バスの廃品販売では、実際の車両で使われていた行先表示の方向幕や巻取機が販売されることがあります。京都市交通局でも市バス方向幕などの廃品販売実績があり、鉄道・バスファンにとって実物の車両部品を入手できる貴重な機会です。[参照]
ただし、巻取機付き方向幕を購入して自宅で動かしたい場合には注意が必要です。一般的なバス用方向幕巻取器は家庭用コンセントのAC100Vをそのまま入力する機器ではなく、車両用の直流電源を前提として設計されています。また、電源だけ用意すれば必ず動かせるとも限らず、巻取機の型式によっては操作装置、リレー、配線なども必要です。
ここでは、バスの方向幕巻取機を家庭で動かす場合の電源の考え方、AC100Vとの違い、操作装置の役割、購入前に確認したいポイントを順番に解説します。
バスの方向幕巻取機は家庭用AC100Vをそのまま接続する機械ではない
最初に知っておきたいのが、家庭のコンセントとバス車両の電源は同じではないという点です。日本の一般家庭のコンセントは交流のAC100Vですが、自動車・バスの車載機器には直流電源で動作するものが多くあります。
バス用方向幕巻取器について定めたJIS D 4705:1993では、巻取器の定格電圧をDC24Vとしています。また、同規格では操作スイッチによって電動機を動かし、歯車またはチェーンなどを介して巻取軸を回転させる構造が示されています。[参照]
そのため、DC24V仕様の巻取機に家庭用AC100Vを直接接続してはいけません。電圧だけでなく交流と直流という違いもあり、誤った接続をすると巻取機や制御回路を破損させたり、感電・発熱・火災につながったりするおそれがあります。
家庭で動かすならAC100Vから必要な直流電源を作る
DC24V仕様の巻取機を家庭で使用する場合、基本的な考え方は家庭用AC100Vを巻取機が必要とするDC24Vへ変換することです。つまり必要なのは、単なるコンセント形状の変換アダプターではなく、AC100VをDC24Vへ変換できる適切なAC/DC電源です。
たとえばAC100Vを入力し、DC24Vを出力するスイッチング電源やACアダプターがあります。ただし、「24Vなら何でもよい」というわけではありません。巻取機が必要とする電流以上を供給できる電源容量が必要であり、極性や端子、配線方法についても確認しなければなりません。
具体的には、巻取機の銘板に「DC24V」などの表示があれば電圧を確認し、さらにメーカー名・型式・消費電力・定格電流などを調べます。仮に必要電流が数Aある機器なら、小型電子機器用の24V・1A程度のACアダプターでは容量不足になる可能性があります。
AC100VからDC24Vへの変換だけで動くとは限らない
ここがバス廃品を扱う際の重要なポイントです。巻取機にはモーターがありますが、実際の車両では巻取機だけが単独で存在していたとは限りません。方向幕の表示位置を指定する操作装置や、モーターの正転・逆転などを制御するリレー回路、各装置をつなぐ専用配線などと組み合わせて使われていた場合があります。
したがって、「巻取機付き」という商品説明だけで、自宅ですぐ電源を入れて好きな行先を表示できると判断するのは早計です。購入前には付属品と型式を確認する必要があります。
操作スイッチがない方向幕はどうやって動かすのか
方向幕巻取機の仕組みを理解するうえでは、「モーターを回すこと」と「目的の行先で止めること」を分けて考えると分かりやすくなります。単純な機構ならモーターを正転・逆転させることで幕を上下または左右へ送れますが、実際の車両では運転席などにある操作装置から行先を選択できるものがあります。
たとえば運転士が表示番号を指定すると、制御装置が巻取機を動かし、指定された位置まで幕を送って停止させます。この場合、巻取機だけを取り外した廃品には、運転席側の操作装置が付属していないことがあります。
一方、巻取機そのものに送り・戻しなどの手動操作機構を備えた製品も存在します。この場合は操作装置なしでも一定の操作ができる可能性があります。つまり、必要な部品は巻取機のメーカーや型式、世代、車両側のシステムによって異なるため、現物を確認せず一律に配線方法を決めることはできません。
京都市バスの廃品を購入するときに確認したいポイント
京都市交通局では実際に市バス方向幕などを廃品として販売しています。ただし、廃品は本来の車両から取り外された中古部品です。一般家庭で使用する電化製品として販売されているものとは性格が異なります。[参照]
そのため、巻取機付き方向幕を購入する場合には、可能であれば現物や販売資料から次の情報を確認しておくと安心です。
- 巻取機のメーカー名と型式
- 銘板に記載された定格電圧
- 定格電流または消費電力
- 操作スイッチの有無
- 操作器・制御器・リレーボックスの有無
- 接続ケーブルやコネクターの有無
- 配線図・取扱説明書の有無
- 販売時点で動作確認済みなのか、動作未確認なのか
特に重要なのが銘板の写真です。「バス用だから24Vだろう」と推測するのではなく、実際に購入する個体の表示を確認してください。JIS上の一般的な仕様がDC24Vであっても、廃品の個体については現物確認を優先するべきです。
市販の変換アダプターを買う前に電圧・電流・極性を確認する
家庭で動作させるために電源を購入する場合は、少なくとも電圧、最大供給電流、直流の極性を確認します。さらに、巻取機と電源をどの端子へ接続するのかが分からなければ、通電しないことが重要です。
たとえば銘板からDC24Vであることが分かっても、複数本の配線が出ている場合、「赤がプラス、黒がマイナス」のような一般的な色のイメージだけで判断するのは危険です。電源線以外にモーター制御線、位置検出用の信号線などが含まれている可能性があります。
また、モーターは始動時に通常運転時より大きな電流を必要とする場合があります。電源容量が不足すると、巻取機が動かない、途中で停止する、電源装置の保護回路が働くといったことがあります。そのため、電源選定では巻取機の仕様を確認することが前提になります。
方向幕だけを楽しむ方法もある
巻取機を動かすこと自体にこだわらないのであれば、方向幕をコレクションとして楽しむ方法もあります。実物の方向幕は路線名や行先表示が連続して収録されているため、好きな表示部分を手動で出して展示するだけでも十分に魅力があります。
むしろ古い巻取機の場合、長期間使用されていなかったモーターやギア、ベルト、チェーンなどを突然動かすことで故障する可能性もあります。コレクション価値を重視するなら、無理に電動化せず保存する選択肢も考えられます。
一方、実際に電動で動く状態まで復元したい場合には、巻取機だけでなく当時の操作装置やリレーボックスまで揃えると、より車両搭載時に近い状態を再現できます。バス部品の収集では、この制御機器まで含めてシステムとして復元することも楽しみ方の一つです。
配線が分からない場合は自己流で100Vを接続しない
中古の車載電装品で最も避けたいのが、配線が分からない状態で試しに電気を流すことです。特に家庭用AC100Vを直接つなぐことは危険です。DC24V仕様の装置であれば故障につながるだけでなく、露出した端子や不適切な配線によって感電・短絡・発熱などが発生する可能性があります。
巻取機の型式から配線図が入手できない場合は、自動車電装や電子工作について知識のある人、電気・電子機器を扱える専門家などに現物を確認してもらう方法が安全です。特にAC100V側を含む電源装置をケースへ組み込むような工作をする場合は、絶縁、ヒューズ、接地、端子の保護なども考える必要があります。
購入前に京都市交通局へ問い合わせる場合も、「家庭で動かす方法」そのものではなく、販売品について巻取機の型式、操作器の付属有無、動作確認の有無などの商品情報を確認できるかという形で尋ねると判断材料を得やすくなります。ただし、廃品である以上、家庭利用の動作保証や技術サポートまで受けられるとは限りません。
まとめ:巻取機付き方向幕はDC24Vが基本だが現物の仕様確認が最優先
バス用方向幕巻取器は、JIS D 4705:1993ではDC24Vが定格電圧とされており、家庭用AC100Vをそのまま接続して使用するものではありません。家庭で動かす場合は、実際の巻取機がDC24V仕様であることを確認したうえで、AC100Vから必要な直流電源へ変換する適切な電源装置が必要になります。
ただし、電源だけで解決するとは限りません。方向幕システムによっては操作装置、リレー、配線などが必要です。特に操作スイッチのない廃品の場合、巻取機単体でどこまで操作できるのかを型式ごとに調べる必要があります。
購入前には「銘板の電圧・型式」「操作器の有無」「配線・コネクターの有無」「動作確認の有無」を確認するのがポイントです。仕様や配線が分からない状態では通電せず、まず現物の型式を特定するところから始めるのが安全です。方向幕は魅力的なバス廃品ですが、一般家庭向けの家電ではないことを踏まえ、正しい電源と制御方法を確認してから楽しみましょう。


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