路線バスに乗ると、天井付近に並んでいるエアコンの送風口が開いている車両もあれば、いくつか閉じている車両もあります。特にノンステップバスの前方は床が低く、その分だけ客室の天井が高いため、「乗客が簡単に届く場所ではないのに、なぜ閉まっているのだろう」と疑問に感じることがあります。
結論からいうと、運転士や整備・清掃担当者などが送風口を調整すること自体は考えられますが、すべての路線バスで終業時や折返しのたびに各送風口を閉じるという全国共通の運用ルールがあるわけではありません。車両の構造や空調方式、バス会社の運用によって事情が異なるため、「前方が閉じている=運転士が毎回閉めた」とまでは判断できません。
路線バスの送風口には個別に調整できるタイプがある
路線バスの客室には、天井付近のダクトから車内へ冷暖房の空気を送る構造が広く使われています。車種によっては吹き出し口ごとに向きや開閉を調整でき、特定の座席へ強い風が直接当たらないようにすることができます。
この個別吹き出し口は、家庭用エアコンのように運転士が運転席から一つずつ電動開閉しているわけではなく、手で向きや開度を変えるタイプもあります。その場合、一度閉じられれば、その状態のまま次の運行まで残ることも考えられます。
そのため、ある便で送風口が閉じていたとしても、「その便の運転士が出発前に閉じた」とは限りません。前便の状態、清掃・点検時の状態、過去に行われた調整などがそのまま残っている可能性もあります。
運行終了後に運転士が全部閉める決まりはある?
公開されている一般的なバス事業者の案内や車両資料を確認しても、「営業終了後には客室のエアコン吹き出し口を一つずつ閉める」という全国共通の標準手順は確認できません。少なくとも、乗客から見えるすべての送風口を毎回閉鎖することが路線バス一般の必須作業だとはいえません。
路線バスの終業・入庫時には、車内確認や忘れ物確認など重要な作業があります。国土交通省もバス事業者に対し、車内に旅客が残されていないことの確認など、安全に関わる措置を求めています。[参照]
もちろん個々の会社・営業所が独自に空調設備の確認や調整を行っている可能性はあります。したがって「運転士は絶対に触らない」ともいえませんが、始終点へ着くたびに高い位置の吹き出し口を全部閉めて回る、と一般化する根拠もありません。
前方の送風口が閉じているのはなぜ?
前方の送風口が閉じている理由として考えられるのが、車内全体の風量や風向を調整した結果、その状態になっているケースです。空調は単に吹き出し口の数が多ければ快適になるわけではなく、座席位置、窓、ドア、日射、乗車人数などによって温度の感じ方が変わります。
路線バスでは前扉・中扉が停留所ごとに開閉します。特に夏や冬はドアを開けるたび外気が入るため、客室の場所によって温度差が生じます。また前方は運転席やフロントガラスの影響もあり、後方とは熱環境が同じではありません。
さらに、吹き出し口が完全に閉じているように見えても、車両の空調全体が停止しているとは限りません。複数の吹き出し口やダクトから空気を循環させる構造なので、一部が閉じていても客室全体として冷暖房が行われていることがあります。
乗客が閉めた可能性もゼロではない
ノンステップバスでは前方の床が低いため、相対的に天井までの距離が大きくなります。確かに身長によっては、床面から天井付近の送風口へ手を伸ばしても届きにくい車両があります。
しかし乗客が一切触れないとも断定できません。車種や座席位置によっては座席から手を伸ばせる場所があったり、背の高い乗客なら届いたりすることもあります。また現在の状態が直前の乗客によって作られたとは限らず、以前から閉じたままになっている可能性もあります。
つまり「後方なら乗客、前方なら運転士」というように位置だけで判断するのは難しいということです。誰がいつ操作したかは、その車両を継続的に観察しない限り分かりません。
折返し時間に運転士が調整することはあり得る
始終点の折返し時間に、運転士が車内の状態を確認することはあります。その際、車内環境に問題があれば空調設定などを調整することも考えられます。乗客から「風が直接当たって寒い」と申し出があれば、対応可能な範囲で調整されるケースもあるでしょう。
ただし、ここでも「毎回すべての送風口を閉める」という話とは分ける必要があります。運転士の主要な仕事は安全運行であり、折返し時間も次便の準備や確認などに使われます。個別送風口を毎便同じ状態へ戻すかどうかは、会社や車両ごとの運用次第です。
また車両が入庫すれば、清掃や点検の際に別の担当者が車内へ入ることもあります。そのため翌朝の最初の便で送風口が閉まっていたとしても、それだけで前日の最終便の運転士が閉めたとは判断できません。
同じ路線でも車両によって状態が違う理由
路線バスには複数メーカー・年式・仕様の車両が混在していることがあります。同じ営業所の車両でも、空調装置やダクト、吹き出し口の形状が完全に同じとは限りません。
さらに空調の効き方は、外気温、日差し、乗車人数、ドアの開閉回数などでも変化します。真夏の満員便と、同じ車両の早朝の空いている便では、必要な冷房能力も体感温度も大きく異なります。
そのため「この会社は前半分だけ送風口を閉める」と見える場合でも、実際には特定車種の空調特性や過去の調整状態が影響している可能性があります。正確な理由を知りたい場合は、車両番号や路線を控えたうえでバス事業者へ問い合わせるのが最も確実です。
まとめ:運転士が触る可能性はあるが「毎回閉める」とは限らない
路線バスの前方にあるエアコン送風口が閉じていても、運行終了後や折返しのたびに運転士がわざわざ全部閉めているとは限りません。そのような全国共通の運用ルールがあるわけではなく、個々のバス会社や車両によって扱いは異なります。
運転士や整備・清掃担当者が車内環境の調整として操作することは考えられますし、過去に調整された状態がそのまま残っている場合もあります。車種によっては乗客が操作できる位置の送風口もあるため、閉じている状態だけから操作した人物を特定することはできません。
特にノンステップバスの前方は天井が高く、乗客には操作しづらい位置にあるため不思議に見えますが、「運転士が毎便閉めている」と考える必要はありません。同じ事業者の複数車両でいつも同じ位置だけ閉じているのであれば、その車種や事業者独自の空調調整である可能性もあるため、具体的な理由は当該バス事業者へ確認するのが確実です。


コメント