青森県弘前市の平均所得は低い?最新の市町村民所得データと数字を見るときの注意点

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青森県弘前市について、「平均所得が低い地域なのでは?」という話を見聞きすることがあります。しかし、地域の所得水準を比較するときは、何を「所得」と呼んでいるのかを確認しなければ正確な判断はできません。給与所得、世帯所得、課税所得、1人当たり市町村民所得など、統計によって対象や計算方法が異なるためです。

そこでこの記事では、青森県が公表している市町村民経済計算などの公的データをもとに、弘前市の所得をどのように捉えればよいのかを解説します。単純なランキングだけでは見えにくいポイントについても整理します。

弘前市の「1人当たり市町村民所得」はどのくらい?

青森県が公表している令和5年度(2023年度)市町村民経済計算によると、弘前市の1人当たり市町村民所得は約282万9,700円です。一方、同年度の青森県全体の1人当たり県民所得は約287万8,900円となっています。

したがって、この統計だけで比較すると、弘前市は青森県全体の水準を約4万9,000円下回っています。ただし差は約1.7%であり、県平均から極端に離れているという数字ではありません。青森県の公式データは[参照]から確認できます。

また、弘前市の数字は令和4年度(2022年度)の約261万1,700円から令和5年度には約282万9,700円へ上昇しています。単年度の順位だけを見るのではなく、こうした時系列での変化を見ることも重要です。

「1人当たり市町村民所得」は住民の平均年収ではない

ここで特に注意したいのが、1人当たり市町村民所得=弘前市民の平均年収ではないという点です。青森県も公式資料で、この指標は個人の所得水準を表すものではないと明記しています。

市町村民所得には、会社員などが受け取る雇用者報酬だけではなく、財産所得や企業所得なども含まれます。それを子どもや高齢者などの非生産年齢人口も含めた総人口で割った数字が「1人当たり市町村民所得」です。

例えば、人口1万人の地域に非常に収益力の高い大企業や工場が存在すると、企業所得によって1人当たり市町村民所得が大きく上昇する場合があります。しかし、それだけで住民一人ひとりの給料が高いとは判断できません。反対に、市町村民所得が低めだからといって、そこで働く全員の給料が低いとも限りません。

弘前市は青森県内で極端に所得が低い地域なのか

令和5年度のデータを見ると、青森県の1人当たり県民所得は約287万9,000円、弘前市は約283万円です。この指標において弘前市は県平均を若干下回っています。

一方、同じ県内でも市町村による差はかなり大きくなっています。例えば令和5年度の1人当たり市町村民所得は、八戸市が約302万7,000円、青森市が約287万3,000円となっています。また六ヶ所村は約779万7,000円と非常に高い水準です。

この大きな差には、各地域の人口構成だけではなく、立地する企業や産業構造などが影響します。そのため「弘前市は六ヶ所村より数字が低いから、弘前市民の給料も大幅に低い」という比較は適切ではありません。

なぜ地域によって所得の数字に差が出るのか

地域経済の所得指標は、その地域の産業構造から大きな影響を受けます。製造業の大規模工場、エネルギー関連施設、本社機能など、付加価値や企業所得の大きい事業所が存在する地域では、市町村民所得も高くなりやすくなります。

一方、農林水産業、観光、小売、医療・福祉、サービス業などが地域経済で大きな割合を占める場合には、大企業の設備や本社が集中する都市・地域とは所得構造が異なります。したがって、人口規模だけで地域の所得水準が決まるわけではありません。

弘前市について考える場合も、単に「地方都市だから所得が低い」と結論付けるのではなく、産業構造、雇用形態、年齢構成、企業所得など複数の要素を見る必要があります。

平均所得を調べるときは「平均年収」と「所得」を区別する

インターネットでは「弘前市の平均所得」「弘前市の平均年収」といったランキングが多数掲載されています。しかし、サイトによって計算方法が違うことがあります。

例えば、会社員の給与水準を知りたいのであれば、企業所得まで含む市町村民所得よりも、賃金に関する統計を確認するほうが目的に合っています。また、住民の所得税・住民税上の所得を知りたい場合には、課税に関する統計を見るという方法があります。

さらに「平均」には、一部の高所得者によって数字が引き上げられやすい特徴があります。住民の一般的な生活実感を知りたい場合には、可能であれば中央値、世帯所得、雇用者の給与、物価や住居費なども併せて確認したほうが実態を把握しやすくなります。

所得だけで地域の暮らしやすさは判断できない

地域を比較するときには、収入だけでなく支出にも目を向ける必要があります。仮に給与が高い地域でも、家賃や住宅価格、駐車場代などの固定費が高ければ、自由に使えるお金が必ずしも多くなるとは限りません。

例えば年収500万円でも住宅費が年間180万円かかる世帯と、年収400万円で住宅費が年間80万円の世帯では、税金などを無視した単純計算でも住宅費を差し引いた金額の差はほとんどありません。このため「平均所得が高い都市=必ず生活が豊か」とは限らないのです。

弘前市の生活水準を考える場合にも、所得統計だけでなく、住宅費、自動車関連費、公共交通、日常の物価、求人状況などを合わせて検討することで、より現実に近い比較ができます。

公的統計を見るときに確認したいポイント

地域の所得について調査するときには、できるだけ自治体や国などが公表する一次資料を確認することが重要です。青森県は毎年、市町村民経済計算を公表しており、弘前市を含む県内各市町村のデータを確認できます。

また、統計には公表まで時間がかかるものがあります。例えば2026年に公表された市町村民経済計算の最新資料が2023年度を対象としているように、「現在の数字」と「統計の対象年度」が一致しないことがあります。

さらに青森県は推計方法の変更などに伴い過去の数値を遡って改定する場合があるため、古いウェブ記事に掲載された数字と最新資料の数字が一致しないこともあります。比較する場合は同じ資料・同じ基準の数値を使用するのが基本です。青森県による令和5年度市町村民経済計算の公表内容は[参照]で確認できます。

まとめ:弘前市の所得は「低い」の一言では判断できない

青森県の令和5年度(2023年度)市町村民経済計算では、弘前市の1人当たり市町村民所得は約283万円で、県全体の約287万9,000円をやや下回っています。その意味では「県平均より若干低い」という説明はできますが、極端な差があるわけではありません。

そして最も重要なのは、この約283万円という数字が弘前市民の平均年収を意味するものではないことです。市町村民所得には企業所得なども含まれており、青森県自身も個人の所得水準を表す指標ではないと注意を促しています。

弘前市の経済状況や暮らしを知るには、1人当たり市町村民所得だけで結論を出さず、給与、世帯所得、産業構造、雇用環境、住宅費や物価などを総合的に見ることが大切です。「平均所得が低いらしい」という情報を見かけたときは、まず何の統計を使った数字なのかを確認することが、正確な地域比較への第一歩となります。

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