の説明を確認できます。実際に取消事由へ該当するかどうかは、本人の事情や証拠などを踏まえて入管当局が個別に判断します。
情報提供したらすぐ逮捕・強制送還になるわけではない
第三者が入管へ情報提供したからといって、その内容だけを理由に直ちに在留資格が取り消されたり、外国人が強制的に国外へ出されたりするとは限りません。情報提供はあくまで行政機関が事実関係を確認するための情報の一つです。
在留資格を取り消そうとする場合には、原則として対象となる外国人から入国審査官が意見を聴取する手続があり、本人は意見を述べたり証拠を提出したりする機会があります。そのうえで取消事由に該当するかが判断されます。
また、出入国在留管理庁は、提供された情報について調査状況の問い合わせには応じないとしています。情報を送った人へ「調査しました」「処分しました」と逐一結果が通知される制度ではない点にも注意が必要です。
通報するときは「事実」と「推測」を分ける
情報提供を行う場合に特に大切なのが、自分が直接確認した事実と、人から聞いた話や自分の推測を混同しないことです。
例えば、「本人から在留期限についてこのように聞いた」「結婚手続のために金銭を渡しているという話を当事者から聞いた」「この時期にこの場所で生活していたことを確認した」などは、情報の出所を明確にして伝えることができます。一方、「年齢差があるから偽装だ」「外国人だから怪しい」といった内容は、違反を裏付ける事実にはなりません。
行政書士などの専門家へ依頼して在留手続を行うこと自体も、それだけで違法という意味にはなりません。専門家への依頼、国際結婚、夫婦の年齢差などの事情と、虚偽申請や偽装婚姻の有無は切り分けて考える必要があります。
情報提供前に整理しておきたいポイント
入管へ情報を伝えるのであれば、感情的な文章を書くより、確認できる情報を時系列で整理したほうが伝わりやすくなります。
- 対象となる人物を特定するために分かっている情報
- 不法滞在または偽装滞在を疑う具体的な理由
- 自分自身が直接確認した事実
- 他人から聞いた情報の場合は、その旨
- 出来事があった時期や場所
- 関連する会社や関係者について分かっている事実
- メールや文書など客観的な資料がある場合はその存在
特に、推測を事実のように書かないことが重要です。情報提供後に調査するか、どのような対応を取るかを判断するのは行政機関です。
自分が以前から事情を知っていた場合はどう考えるべきか
過去に不法滞在などの疑いを知りながら特に何もしなかったという事情がある場合、自分にも何らかの責任が生じるのではないかと不安になることがあります。しかし、単に事情を知っていたケースと、不正な在留資格取得を具体的に手助けしたケースでは事情が大きく異なります。
例えば、虚偽の書類作成に関与した、名義を貸した、虚偽申請だと認識しながら具体的に手助けした、報酬を受け取って不正な手続きを容易にした、といった事情がある場合には、単なる「知人として知っていた」という状況とは分けて考える必要があります。
自分自身も手続や書類作成などに関与しており、法的責任が生じる可能性を心配している場合は、詳細をインターネット上に公開するより、入管法や刑事事件を扱う弁護士へ個別に相談するほうが安全です。
まとめ:偽装滞在の判断は入管に委ね、具体的な事実を情報提供する
不法滞在や偽装結婚による偽装滞在が疑われる場合、出入国在留管理庁には一般から情報を受け付ける公式窓口があります。すでに配偶者としての在留資格などを取得している場合でも、偽りその他不正の手段で許可を得た事実が判明すれば、在留資格取消制度の対象となる可能性があります。
ただし、年齢差、外国人との結婚、専門家への手続依頼といった事情だけで偽装結婚と決めつけることはできません。通報する側が有罪・無罪や偽装結婚かどうかを決めるのではなく、確認できる具体的な事実を行政機関へ伝え、その判断を入管に委ねるという考え方が重要です。
最新の情報提供方法については、出入国在留管理庁の「情報受付」公式ページ[参照]を確認してください。個別案件で自分自身の法的責任まで問題になる可能性がある場合は、弁護士などの専門家への相談も検討するとよいでしょう。


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