海外旅行の話題では、「日本ならカフェの席にスマホやバッグを置いたままトイレへ行けるが、海外ではすぐ盗まれる」といった投稿をよく見かけます。こうした表現には多少の誇張が含まれることもありますが、単なる大げさな作り話とも言い切れません。
実際、外務省の海外安全情報では、欧州の観光都市を中心に、レストランやカフェ、駅、ホテルなどでのスリや置き引きについて繰り返し注意喚起しています。特にフランスでは、テーブルの上などに置いた携帯電話を、わずかな隙に持ち去られる事例があると明記されています。[外務省・フランスの安全対策参照]
海外全体が危険というより、「日本と同じ感覚で貴重品から目を離すと被害に遭いやすい国・都市がかなりある」と理解するのが現実に近いでしょう。
「スマホを置いて10分離れたら盗まれる」は本当に大げさ?
「必ず10分以内に盗まれる」という意味なら、もちろん大げさです。海外のカフェでも、スマートフォンを置いたまま少し席を離れて何事も起こらないことはあります。
しかし、安全行動として考えるなら話は別です。外務省の英国向け安全情報では、レストランやカフェ、パブなどで、会話中や注文時、トイレ利用で席を離れた隙に、床や椅子に置いたバッグを盗まれる手口が紹介されています。[外務省・英国の犯罪事例参照]
フランスについても、レストラン、観光地、空港、駅などで置いた荷物や手を離した携帯電話を持ち去る事例が案内されています。したがって、「海外では貴重品を置いて席を離れない」という行動自体は、決して過剰な警戒ではありません。
国だけでなく「都市・場所・時間帯」で大きく変わる
海外の治安を一括して「危険」「安全」と分けるのは適切ではありません。同じ国でも、住宅街と観光地、昼と深夜、地方都市と大都市ではリスクが大きく異なります。
例えばスペインでは、外務省によると2024年に確認された日本人の犯罪被害232件のうち約99%が盗難被害でした。特にバルセロナやマドリードでは、公共交通機関、観光地、ホテル、飲食店などでスリや置き引きが多く発生しています。[外務省・スペインの安全対策参照]
一方で、海外にも一般的に治安が良好とされる地域はあります。外務省はアンドラについて、凶悪犯罪はまれで一般的な治安は良好としつつ、それでもスリや置き引きは発生すると案内しています。[外務省・アンドラの安全対策参照]
日本と海外で特に違いを感じやすいのが「置き引き」
日本では、カフェでバッグを椅子に置いたり、フードコートで荷物を席取りに使ったりする光景が珍しくありません。ただし日本でも窃盗は発生しており、荷物を放置して安全が保証されているわけではありません。警察庁も窃盗を含む犯罪統計を継続的に公表しています。[警察庁・犯罪統計参照]
それでも海外の一部観光都市では、「持ち主が一瞬目を離した物」を狙う窃盗が旅行者にとって身近なリスクです。日本で普段行っている「スマホを机に置いて注文へ行く」「バッグを椅子に残してトイレへ行く」といった行動が、そのまま通用しない場合があります。
海外旅行では「盗まれる確率が100%だから持ち歩く」のではなく、「盗まれた場合の損失が大きいので、わざわざ危険を作らない」という考え方が基本です。
なぜ観光客は狙われやすいのか
観光客は、スマートフォン、現金、クレジットカード、パスポートなど価値のある物を持っている可能性が高く、土地勘がないため周囲への注意も散りやすい傾向があります。
例えば地下鉄の路線図を確認しているとき、写真を撮影しているとき、ホテルでチェックインしているときなどは、荷物への意識が薄れます。外務省の安全情報でも、このような「別のことに集中した一瞬」を狙う手口が多数紹介されています。
さらに、窃盗犯が1人とは限りません。1人が話しかけたり物を落としたりして注意をそらし、その間に別の人物がバッグや財布を取る手口もあります。このため「周囲に怪しい人がいなかった」という感覚だけでは防げない場合があります。
イタリアやスペインでは特にスリ・置き引きへの注意が必要
イタリアについて、外務省はローマ、ミラノ、フィレンツェ、ナポリなどの観光地、駅、公共交通機関、レストラン周辺で、日本人旅行者のスリ、置き引き、ひったくり被害が多く発生しているとしています。[外務省・イタリアの安全対策参照]
スペインでも同様に、地下鉄、駅、観光名所、ホテルロビー、レストランなどが典型的な被害場所として挙げられています。旅行者が多い場所ほど警察や警備員もいますが、同時に窃盗犯にとっても標的を見つけやすい場所になります。
そのため「人が多いから安全」とは限りません。むしろスリについては、人混みそのものが犯行しやすい環境になる場合があります。
アメリカも「どこでも同じ治安」ではない
米国の場合も、州や都市、さらに同じ都市の中でも地域による差が非常に大きいため、「アメリカは危険」「アメリカは普通」と一言では説明できません。
外務省が紹介するFBI統計では、2024年の米国で凶悪犯罪が約122万件、侵入窃盗・窃盗・自動車盗などの財産犯罪が推計約599万件発生しています。[外務省・米国の安全対策参照]
ただし、この数字だけで日本と単純比較するのも注意が必要です。犯罪の定義、統計の集計方法、人口、地域差などが異なるからです。旅行者として重要なのは、訪問する都市の中で避けるべき地区や移動方法を事前に確認することです。
「外国では夜に歩けない」も国によって全く違う
海外について語る投稿では、「夜は外を歩けない」といった表現もありますが、これも世界共通ではありません。夜遅くまで普通に人が歩いている都市もあれば、数ブロック移動しただけで雰囲気が大きく変わる都市もあります。
特に海外では、日本の感覚で「駅からホテルまで徒歩20分だから歩こう」と考えるより、現地の治安情報を確認してタクシーや配車アプリを利用したほうがよいケースがあります。
反対に、海外だからという理由だけで昼間の繁華街を極端に怖がる必要もありません。危険度を国籍のイメージで判断するのではなく、具体的な場所と時間帯で判断することが重要です。
初めて海外へ行くなら最低限これだけ守ればかなり違う
海外旅行だから特殊な防犯用品を大量に用意しなければならないわけではありません。基本は、貴重品を自分の管理下から外さないことです。
- スマートフォンをテーブルに置いたまま席を離れない
- バッグを椅子の背もたれに掛けっぱなしにしない
- 財布・カード・現金を一か所にまとめない
- 混雑した電車ではバッグを体の前で持つ
- パスポートや財布をズボンの後ろポケットに入れない
- 知らない人に話しかけられたときも荷物から意識を離さない
- 夜間に土地勘のない場所を一人で歩かない
例えばカフェでトイレへ行くなら、スマホ、財布、パスポートはバッグに入れて一緒に持っていけば済みます。友人が席に残っているなら荷物を見てもらう方法もあります。
この程度の行動を習慣にすれば、海外旅行中ずっと緊張している必要はありません。
スマホは特に置きっぱなしにしないほうがいい
現在のスマートフォンには、端末そのものの価値だけでなく、クレジットカード、銀行、航空券、ホテル予約、地図、連絡先など旅行に必要な情報が集中しています。
海外でスマホを盗まれると、「端末代がもったいない」だけでは済みません。航空券の確認ができない、宿泊先が分からない、家族へ連絡できない、二段階認証が受け取れないなど、その後の旅行全体に影響する可能性があります。
そのため海外では、スマホを置いて席取りする行為は避けるのが基本です。短時間だから大丈夫と考えず、席を離れるときは必ず持っていくのが最も簡単な対策です。
SNSの海外治安情報は「経験談」と「一般論」を分けて読む
SNSでは、「パリで一瞬で財布を盗まれた」「海外では絶対スマホを置けない」といった強い表現ほど目立ちやすくなります。個人の実体験が事実でも、それがその国の全地域・全住民に当てはまるわけではありません。
反対に、「自分は10回行ったけれど一度も盗まれなかった」という体験談も、安全を保証するものではありません。犯罪は確率の問題なので、被害に遭わなかった個人の経験だけから危険が存在しないとは判断できません。
旅行前にはSNSだけでなく、外務省の海外安全ホームページで国・地域別の犯罪事例を見ると、その土地で実際に注意すべき手口を把握しやすくなります。
日本も絶対安全ではない
「海外は危険、日本は安全」という二択で考えるのも正確ではありません。日本でも置き引き、自転車盗、詐欺、暴行などさまざまな犯罪が発生しています。
日本で財布やスマートフォンを置き忘れて戻ってくることが比較的多いとしても、それは「放置してよい」という意味ではありません。国内でも貴重品は持ち歩くのが本来の安全行動です。
海外へ行く際には、日本で偶然成立している行動習慣を世界共通の常識だと思わないことが重要です。一方で「海外へ行けば常に犯罪者に狙われる」と考える必要もありません。
まとめ|海外は一律に危険ではないが、日本と同じ貴重品管理はしないほうがいい
「海外のカフェでスマホを置いたまま10分離れたら必ず盗まれる」という言い方は誇張です。しかし、外国の投稿で言われる「日本と同じ感覚でスマホやバッグを放置しないほうがいい」という部分は、実際の犯罪事例に基づいた現実的な注意です。
特にフランス、イタリア、スペインなどの大都市・観光地では、外務省もスリや置き引きについて具体的な注意喚起を行っています。一方で治安が比較的良好な国や地域もあり、海外全体を危険な場所として扱うのも適切ではありません。
初めて海外へ行く場合は、「貴重品は体から離さない」「知らない土地で深夜に一人歩きしない」「人混みではバッグを前に持つ」という基本を守るだけでもリスクは大きく下げられます。
海外旅行は、常に周囲を恐れて過ごすものではありません。日本より少し防犯意識を高め、旅行先ごとの治安情報を事前に確認して行動すれば、多くの観光地は普通に楽しむことができます。


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