能登半島では、2024年1月の令和6年能登半島地震をはじめ、大きな地震や豪雨、土砂災害が相次いだことから、全国的にも「自然災害が多い地域」という印象を持たれることがあります。しかし、単純に能登半島だけが自然災害に遭いやすいと考えるのは正確ではありません。
一方で、能登半島には地震が発生する地質・地殻構造、山地が海岸近くまで迫る地形、地すべり地形など、災害の被害を大きくする可能性のある条件が存在します。さらに大きな地震の後に豪雨が発生すると、別々の自然現象が複合的な災害につながることもあります。
ここでは、能登半島でなぜ地震や土砂災害が目立つのかを、気象庁や国土地理院など公的機関の情報をもとに整理します。
能登半島は地殻変動が活発な地域
能登半島の自然災害を考えるうえで、まず知っておきたいのが地質・地殻構造です。国土地理院は、能登半島について大半が標高200~400メートルの丘陵地で、海岸段丘が発達し、陸域には多くの活断層群が認められることなどから、地殻変動の激しい地域と説明しています。
実際、能登半島周辺では過去にも大きな地震が発生しています。2007年3月には能登半島沖を震源とする平成19年能登半島地震が発生しました。そして2024年1月1日には石川県能登地方でマグニチュード7.6、最大震度7の令和6年能登半島地震が発生しています。
つまり、「たまたま最近だけ地震が続いた場所」というより、地質学的に地殻変動と無関係ではない地域だと考えるほうが実態に近いでしょう。[参照:国土地理院]
2020年ごろから能登地方では地震活動が活発化していた
近年の能登半島について特徴的なのは、2024年元日の大地震だけが突然単独で発生したわけではない点です。気象庁によれば、石川県能登地方では2020年12月ごろから地震活動が活発になっていました。
その後、2022年6月にはマグニチュード5.4で最大震度6弱、2023年5月にはマグニチュード6.5で最大震度6強の地震が発生し、2024年1月にはマグニチュード7.6、最大震度7の地震が発生しました。その後も規模の大きな地震が観測されています。
2024年1月1日の地震後には活動範囲も大きく広がりました。気象庁によると、震源断層は北東-南西方向に約150キロメートル延び、能登半島の陸域直下にも存在すると推定されています。[参照:気象庁]
能登半島では地震が土砂災害につながりやすい場所もある
能登半島で災害が大きく見える理由は、地震そのものだけではありません。地震による強い揺れと急斜面の多い地形が組み合わさることで、斜面崩壊などが発生する可能性があります。
国土地理院によると、能登半島北岸では山地が海岸まで迫っています。また、過去の地すべりによって形成された「地すべり地形」が密集している地域でもあります。2024年1月の地震では、多数の表層崩壊や一部で深層崩壊が確認されました。
例えば山の斜面を考えると分かりやすいでしょう。平坦で安定した土地と、急傾斜の山腹では、同じ強さの揺れを受けても結果が同じとは限りません。斜面では地震をきっかけとして岩石や土砂が崩れ、それ自体が道路や住宅などに被害を与える可能性があります。[参照:国土地理院]
大地震の後に豪雨が来ると被害が複合化する
能登半島の災害を理解するうえで重要なのが複合災害という考え方です。地震と豪雨は原因が異なる自然現象ですが、短期間に続くと被害が連鎖することがあります。
例えば、大地震によって山の斜面に亀裂が入ったり、地盤が緩んだりしたところへ大量の雨が降ると、通常より少ない雨量でも斜面崩壊などが起こりやすくなる場合があります。気象庁も、2024年の地震で揺れの強かった地域について、家屋倒壊や土砂災害の危険性が高まっているとして、地震活動だけでなく降雨状況にも注意するよう呼びかけています。[参照:気象庁]
国土地理院によると、能登半島北岸では2024年1月の地震だけでなく、同年9月の豪雨によるがけ崩れも発生しました。このように、一度大きな災害を受けた地域に別の自然現象が重なると、復旧途中の道路や斜面、住宅などが再び被害を受ける可能性があります。
「半島だから災害が多い」という単純な話ではない
能登半島という名前から、「日本海へ突き出した半島だから自然災害を受けやすいのでは」と考えることもあります。しかし、半島であること自体が地震を発生させるわけではありません。
地震については地下の断層や地殻構造、地殻にかかる力などを見る必要があります。土砂災害については地質、斜面の傾斜、過去の地すべり、降雨量など複数の要因が関係します。
一方、半島特有の地形は「災害後の影響」という意味では重要です。海岸線に沿って道路が延び、その背後に急な山地がある地域では、土砂崩れや道路損傷によって交通網が寸断されると、集落へのアクセスが難しくなる場合があります。そのため、同程度の自然現象でも地形や交通網によって復旧・救援の難易度は変わります。
能登だけが日本で特別に危険というわけでもない
ここで注意したいのは、能登半島を「日本で特別に災害ばかり起こる場所」と考えないことです。日本列島全体が地震、津波、台風、豪雨、洪水、土砂災害、火山噴火など多様な自然災害のリスクを抱えています。
例えば太平洋側には南海トラフ沿いの巨大地震や津波が想定される地域があります。山間部では豪雨による土砂災害、河川沿いの低地では洪水、火山周辺では噴火など、地域によって注意すべき自然現象が異なります。
したがって、「能登は危険、日本のほかの地域なら安全」という捉え方ではなく、地域ごとに災害リスクの種類と特徴が違うと考えることが大切です。国土地理院も、土地の成り立ちを示す地形分類と自然災害には密接な関係があり、地形分類から発生しやすい自然災害を推測できるとしています。[参照:国土地理院]
能登半島の災害が特に強く印象に残る理由
近年の能登半島が「自然災害が立て続けに起きている」と感じられる最大の理由は、短期間に重大な災害が重なったことです。特に2024年1月の大地震では地震そのものに加え、津波、地盤変動、斜面崩壊など複数の現象が発生しました。
国土地理院が地震後の航空写真から作成した3Dデータでも、海岸線の変化や土砂崩れの発生箇所を確認できます。つまり能登半島では、一つの大地震が単純な「揺れ」だけで終わらず、地形そのものを変化させる規模の現象になりました。[参照:国土地理院]
そこへ豪雨など別の自然災害が重なることで、ニュースで能登の被害を目にする機会も増えました。その結果、実際の地形・地質上のリスクに加えて、短期間に災害報道が集中したことも「能登は災害が多い」という印象につながっていると考えられます。
まとめ:能登半島の災害は地形・地質・地震・豪雨をセットで考える
能登半島で自然災害が目立つ背景には、一つだけの原因があるわけではありません。活断層を含む地殻構造、近年活発化した地震活動、山地が海岸まで迫る地形、地すべり地形、さらに豪雨などが組み合わさることで、大きな被害につながる場合があります。
特に2024年のように大地震と豪雨が同じ地域で相次ぐと、地震で弱くなった斜面やインフラが次の災害の影響を受け、被害が複合化する可能性があります。そのため「能登半島だから災害に遭う」と単純化するより、複数の自然条件が重なり、災害が連鎖・複合化しやすい場面があると理解するのが適切です。
また、これは能登だけの問題ではありません。自分が暮らす地域についても、ハザードマップだけでなく地形や過去の災害履歴を確認しておくと、その土地でどのような自然災害に備えるべきなのかが見えやすくなります。


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