「日本より住みやすい国はあるのか」という疑問には、世界共通の一つの答えはありません。住みやすさは、治安、清潔さ、住宅、所得、物価、医療、教育、交通、気候、働き方、言語、娯楽など、何を重視するかによって大きく変わるからです。
日本は安全性や公共交通、上下水道、買い物の便利さなどを高い水準で組み合わせた国ですが、住宅の広さ、賃金、休暇、自然環境など別の基準を重視すれば、北欧諸国やスイス、オーストラリア、シンガポールなどを日本以上に暮らしやすいと感じる人もいます。
重要なのは「世界で一番住みやすい国」を探すことではなく、自分にとっての住みやすさを項目別に比較することです。
日本はなぜ住みやすいと感じやすいのか
日本の強みは、一つの項目だけが突出しているというより、日常生活に必要な要素が高い水準でまとまっていることです。鉄道・コンビニ・スーパー・宅配・飲食店などのサービスが身近にあり、大都市では自動車なしでも生活できる地域が少なくありません。
安全面についても、国際比較では日本は比較的良好な位置にあります。Institute for Economics & PeaceのGlobal Peace Indexでは、社会の安全・治安など複数の指標から各国が評価されています。[参照:Global Peace Index]
さらに、水道水を日常的に利用できること、温水洗浄便座や浴室設備、24時間利用できる店舗、商品の品質管理など、日本で暮らしていると当たり前に感じる環境が、海外へ移住すると意外に大きな違いになることがあります。
日本以上に住みやすいと感じる可能性がある国
国際的な生活満足度だけを見ると、日本より高い評価を得る国は存在します。OECDのBetter Life Indexでは、住宅、所得、雇用、教育、環境、安全、ワークライフバランス、生活満足度など、多面的な観点から加盟国を比較できます。[参照:OECD Better Life Index]
例えばフィンランド、デンマーク、ノルウェーなどの北欧諸国は、社会保障、ワークライフバランス、生活満足度などを重視する人にとって魅力的な候補です。一方で税負担や物価、冬の日照時間、言語など、日本とは異なる負担があります。
スイスは所得水準や公共交通、自然環境などが魅力ですが、生活費も非常に高いことで知られています。オーストラリアは比較的広い住宅や自然、気候、屋外での生活を重視する人には魅力がありますが、都市によっては住宅費が大きな問題になります。
清潔さ・治安・都市の便利さを重視するならシンガポールも候補
日本で評価されやすい「街の清潔さ」「治安」「公共交通」「買い物の便利さ」をなるべく維持したい場合、比較対象として挙げやすいのがシンガポールです。都市国家なので公共交通で移動しやすく、商業施設や飲食店も充実しています。
また英語を広く利用できることは、日本人が海外生活を始める際のメリットになり得ます。多民族・多文化社会であるため、日本とは異なる食文化を日常的に楽しめる点も特徴です。
ただし、日本より住みやすいと単純には言えません。住宅費をはじめ生活コストが高く、年間を通じて高温多湿です。また法律や社会的ルールにも日本とは異なる特徴があります。旅行者として快適な都市と、長期間生活する都市は分けて評価する必要があります。
北欧は幸福度が高いから日本より暮らしやすい?
世界幸福度報告(World Happiness Report)では、フィンランドをはじめとする北欧諸国が長年上位に登場しています。このランキングは単に「楽しい国」を決めているわけではなく、人々による生活評価を中心に分析されています。[参照:World Happiness Report]
仕事より家族との時間を重視したい、長期休暇を取りやすい環境を求めたい、社会保障を重視したいという人なら、日本より北欧の生活を高く評価する可能性があります。
一方、日本のコンビニ、深夜営業の飲食店、宅配サービス、豊富な外食、温泉、細やかな接客などを重視する人には不便に感じる部分もあります。「幸福度ランキングが上だから移住すれば日本より幸せ」という関係ではありません。
日本にも住みにくい部分はある
日本の利便性を評価するときには、弱点も含めて比較する必要があります。例えば長時間労働、通勤混雑、都市部の住宅の狭さ、夏の高温多湿、地震や台風などの自然災害は生活上の負担になり得ます。
また、日本語を母語とする日本人には行政、医療、銀行、賃貸契約などを日本語で利用できる大きなメリットがあります。海外では、現地の人にとって簡単な手続きでも外国人には難しいことがあります。
反対に、外国語を使える人、海外で高所得の仕事を得られる人、自然の多い広い住宅を求める人などは、日本を離れることで生活の満足度が上がる場合があります。国籍、仕事、収入、家族構成によって評価が変わる理由です。
「旅行で最高だった国」と「住みやすい国」は違う
海外旅行で気に入った国でも、実際に暮らすと印象が変わることがあります。旅行ではホテル代や観光地を見る一方、移住すると家賃、税金、健康保険、医療、通勤、学校、銀行口座、ビザなどが生活の中心になります。
例えば海と自然が美しい国を旅行して「ここに住みたい」と感じても、毎日の通勤に車が必須だったり、専門的な医療を受けるため都市部まで移動する必要があったりすれば、評価は変わります。
逆に観光地として派手ではなくても、住宅が広い、職場まで近い、公園が多い、残業が少ないといった特徴を持つ都市のほうが長期生活では快適な場合があります。
住みやすさは国ではなく「都市」で比較すると分かりやすい
実際に移住先を検討するなら、日本対外国という国単位だけではなく、東京、大阪、福岡、札幌と、コペンハーゲン、ヘルシンキ、シンガポール、メルボルンなど具体的な都市同士で比較するほうが実用的です。
同じ日本でも東京都心と地方都市では、住宅費、交通、自然環境、自動車の必要性が大きく違います。同様にオーストラリアやアメリカなど国土の広い国では、都市による生活環境の差が非常に大きくなります。
比較するときは「手取り収入-住宅費-交通費-医療費」のように実際に残るお金を見ることに加え、通勤時間、年間休日、治安、医療アクセス、気候、食事、言語、家族との距離まで含めると、自分に合う場所が見えてきます。
日本がかなり強いのは「総合的な便利さ」
日本には日本以上の所得水準を持つ国も、幸福度が高い国も、広い住宅を得やすい国もあります。しかし「治安・公共交通・清潔さ・医療・買い物・外食・娯楽・水回り・サービス」を一度に高い水準で求めると、日本はかなり競争力のある生活環境です。
特に日本語を母語とし、日本国内に家族や友人がおり、和食や温泉、日本式のサービスが好きな人には、海外の統計では表せない大きな生活上のメリットがあります。
その一方で「広い家に住みたい」「仕事より余暇を優先したい」「自然の中で暮らしたい」「海外のほうが自分の職種の給与が高い」という人なら、海外のほうが住みやすくなることも十分にあります。
まとめ:日本より住みやすい国は「何を重視するか」で変わる
日本より住みやすい国はあるのかという問いには、「人によってはある。しかし、あらゆる面で日本を上回る国を一つ決めることはできない」というのが現実的な答えです。
安全性、清潔さ、公共交通、水回り、外食、買い物、娯楽などを総合的に重視するなら、日本は世界的に見ても魅力のある選択肢です。一方、ワークライフバランスや社会保障なら北欧、所得や自然環境など別の条件ならスイスやオーストラリア、都市の利便性と安全性ならシンガポールなど、比較する価値のある国があります。
移住を考える場合は国別ランキングだけで決めず、候補都市で得られる手取り収入、家賃、医療、交通、治安、気候、言語、ビザ、働き方を具体的に比較することが重要です。「日本より上か下か」ではなく、自分が日常生活で何を失いたくなく、何を改善したいのかを明確にすることが、本当に住みやすい国を見つける近道です。


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