タクシー車内を乗客に汚されたらどうなる?嘔吐などのクリーニング代・営業中止・費用負担を解説

バス、タクシー

タクシードライバーにとって車内は接客スペースであると同時に職場です。乗客の嘔吐、飲食物の大量なこぼれ、泥や排泄物などによって座席や床がひどく汚れると、そのまま次の乗客を乗せることが難しくなり、営業を中断しなければならない場合があります。

このような場合に「営業所へ戻ればすぐ清掃してもらえるのか」「代わりの車に乗り換えられるのか」「クリーニング代は運転手が負担するのか」という点は、全国のタクシー会社で一律ではありません。会社の車両運用、就業規則、汚損の程度、乗客への請求方針などによって対応が変わります。

特に重要なのは、乗客が原因で発生した汚損だからといって、会社員であるドライバーが当然に全額自己負担するとは限らないことです。実際のトラブルでは、まず会社へ報告し、会社の手順に従って対応することが基本になります。

営業できないほど車内を汚されたらどうする?

座席に少量の水をこぼした程度なら清掃後に営業を再開できることもありますが、嘔吐物などがシートへ染み込んだ場合には話が変わります。臭いや衛生面の問題が残った状態で次の乗客を乗せるのは難しいため、営業中止の判断が必要になることがあります。

一般的には、まず安全な場所へ停車し、所属する営業所や運行管理者などへ状況を報告します。その後、その会社の指示に従って営業所へ戻る、清掃する、専門業者へ出すなどの対応を取ることになります。

嘔吐物や血液などの場合は感染症対策も考える必要があります。単にタオルで拭いて臭いが消えれば終了という問題ではないため、無理に自己判断で営業を再開せず、会社へ報告することが重要です。

営業所に戻ればすぐクリーニングできるとは限らない

営業所へ戻った後の対応は会社によって異なります。営業所に清掃設備や担当者がいて、その場で対応できる会社もあれば、ドライバー自身による一定の清掃を行う会社、専門のクリーニング業者へ依頼する会社も考えられます。

特にシート内部まで液体が浸透している場合には、表面を清掃しただけでは臭いが残ることがあります。シートの洗浄や消臭・除菌、乾燥などが必要になれば、すぐに営業車として復帰できない可能性があります。

したがって「営業所へ帰れば30分ほどで元通り」と一律に考えることはできません。汚損の場所や程度によっては、その車両が当日いっぱい使用できなくなるケースも想定しておく必要があります。

別のタクシーへ乗り換えて営業を続けることもある?

汚れた車両をすぐ営業へ戻せない場合、会社に使用可能な予備車などがあれば、別の車両へ乗り換えて営業を継続できる可能性があります。ただし、これも必ずできるわけではありません。

予備車の保有状況、他の乗務員の出庫状況、勤務時間、車両管理上の手続きなどによって対応は変わります。空いている営業車がなければ、その日の営業を途中で終了せざるを得ない場合もあります。

例えば深夜に乗客が後部座席で嘔吐し、シート内部まで汚れてしまった場合、営業所へ戻って予備車が確保できれば乗り換えるという選択肢があります。一方、予備車がすべて使用中なら、そのまま営業終了となる可能性があります。

クリーニング代はドライバー・会社・乗客の誰が負担する?

ここは誤解されやすいところですが、「乗客が汚した車両のクリーニング代は必ずドライバー負担」「必ず会社負担」「必ず乗客へ定額請求」という全国共通ルールがあるわけではありません。具体的な処理は会社の規程や事故・汚損の事情によって異なります。

乗客の故意・過失によって車内を汚損し、実際に清掃費などの損害が生じた場合には、民法上の損害賠償の問題になる可能性があります。民法709条は、故意または過失によって他人の権利・法律上保護される利益を侵害した者について、損害を賠償する責任を定めています。

ただし、実際に乗客へ何をどこまで請求できるかは、汚損に至った事情、損害との因果関係、実際に発生した費用などによって判断されます。「吐いたら全国一律○万円」と法律で決まっているわけではありません。

会社員ドライバーへクリーニング代を当然に全額負担させられるわけではない

雇用されているタクシードライバーの場合、営業車は通常、会社が事業のために使用している車両です。乗客による汚損が発生したからといって、それだけで清掃費をドライバー個人が当然に全額負担するという結論にはなりません。

また労働基準法16条では、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額をあらかじめ予定したりする契約を禁止しています。[参照:e-Gov法令検索 労働基準法]

もっとも、労働者が実際に会社へ損害を与えた場合の責任がすべて否定されるという意味でもありません。ドライバー本人の故意・過失の有無や会社側の管理状況など個別事情が関係します。少なくとも「客が吐いたら運転手が自腹」という単純なルールとして理解しないことが大切です。

乗客へクリーニング代を請求する場合は会社のルールに従う

乗客に原因がある汚損でも、ドライバーがその場で独断で金額を決めて現金を要求するのはトラブルの原因になります。所属会社に汚損事故の対応マニュアルや請求ルールがあるなら、それに従うのが基本です。

会社へ連絡し、汚れた場所や程度、発生時刻、乗車区間などを記録しておくと、その後の対応がしやすくなります。会社のルール上認められている範囲で写真を残すことも、汚損状態を客観的に説明する材料になります。

乗客とその場で費用について揉めた場合も、無理に決着をつけようとするより会社へ連絡して指示を受けるほうが安全です。暴力、脅迫、料金不払いなど別のトラブルまで発生して身の危険を感じる場合には、警察への通報が必要になることもあります。

営業できなかった時間の損失はどうなる?

車内清掃の問題では、クリーニング費だけでなく「本来なら営業できた時間に営業できなかった」という営業上の損失も考えられます。しかし、これについても常に乗客へ一定額を請求できるとは限りません。

損害賠償として請求するなら、実際にどのような損害が発生し、その行為との因果関係があるのかが問題になります。会社が独自の対応規程を設けている場合もあるため、乗務員個人の判断ではなく会社側で処理することが重要です。

歩合給の割合が大きいタクシードライバーの場合、営業中断が収入へ影響する可能性もあります。この場合の賃金上の扱いについても会社ごとの賃金規程・労働契約などによって異なるため、就職を検討している場合は事前に確認しておくと安心です。

タクシー会社へ就職する前に確認しておきたいこと

これからタクシードライバーとして働く場合、事故対応だけでなく車内汚損時のルールも確認しておくと、実際に起きた際に慌てずに済みます。

  • 乗客が嘔吐した場合の連絡先と対応手順
  • 営業所で清掃できるのか、専門業者へ依頼するのか
  • 予備車への乗り換えが可能か
  • 清掃費を誰が負担する規程なのか
  • 乗客への費用請求は誰が行うのか
  • 営業中断時の歩合給などの扱い
  • ドライバー本人に費用負担を求めるケースがあるのか

特に夜間の繁華街を多く走る会社では、乗客の嘔吐などは現実的に想定しておきたいトラブルです。面接や入社時研修で「車内をひどく汚された場合はどのような手順になりますか」と聞くことは、不自然な質問ではありません。

まとめ:車内を汚されたときの費用負担と営業継続は会社ごとに異なる

タクシー車内を乗客にひどく汚され、そのまま営業できない状態になった場合は、まず所属会社・営業所へ報告し、その会社の手順に従うことが基本です。営業所で清掃して復帰する場合もあれば、専門業者でのクリーニング、予備車への乗り換え、その日の営業終了など、状況によって対応は変わります。

クリーニング代についても「会社持ち・ドライバー持ち・折半」のどれかが全国一律で決まっているわけではありません。乗客の故意・過失による汚損なら乗客への損害賠償が問題になることがありますが、実際の請求方法や費用処理は会社の規程と個別事情によります。

タクシー会社への就職を考えている場合には、給与や勤務体系だけでなく、嘔吐などによる車内汚損時の清掃体制、予備車の有無、営業中断時の扱い、費用負担についても確認しておくと、会社選びの重要な判断材料になります。

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