鹿児島県の鉄道はなぜ本数が少ない?単線・非電化・無人駅が多い理由を人口・利用者数・収支から解説【2026年版】

国内

鹿児島県内の鉄道を利用すると、鹿児島中央駅周辺を離れた途端に「列車が1時間以上来ない」「単線区間が長い」「無人駅が多い」と感じることがあります。特に指宿枕崎線の指宿以南、肥薩線、吉都線、日南線の志布志側などは大都市圏の鉄道とは大きく状況が異なります。その理由は単純に「鹿児島県の人口が少ないから」だけではありません。人口減少、沿線人口の薄さ、自家用車中心の生活、鉄道利用者の減少、単線設備による運行上の制約、地方路線の厳しい採算性が重なった結果と考えるのが適切です。一方で、鹿児島中央~鹿児島・国分方面や鹿児島中央~谷山・喜入方面など比較的利用者が多い区間まで含めて「鹿児島県の鉄道はすべて国内ワースト級」と評価するのは正確ではありません。地域による差が非常に大きいことが鹿児島の鉄道の特徴です。

最大の理由は「利用者が少ない区間では列車を増やしにくい」こと

鉄道の運行本数を左右する最大の要素は、やはり利用者数です。列車を1本走らせるには、運転士、車両、燃料・電力、保守、駅設備、線路など多くの費用がかかります。そのため、利用者が少ない区間では単純に本数を増やせば増やすほど収支が悪化する可能性があります。

JR九州が公表している2024年度の線区別利用状況を見ると、指宿枕崎線の平均通過人員は区間によって大きく異なります。鹿児島中央~喜入は1日7,958人、喜入~指宿は2,090人なのに対し、指宿~枕崎はわずか216人でした。[参照]

同じ指宿枕崎線でも、鹿児島市近郊と枕崎側では需要がまったく違うことが分かります。そのため「鹿児島だから一律に本数が少ない」のではなく、需要の多い都市近郊は比較的本数が確保され、利用者が少ない末端区間ほど本数が少なくなるという構造になっています。

人口そのものより「鉄道沿線にどれだけ人がいるか」が重要

鹿児島県全体の人口が減少していることも大きな要因です。2025年国勢調査の速報では鹿児島県の人口は1,512,969人で、2020年から75,287人、率にして4.7%減少しました。[参照]

ただし、鉄道利用を考えると県全体の人口より「駅の近くに人口が集中しているか」の方が重要です。東京や大阪では駅を中心に高密度な住宅地や商業地が広がり、多数の人が徒歩や自転車で駅へアクセスできます。

一方、鹿児島県では市街地を離れると集落が広範囲に分散し、駅まで自動車で移動しなければならない地域も少なくありません。そうなると「駅まで車で行くなら、そのまま目的地まで車で行った方が便利」という選択が起きやすくなります。

鹿児島では自家用車が生活の中心になりやすい

地方鉄道の利用者が減る背景には、自家用車中心の交通体系があります。鹿児島県も2024年に策定した地域公共交通計画で、公共交通の持続可能性を課題として掲げ、ダイヤ調整や乗継環境の改善、人材確保などを進めています。[参照]

県北西部を走る肥薩おれんじ鉄道沿線の調査では、通勤・通学で最も多く利用されている交通手段は自家用車で53.6%でした。一方、肥薩おれんじ鉄道は1.8%にとどまっています。沿線住民の69%が過去1年間に同鉄道を利用していないという調査結果もあります。[参照]

鉄道の本数が少ないから車を使う、車を使う人が多いから鉄道利用者が減る、利用者が減るからさらに本数を増やしにくくなるという循環が起こりやすいのです。

地方部では1987年と比べて利用者が大幅に減った路線もある

JR九州のデータを見ると、鹿児島周辺の地方路線では国鉄分割民営化当時と比較して利用者が大きく減っています。

例えば吉都線の平均通過人員は1987年度の1,518人/日から2024年度には392人/日へ減少しました。肥薩線の吉松~隼人も1,109人/日から501人/日へ減少しています。[参照]

指宿枕崎線の指宿~枕崎は1987年度942人/日に対し2024年度216人/日です。約4分の1以下になっており、こうした需要規模では都市圏のように10分・15分間隔で走らせることは経済的に難しくなります。

単線だから本数を増やしにくいという面もある

鹿児島県内の地方路線では単線区間が多くあります。単線では上り列車と下り列車が同じ線路を使うため、駅や信号場などの交換設備で列車同士をすれ違わせなければなりません。

例えば30分間隔で上下列車を走らせようとすると、適切な位置に列車交換設備が必要になります。交換駅の間隔が長ければ、1本の列車が区間を通過するまで反対方向の列車を待たせる必要があり、ダイヤ設定の自由度が低下します。

つまり「利用者が少ないから単線のまま」だけでなく、「単線だから大量増発には設備投資も必要」という両面があります。ただし単線でも運行本数の多い路線は全国に存在するため、単線であることだけが少ない本数の原因ではありません。根本には需要の大きさがあります。

非電化なのは「遅れているから」ではなく投資効果の問題

指宿枕崎線、吉都線、肥薩線の一部、日南線などには非電化区間があります。非電化というと設備が古い印象を受けるかもしれませんが、電化すれば自動的に便利になるわけではありません。

鉄道を電化するには架線、変電所、電柱など大規模な設備投資が必要です。それらは建設後も点検・更新が必要になります。利用者が非常に少ない路線では、電化設備を新設・維持する費用に見合う効果を得にくいため、ディーゼル車などを使う方が合理的な場合があります。

重要なのは「電化か非電化か」よりも、どの程度の列車本数を確保できる需要があるかです。全国には非電化でも比較的便利な路線がありますし、逆に電化されていても利用者が少なく本数の少ない区間があります。

無人駅が多いのも利用者数とコストの関係が大きい

駅員を配置するには毎日人件費がかかります。1日に数十人、数百人程度しか利用しない駅で終日駅員を配置すると、鉄道事業者にとって大きな負担になります。

そのため利用者の少ない地方駅では無人化が進んでいます。これは鹿児島だけの現象ではなく、全国の地方鉄道で共通して見られる傾向です。JR九州も、駅係員が不在となる駅が複数路線に存在することを前提に、車いす利用者向けのサポート制度を設けています。[参照]

現在はICカード、自動券売機、車内収受、遠隔案内などによって、駅員が常駐していなくても列車を運行できる仕組みが整っています。そのため無人駅の多さは、必ずしも鉄道そのものが維持されていないことを意味しません。

鹿児島中央周辺まで本数が極端に少ないわけではない

鹿児島県の鉄道を評価するときに注意したいのは、県内すべての区間を一括りにしないことです。

指宿枕崎線でも、鹿児島中央~喜入の2024年度平均通過人員は7,958人/日あり、指宿~枕崎の216人/日とは約37倍もの差があります。[参照]

鹿児島中央駅を中心に鹿児島本線、日豊本線、指宿枕崎線が集まり、九州新幹線も乗り入れています。都市近郊では通勤・通学需要があるため、地方末端区間と比較すれば列車本数も多くなります。

「鹿児島は国内ワーストの鉄道不便県」とは断定できない

鉄道の便利さを全国で順位付けした公的な「ワーストランキング」があるわけではありません。そのため鹿児島県が全国で最も不便だと客観的に断定することはできません。

北海道、東北、山陰、四国、紀伊半島などにも、普通列車が数時間空く路線や、単線・非電化・無人駅が多数存在する地域があります。さらに鉄道路線自体がほとんどない県内地域もあります。

鹿児島県の場合は、鹿児島市周辺では比較的鉄道網が機能している一方、県南部・北東部などでは鉄道需要が薄く、同じ県内で利便性の差が大きいと表現する方が実態に近いでしょう。

指宿~枕崎の利用者216人/日はどのくらい少ない?

JR九州が公表する「平均通過人員」は、単純な駅の利用者数ではなく、路線1km当たり1日平均で何人を輸送したかを示す指標です。そのため「毎日216人だけが乗っている」という意味ではありません。

それでも216人/日という輸送密度は非常に低い水準です。JR九州は平均通過人員2,000人/日未満の線区について収支を公表しており、指宿~枕崎はその対象に含まれています。JR九州の2025年11月公表資料では、同区間の2024年度営業損益は4億9,200万円の赤字、営業係数は1,000円の収入を得るために約4,630円の費用がかかる水準として示されています。[参照]

こうした区間で列車を大幅に増発するには、「増やした列車にどれだけ新規利用者が乗るのか」という問題を避けて通れません。

本数を増やせば利用者も増えるという考え方にも一理ある

一方、「利用者が少ないから減便する」という説明だけでは地方交通の問題を完全には説明できません。

列車が1日に数本しかなければ、買い物、通院、観光、仕事などの予定に合わせにくくなります。その結果、利用できる人まで自動車を選び、さらに鉄道利用者が減ることがあります。いわゆる「減便→不便になる→利用者減少→さらに減便」という悪循環です。

そのため鹿児島県の地域公共交通計画でも、単純な減便だけではなく、鉄道・バスなど交通モードをまたいだダイヤ調整、乗継環境整備、利用促進などによって公共交通全体を維持する方向性が示されています。[参照]

JR九州も利用者が少ない線区について沿線自治体と協議している

利用者が少ない地方路線について、JR九州が単独で放置しているわけでもありません。同社は利用状況が大きく減少した線区について、県、沿線自治体、九州運輸局などと「線区活用に関する検討会」を開催しています。

2024年度には吉都線の都城~吉松、指宿枕崎線の指宿~枕崎、日南線の油津~志布志などが検討対象となっていました。利用促進イベントや地域と連携した施策などが行われています。[参照]

つまり現在の課題は「なぜもっと走らせないのか」というだけでなく、人口減少地域で鉄道路線そのものを今後どう持続可能にするかという段階に入っています。

複線化・電化・高架化すれば便利になるのか

設備だけを見れば、複線化すれば列車交換の制約が減り、高頻度運転をしやすくなります。電化にも加速性能や車両運用などのメリットがあります。高架化すれば踏切をなくせるため、市街地では交通渋滞の改善や安全性向上につながります。

しかし、いずれも巨額の建設費が必要です。例えば1日数百人規模しか利用しない区間を複線化し、電化し、高架化しても、その投資額を利用者増によって回収できるとは考えにくいでしょう。

そのため地方路線では、大規模な設備投資よりも既存設備を維持しつつ、必要な時間帯に列車を設定したり、バスと接続したりする方が現実的な場合があります。

鹿児島の地形も鉄道網を作りにくくしている

鹿児島県は南北に長く、薩摩半島・大隅半島、山地、湾岸など複雑な地形を持っています。人口も鹿児島市だけに完全に集中しているわけではなく、複数の地方都市や集落へ分散しています。

鉄道は一定方向に大量の人を運ぶことを得意とする交通機関です。一方、人口が低密度に広く分散している地域では、道路を使って細かく移動できる自動車やバスの方が生活上便利になることがあります。

大隅半島には現在JRの旅客鉄道がほとんど存在しない一方、薩摩半島側には指宿枕崎線があります。この違いからも、鹿児島県では鉄道だけで県内交通を完結させることが難しいことが分かります。

観光客が多くても通勤電車並みの本数にはなりにくい

鹿児島には指宿、霧島などの観光地があり、観光列車の需要もあります。しかし観光利用と毎日の通勤・通学需要では性質が違います。

都市圏の高頻度運転を支えているのは、平日の朝夕を中心に毎日大量に発生する通勤・通学需要です。観光客は曜日や季節によって利用が変動するため、観光需要だけを理由に終日10~20分間隔の普通列車を運行することは難しい場合があります。

そのため地方鉄道では、通常の普通列車は必要最低限の本数としつつ、観光需要に合わせて特急・観光列車などを設定するという運行方法が採用されることがあります。

鹿児島の鉄道を便利にするには「増便」だけでは足りない

地方鉄道を使いやすくするには、列車そのものの本数を増やすだけではなく、駅から先の移動手段を含めて考える必要があります。

例えば列車到着の5分後に路線バスが発車するなら便利ですが、次のバスまで50分待つのであれば鉄道そのものが利用されにくくなります。逆に鉄道とバス、コミュニティ交通の接続を改善すれば、本数を大幅に増やさなくても実質的な利便性を高められます。

鹿児島県も地域公共交通計画で「交通モードを跨いだダイヤ調整・乗継環境の整備」を具体的な取組として掲げています。[参照]

まとめ:鹿児島の鉄道本数が少ない最大の理由は「人口」より需要密度と自動車依存

鹿児島県の地方鉄道で運行本数が少なく、単線・非電化・無人駅が多い背景には複数の要因があります。

特に大きいのは、沿線人口の減少と低密度化、自家用車中心の生活による鉄道利用者の減少です。2025年国勢調査速報では鹿児島県人口は約151万人で、5年間で4.7%減少しました。[参照]

実際、JR九州の2024年度データでは、指宿枕崎線の鹿児島中央~喜入が平均通過人員7,958人/日なのに対し、指宿~枕崎は216人/日、吉都線は392人/日、肥薩線の吉松~隼人は501人/日でした。[参照]同じ鹿児島県周辺でも需要には非常に大きな差があります。

したがって「人口が少ないから」という説明は一部正しいものの、より正確には鉄道沿線の人口密度が低く、自家用車利用が多いため、列車を高頻度で走らせるほどの需要が生まれにくいことが本質です。その需要水準に合わせて設備投資も抑えられるため、単線・非電化・無人駅が多く残っています。

ただし、単線や非電化そのものが不便さの根本原因とは限りません。需要が多ければ単線でも比較的高頻度運転は可能ですし、非電化でも便利な路線は存在します。利用者の少なさと設備条件が相互に影響していると考えるのが適切です。

また「鹿児島の鉄道は国内ワースト」という公的な評価や順位はありません。地方区間では非常に本数の少ない路線がある一方、鹿児島中央を中心とする都市近郊では一定の利用者と列車本数があります。鹿児島の鉄道を理解するなら、県全体が一様に不便なのではなく、都市近郊と地方区間の需要差が極端に大きいことが最大の特徴といえるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました