沖縄は本州より紫外線が強い地域として知られているため、「沖縄では紫外線のせいで目が悪い人が多い」という話を耳にすることがあります。紫外線が目に影響すること自体は医学的にも知られていますが、ここでは「目が悪い」の意味を分けて考えることが重要です。
結論からいえば、沖縄の強い紫外線が原因で、県民に近視や裸眼視力低下が多いと単純に結論づけることはできません。一方、長期間の紫外線曝露は白内障や翼状片など一部の眼疾患のリスクと関係することが分かっています。
実際、日本国内で北海道・能登・沖縄を比較した環境省関連の研究では、紫外線曝露量には地域差があり、沖縄で翼状片が多かったという興味深い結果も報告されています。ただし、これは「沖縄の人は近視が多い」という意味ではありません。[参照] 環境省・紫外線曝露と白内障等に関する研究
沖縄の紫外線は実際に強いのか
沖縄は日本の南西部、低緯度に位置しているため、年間を通した紫外線への曝露を考えるうえで無視できない地域です。環境省関連研究では、国内4地域のゴルフ場キャディーを対象に年間の紫外線曝露量を調査したところ、曝露量は那覇、つくば、札幌、能登の順でした。
同研究では、那覇を基準にすると、つくばの年間累積曝露量は約65%、能登は約43%で、札幌もおおむね能登と同程度と報告されています。調査条件や職業が限定された研究なので、その割合をそのまま全住民の曝露量に当てはめることはできませんが、沖縄で紫外線対策が重要であることを理解する材料になります。
また、紫外線は皮膚だけに当たるわけではありません。同研究の頭部模型を使った測定では、眼鏡を着用していない場合、角膜前面でも相当量の紫外線曝露が確認されています。[参照] 環境省研究報告書
紫外線を浴びると「近視」になるのか
ここが最も誤解されやすい部分です。一般に「目が悪い」と言うと、遠くが見えにくくなって眼鏡やコンタクトレンズが必要になる近視や屈折異常をイメージする人が多いでしょう。しかし、紫外線による代表的な眼への影響と近視は同じものではありません。
WHO(世界保健機関)が挙げている紫外線の慢性的な眼への影響には、白内障、翼状片、眼や眼周辺の一部のがんなどがあります。また、加齢黄斑変性との関係についても研究されています。[参照] WHO「Ultraviolet radiation」
したがって、「沖縄は紫外線が強い」→「近視になる」→「沖縄県民は視力が悪い」という一直線の因果関係として説明するのは適切ではありません。裸眼視力の低下には近視をはじめ複数の要因が関係するため、紫外線だけで説明することはできないのです。
紫外線と関係が深い眼疾患は白内障と翼状片
紫外線について特に注意したいのが白内障と翼状片です。白内障は眼の水晶体が濁って視力に影響する病気で、加齢が大きな要因ですが、WHOは紫外線曝露もリスク要因の一つとして説明しています。
WHOによると、紫外線の急性影響として角膜炎や結膜炎があり、慢性的な影響として白内障や翼状片などがあります。また、世界の白内障による失明の一部は紫外線曝露に起因する可能性があると推計されています。
翼状片は、白目を覆う結膜の組織が黒目の角膜側へ伸びてくる病気です。進行すると視力に影響する場合があり、WHOも過剰な日光曝露との関連が認められている眼疾患として説明しています。[参照] WHO「紫外線による健康影響」
北海道・能登・沖縄を比較した研究では翼状片に大きな差があった
沖縄と眼疾患の関係を考えるうえで興味深いのが、環境省関連研究で行われた国内3地域の比較です。40歳以上の一般地域住民を対象として、札幌近郊、石川県能登地域、沖縄県東部で眼の状態が調査されています。
この研究では、程度Iまで含めた水晶体混濁の割合は北海道46.6%、能登64.4%、沖縄38.0%でした。つまり、少なくともこの調査では白内障につながる水晶体混濁が沖縄で単純に最も多かったわけではありません。
一方で非常に大きな地域差が見られたのが翼状片です。翼状片は北海道9.9%、能登0.7%に対して、沖縄では30.3%と報告されています。研究では紫外線曝露量や戸外生活時間なども検討されています。[参照] 環境省研究報告書
ただし、この数字を現在の沖縄県民全体の翼状片有病率として扱うことはできません。特定地域・対象者による過去の疫学調査だからです。それでも「紫外線の強い地域では眼表面の紫外線関連疾患に注意する」という考え方を裏付ける国内研究の一つとして参考になります。
沖縄の子どもは全国より視力が悪いのか
「沖縄は目が悪い人が多い」という話を確認する場合、学校保健統計を見る方法もあります。文部科学省の学校保健統計では、都道府県別・年齢別に裸眼視力の状況が調査されています。[参照] e-Stat 学校保健統計調査
例えば沖縄県がまとめた令和3年度の資料では、裸眼視力1.0未満の割合は、小学校男子が沖縄36.6%・全国34.05%、小学校女子が沖縄41.9%・全国39.83%でした。一方、中学校男子は沖縄54.7%・全国56.30%、中学校女子は沖縄65.4%・全国65.22%でした。
つまり、この年度だけを見ても「沖縄の子どもはどの年代でも全国より圧倒的に視力が悪い」という単純な状況ではありません。小学生では全国をやや上回る一方、中学生ではほぼ同程度、または全国を下回る区分もあります。[参照] 沖縄県教育委員会資料
「裸眼視力が低い」と「紫外線による眼疾患」は分けて考える
裸眼視力1.0未満という統計と、白内障や翼状片の統計は別物です。裸眼視力が低い人の多くを占める近視などの屈折異常と、紫外線曝露がリスクになる眼疾患を一括して「目が悪い」と表現すると、話が混同されてしまいます。
| 項目 | 紫外線との考え方 |
|---|---|
| 近視・屈折異常 | 沖縄の強い紫外線だけを原因として説明できない |
| 白内障 | 長期的な紫外線曝露はリスク要因の一つ |
| 翼状片 | 紫外線・日光曝露との関連が知られている |
| 角膜炎・結膜炎 | 強い紫外線による急性障害が起こることがある |
例えば、眼鏡をかけている若い人が多いことを「紫外線のせい」と説明するのと、屋外で長年働いてきた人の翼状片について紫外線曝露をリスク要因として考えるのでは、医学的な意味がまったく異なります。
沖縄ではサングラスを使ったほうがいい?
沖縄で生活したり旅行したりする場合、肌の日焼け止めと同じように眼の紫外線対策を考える価値があります。特に日中に長時間屋外で活動する人、海や屋外スポーツを楽しむ人、仕事で屋外にいる時間が長い人は対策しやすい環境を整えておくとよいでしょう。
WHOは紫外線対策として、眼を保護するサングラスや帽子などを推奨しています。サングラスを選ぶ際には、単にレンズの色が濃いかどうかではなく、紫外線を適切にカットできる製品かを確認することが重要です。
帽子のつばで直射日光を遮り、UVカット性能を持つ眼鏡・サングラスを組み合わせる方法もあります。環境省関連研究でも、眼鏡を装用した場合には非装用時より眼周辺の紫外線曝露強度が低下したことが報告されています。
沖縄以外に住んでいれば紫外線対策は不要ではない
沖縄の紫外線が強いからといって、北海道や本州なら眼の紫外線対策が不要ということでもありません。WHOは世界的な健康問題として紫外線への過剰曝露に注意を呼びかけています。
さらに眼に入る紫外線量は緯度だけで決まるものではありません。季節、時間帯、雲、標高、屋外にいる時間、地面や水面などからの反射、帽子・眼鏡の使用状況などによって変化します。
そのため、「沖縄だから危険、東京だから安全」という二択ではなく、紫外線の強い日に長時間屋外で活動するときには地域を問わず適切に眼を保護する、という考え方が現実的です。
まとめ|沖縄の紫外線は眼に影響するが「沖縄県民は目が悪い」とは単純に言えない
沖縄は国内でも紫外線曝露量が多くなりやすい地域であり、紫外線が眼に与える影響そのものは医学的にも認められています。特に長期的な紫外線曝露と白内障や翼状片との関係には注意が必要です。
実際、北海道・能登・沖縄を比較した国内研究では、翼状片が沖縄の調査対象者で多く確認されました。一方、水晶体混濁は沖縄が3地域で最も多かったわけではなく、学校保健統計を見ても、沖縄の児童生徒すべてで裸眼視力低下が全国より大幅に多いという単純な結果にはなっていません。
「沖縄は紫外線が強い」は概ね正しいものの、「だから沖縄には近視の人が多い」「沖縄県民は目が悪い」とまで結論づけるのは根拠が不足しています。近視などの裸眼視力低下と、紫外線に関連する白内障・翼状片などの眼疾患を分けて考えることが大切です。
沖縄で特に意識したいのは「目が悪くなるから外に出ない」ということではなく、強い日差しの中で活動するときに帽子やUVカット性能のある眼鏡・サングラスなどを適切に利用し、長期的な紫外線曝露を減らすことです。見えにくさ、かすみ、充血、白目から黒目へ組織が伸びているなど気になる症状がある場合は、紫外線だけを原因と自己判断せず眼科で確認するのが適切です。


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