フェリーの後方を眺めていると、船尾付近に細長い「ポール」のような設備が立っていることがあります。写真の角度や船型によって見え方は異なりますが、船尾中央付近に立つ細い棒状の設備で、先端や途中に旗を掲げられる構造なら、「船尾旗竿(フラッグスタッフ、エンサインスタッフ)」である可能性が高いです。一方、先端に白い灯火が付いていれば船尾灯関係の支柱、複数のアンテナや機器が付いていれば通信・航海設備用のマストである可能性があります。船には見た目が似た棒状設備が複数あるため、設置位置と先端部分を見ると判別しやすくなります。
フェリーの船尾にある細いポールは「船尾旗竿」のことが多い
大型フェリーや客船の船尾中央付近には、国旗などを掲揚するための細い旗竿が設置されていることがあります。英語では一般に「flagstaff」や「ensign staff」と呼ばれる設備です。
船舶では古くから船尾が国籍を示す旗を掲げる重要な位置とされてきました。日本船舶についても船舶法上、日本の国旗を掲げることに関する規定があります。国土交通省の船舶法関係資料でも、日本船舶は船舶国籍証書等の交付を受けた後でなければ日本の国旗を掲げて航行できないことが示されています。[参照]
そのため、フェリーの船尾にあり、非常に細く、上部に滑車やロープが付いているような棒であれば、まず船尾旗竿を候補として考えることができます。
船尾旗竿には国旗などを掲げる
船尾側に掲げられる旗は、船の国籍を示す「エンサイン」と呼ばれる種類の旗であることがあります。日本籍の商船では日本国旗が掲げられている光景を港などで見ることができます。
船首側にも似たような細い旗竿が設置される場合がありますが、こちらは「ジャックスタッフ」と呼ばれ、船首旗や会社旗などの掲揚に使われることがあります。つまり、船首と船尾の両方に一見似たポールが存在する船もあります。
見分ける際には、「船尾の端近くに単独で立っていて、細いロープが通っている」「航海機器らしい箱やアンテナがほとんど付いていない」という特徴があれば、旗竿である可能性が高まります。
先端に白いライトがあるなら「船尾灯」の可能性もある
フェリー後方の棒状設備がすべて旗竿とは限りません。特に先端に白い照明器具のようなものが付いている場合は、船尾灯または航海灯を取り付ける支柱の可能性があります。
船尾灯は、航行している船が後方へ表示する白色の航海灯です。船舶設備規程では、船舶に船尾灯を備えることが定められており、全長50メートル以上の船舶には第一種船尾灯を備える規定があります。[参照]
船尾灯は他船から見たとき、その船がどちらへ進んでいるのかを判断する重要な設備です。日本小型船舶検査機構も、船灯について「船舶の動きや状態をお互いに知らせ合い確認するために表示する設備」と説明しています。[参照]
旗竿と船尾灯はどこを見れば区別できる?
船尾旗竿と船尾灯用の支柱は遠くから見るとよく似ていますが、先端を見ることである程度区別できます。
| 特徴 | 考えられる設備 |
|---|---|
| 細い棒だけで、ロープや滑車がある | 船尾旗竿 |
| 旗が掲げられている | 船尾旗竿の可能性が非常に高い |
| 先端に白いランプ状の設備がある | 船尾灯・航海灯関係 |
| 複数のアンテナや箱形機器が付いている | 通信・航海設備用マスト |
| 非常に太く、可動部や油圧装置がある | 係船・ランプウェイなど別の設備の可能性 |
例えば、港に停泊中のフェリーでポールの上に日の丸が掲げられていれば、ほぼ間違いなく旗を掲げるための旗竿です。一方、夜間航行中に後方から白く光って見える設備なら、船尾灯を見ている可能性があります。
船尾灯はなぜ後ろ向きに白く光るのか
航海灯には、船首方向を示すマスト灯、左右を示す舷灯、後方を示す船尾灯などがあり、それぞれ見える方向が決められています。
船尾灯は船の後方へ白色光を表示します。他船がその白い船尾灯を見れば、「自分はこの船の後ろ側にいる」と判断できます。これは追越し関係などを判断するうえでも重要です。
例えば国土交通省が公開する海上衝突予防法の説明でも、航行中の船舶について、できる限り船尾近くに船尾灯を表示する規定が確認できます。[参照]
フェリーの後方にはほかにもさまざまな設備がある
大型フェリーの船尾周辺は、単に乗客が景色を見る場所ではなく、操船・係船・荷役に関係する多くの設備が集中しています。
代表的なものには、係船索を巻き取るウインチ、係船索を船外へ導くフェアリーダー、車両を積み降ろしするランプウェイ、船尾側へ横方向の力を発生させるスターンスラスタ、航海灯、監視カメラ、アンテナなどがあります。
鉄道・運輸機構も、長距離フェリー「さんふらわあ さつま」などでは船尾にスターンスラスタが装備され、港内で船体を横方向へ移動させる操船を助けていることを紹介しています。[参照]
太い柱なら旗竿ではない可能性が高い
旗竿は基本的に旗とロープを支えればよいため、比較的細い構造です。そのため、人の胴体ほど太い柱や、大型の油圧機構が付いた設備であれば、旗竿以外である可能性が高くなります。
例えばRORO型フェリーでは船尾に大型の車両用ランプが設けられ、その周囲に支持構造やワイヤー、油圧設備があります。見る角度によっては、その一部が長いポールのように見えることがあります。
また係船作業用設備でも、ロープを適切な方向へ導くために円筒状・柱状の部品が使われます。この場合は通常、ポール単独ではなく太いロープやウインチなどが近くに見えることが特徴です。
アンテナのような形なら通信設備の可能性もある
フェリーにはVHF無線、AIS、GPS、衛星通信、レーダーなど多くの電子機器があります。主要な設備は船橋付近のマストに集中することが多いものの、用途によっては船尾側にもアンテナや通信設備が配置されます。
先端が棒だけではなく、白い筒、丸いドーム、横向きのアンテナなどになっている場合には、旗竿ではなく通信・航海機器の可能性があります。
特に大型フェリーでは船体や上部構造物が電波を遮ることがあるため、設備の用途に応じて船の前後にアンテナが分散配置されることもあります。
写真から判断するときは「位置・先端・ロープ」の3点を見る
フェリーの写真からポールの正体を確認する場合、最も分かりやすいのは設置場所です。船尾中央の最後端付近に単独で立っている場合は旗竿が有力です。
次に先端を確認します。旗や滑車だけなら旗竿、ランプなら船尾灯、アンテナ状機器なら通信設備というように候補を絞れます。
最後に細いロープが上下へ伸びているかを見ます。旗を上げ下げするための「ハリヤード」が確認できれば、旗竿である可能性はかなり高くなります。
船尾旗竿は航行中に必ず旗が付いているとは限らない
旗竿であっても、写真を撮影した瞬間に必ず旗が掲げられているとは限りません。そのため「旗が付いていないから旗竿ではない」とは判断できません。
停泊状況、航海状況、船会社の運用、天候などによって旗の掲揚状態は変わります。また旗を下ろしていると、細い金属製ポールだけが残るため、用途の分からない設備のように見えます。
逆に、過去の同じ船の写真を確認して、その位置に国旗や社旗が掲げられている写真が見つかれば、旗竿であることをかなり確実に判別できます。
まとめ:船尾中央の細いポールなら船尾旗竿が有力
フェリー後方に見える細長いポールについては、その形状によって用途が異なりますが、船尾中央または最後端付近にあり、細く直立していて、ロープや滑車を備えているものであれば、国旗などを掲げる「船尾旗竿(フラッグスタッフ/エンサインスタッフ)」である可能性が高いと考えられます。
一方、ポールの先端に白い灯具があるなら船尾灯関係、アンテナや電子機器が多数付いているなら通信・航海設備、太い支柱や油圧装置と一体なら係船設備やランプウェイ関係の可能性があります。
特に「細い棒」「船尾の中央」「旗を通すロープ」という3つがそろえば船尾旗竿を見分けやすくなります。船は安全運航や国籍表示のために多くの設備を備えているため、一見何気ない一本のポールにも明確な役割があります。


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